四ツ目
「保健の先生、カエルになっちゃったらしいよ」
「あんなに優しい人だったのに……」
「また犠牲者が増えたね。私たちああなっちゃうのかな」
クラスの女子グループがヒソヒソと不安を口にしている。
(犠牲者ぁ〜〜? 素敵な世界じゃない。なあにがああなっちゃう、だよ)
左江内 光眼はパラパラと白紙の教科書をめくりながら、内心毒づく。
文字は紙からいなくなってしまい、先生は奇声を上げてダンスしながら居なくなった。あれから数週間経ったが帰って来ていない。
「ああなれば、楽だよ。君たちも何も考えなくていい」
「キャーッ! 誰です――」
一人の女子生徒が言い終わる前に、四角い肉塊になってしまい周りは悲鳴を上げる。
「あっ、キケンさん?」
「探したよ。光眼」
ワーキャーしている女子生徒たちが次々と異形に成り果てる中、キケンと名乗ったあの女の子はこちらを射抜いていた。
「私の下につくか、決まったかい?」
「あっ、そういう約束してたかも」
「見てご覧よ。私の下に付けばこんな事、お茶の子さいさいさ。嫌いなヤツも大嫌いなヤツも一瞬で荒唐無稽な生き物に成り果て――」
いきなり窓ガラスが割れ、キケンが吹っ飛ばれた。廊下が凄まじい音をたて、もはや興味をなくそうかと思っていたところ……。
「あんなヤツと契約したらお前も化け物になるぞ」
ドッペルゲンガーが武器を携え、机の上に立っていた。巨大なナタだ。
あれで一振りした?
「ドッペルゲンガー……」
「違う。俺は四ツ目だ」
四ツ目はパニック状態になっているクラスメイトに向けて、ナタを振り回した。すると引き裂かれ血しぶきが舞い、教室は静かになる。
「やってる事、キケンさんと同じだ」
「アイツらはもう人間じゃない。化け物同然の、ナニカに成り果てた。この世界に来たら皆そうなる」
そうしてナタの刃先が光眼へ向けられた。
「罪を償え」
バッサリと文字通り一刀両断され、光眼は死を悟るが……全く怖くない。楽しい世界で死ねるのならば本望。
ケラケラ笑って、あの世なんてないのに家族の姿が思い浮かんだ――
「やはり死なないか」
「ン? あれ、死んでない! しかもはんぶんこになってない!たははははっ!」
光眼ちゃんの進化系は四ツ目です。
3つが4つに増えただけなのですが……。




