芽を潰す
「キケン、さん、どーして。四ツ目ちゃんに」
「あの人は我々を何度も欺く、嘘つきだからだ。嘘に憑かれて、いや、この世界に憑かれている」
真意の読めぬ笑みを貼り付けた少女はただこちらを見下ろしている。それは第一印象と何ら変わりない。
「四ツ目に出会ったのは私が宇受売とこの世界を壊そうと決意してから千五百年ほど。その間の噂話は耳にしていた。とにかく無闇やたらにこの世界の危険因子を殺戮する気狂いがいると、ね」
「ど、とう」
千五百年?
四ツ目は百年以上だと語っていたはずだ。
「この狂った世界を維持しようとしている、と私は理解した。そうじゃないか? 四ツ目の過去」
「……それは」
キケンと宇受売とやらは突然――光眼からしたらだが――放り込まれた世界から脱出してしようとしている、と?
「キケンさんはこの世界、好きじゃないの」
「大嫌いだ。人生をめちゃくちゃにされたものだよ」
「……でも、キケンさんと宇宙船の遺跡で出会ったもん!」
――中に入るのなら手伝おうか?
彼女はそう言って、笑った。あれは実在していた人だったはずで、夢幻ではないはずである。
「知らないなぁ。……まあ、いい、お前と話している意味はないのだ。四ツ目の過去が存在するのならば、今のうちに矯正するしかあるまい」
「ちょっと、キケン! 何をするつもり?」
ケイテキが焦るが、キケンは鋭い眼光で制した。
「そのまんまだよ。光眼を洗脳する。この世界から脱出できるように、利用するのだよ」
「洗脳? キケンさんは催眠術が使えるの? すごー!! ボクにも教えて〜〜っ」
「ほら、コイツ元もと頭がイカれてんのよ」
目を輝かせた左江内 光眼に、ケイテキは眉をひそめ毛嫌った。
「催眠術なんてものじゃない。根本的に自我を書き換える。それを私はできる、なにせ人でないのだからね」
「なら四ツ目ちゃんにすれば良くない? だってそんな魔法使えるならさあ」
「四ツ目は人じゃない。アイツは思考が凝り固まって、ダメだ。それに加えて万物喰い化け物だ、いいや、異界の独裁者さ」
「良くわかんない。まあ、キケンさんはボクが許せない。だから思い通りにしたいんだ? 苛めっ子とおんなじだね」
それを苛つきながら傍受していたケイテキが足を振り下ろした。
「やめてちょうだい。アンタら、その会話ムカつくのよ」
「ケイテキちゃんも苛めっ子なのお?」
「左江内 光眼! 私はアンタが嫌いよ! その無駄な喋り口、馬鹿にしてるの?!」
光眼はムッとむつれた。
「もういいよ。ボク帰るね、よっこいしょ、と」
幸い足の縄の縛られ方が揺るかったので、モソモソと解くと椅子ごと立ち上がった。
「?!」
さすがのキケンも予想外だったのか、隙が生まれる。それを見計らって神社から出ようとする――すると、バン! と戸が開け放たれた。
「四ツ目ちゃん」
「行くぞ! 光眼!」




