アツイ サムイを鍛える
今日はどこへ連れて行って何をやろうか。
この城塞都市レイグリットにサムイが来てから、もう一年が経った。
城の中、城壁の上、街の中をひと通り案内をした後、
サムイが体力作りをしたいと意欲的だったため、
少しずつ鍛錬する事にした。
ある日は城壁をウサギ跳びで周り、
ある日は城の外周を重りを付けて走り、
ある日は街の中の障害物を避ける訓練をし、
ある日は訓練場で剣の避け方を教え、
ある日はナイフや弓が使えるように教え、
ある日は近くの山へ重りの入ったリュックを背負って登り、
ある日は乗馬を教えて、
ある日は森で小動物を狩り、
ある日は川まで馬で行き釣りもした。
俺がルーバに鍛えられた内容の10分の1にもならないが、
やっておいて良い物はいくらでもした方がいい。
だが、思った通り、サムイは回復力が早いため
筋肉を痛めても治ってしまう。
いくら筋トレをやっても腕も腹もぷよぷよのままだ。
必死で頑張る姿が可愛いから、筋トレが無駄などとそんな事は教えない。
だが体力はついてきたようで、俺の夜の扱きにも付いて来れるようになってきた。
最近はサムイが率先して、激しい営みを始めようとする。
基本的には俺と2人だが、時々、アイスやイルが入ってくる。
ジャックは、ブルーの教育に悪いからとかで、ここには来ず
騎士団宿舎でブルーと一緒に寝泊まりをしている。
そう、ブルーはサンガルから、ヨークに移住した。
ヨークの民になるには、誰かの養子にならないといけないが、
ジャックが名乗りを挙げた。
まだ、独身なのにいいのか?と聞いたが、大事な人をこれ以上持つつもりはない。
と言われた。
まあ、子供がいてもジャックなら良いという相手は現れるだろう。
ブルーの歳は恐らく5歳では無いかと言う話だ。
名前も付いておらず、その内死んでしまうだろうと見捨てられた子供だった。
サンガルの誰も歳を知らなかった。
だが話し方や、成長具合からジャックやサナが5歳位だろうという結論になった。
ここへ来て既に一年。来た日を誕生日にしたから、もうすぐ6歳になる。
ブルーも一緒に鍛錬するか?と聞いたら、ジャックが血相変えて怒ってきた。
まだ6歳の子供に何をやらせるんですか!と。
いや、俺5歳から鍛錬してたんだけど・・・
え、もしかして、ルーバってこの世界でも普通じゃなかったのか?
それともジャックが子供に甘いのか・・・
まあどちらにしろ、ブルーが幸せに生きてくれればそれでいいや。
と鍛錬は諦めた。
ジャックには、鍛錬しなくてもいいが、生きる術は教えろよ。
と言っておいた。
レイグリットにも学校があるから、その内通わせる事だろう。
学校で思い出した。
サムイの学校の友達、カイとルルがここを訪ねてきたんだった。
王都で、サムイのサポートをしていたとかで、
サムイが神殿に行ってからも、ボランティアで家々を回っていたらしい。
学校を卒業した時に、神殿にサムイを訪ねて報告をした際に
神殿長の計らいで、王城に働き口を紹介したらしい。
王都の神殿長は貴族の出身で、王城の使用人頭にも顔が利くらしく、
神殿より王城の方が賃金も箔も上との事だ。
二年ほど、王城で使用人として働いていたが、
マイカール王から、様子を見に行って欲しいとの依頼を受けてここへ来たらしい。
うちの王様は平民の使用人に普通に話かけて依頼までするのかよ。
まあ、俺が王都に戻らないから、きっと寂しいんだろうな。
だが、俺はここがいいんだ。すまん!王様!
カイとルルには、しばらくここに滞在してもらって、
俺らの様子をそのまま王様に報告してもらう事にした。
甥っ子が幸せにしてる事を知れば、ひとまず安心するだろう。
手紙にはそう書いて送ってあるんだが、どうも信用されていないみたいだ。
まあ、顔を合わせたのはあの一回きり。
酷い状況だったからな。わからんでもない。
俺が成人した時にでも、サムイと一緒に王様に会いに行くつもりだが、
公爵領の運営もあるし、近隣の国の情勢も把握しておきたい。
隠密部隊もサンガルの事があったから、鍛え直した。
俺に忠誠を誓う者を騎士、傭兵、衛兵、守備兵問わず
うちの訓練場で試験をして、俺が直々に隠密部隊の配属を決めた。
その試験をサムイも一緒に見ていたんだが・・・
「ねえ、アツイ。
隠密部隊になる人って細い人や背の低い人いるけど、見てる限りみんなある程度筋肉付いてるよね。
僕、一年前から鍛錬してるけど、全然つかないよね。
なんでだろう。みんな僕より沢山筋トレしてるのかな。
もっと頑張らないと、筋肉って付かないのかな。
うーん。」
と言って腕に力を入れて力コブを出そうとする。
うん、全く出ない。
「サムイ、俺はお前の頑張りを知っているぞ。
だけどな、俺はお前のこの肌の触り心地に満足している。
今でも触ると、ベッドに連れ込みたい気持ちになる。
コブなど無粋だ。お前は俺の期待を十分に満たしている。
体力が付いたんだ。別に筋肉はいらないだろ。」
「えー、うーん、アツイに喜んでもらえるなら今のままでもいいけど・・・
でも納得いかないなあー。ちょっとくらい付いてもいいのにー。
僕だってアツイを抱き上げてみたいし、
何なら僕がアツイと逆になってやっても・・・」
「それ、もうサムイじゃないだろ。
俺は今のままが一番だと思うがな。
まあ、サムイがしたいんなら、頑張って筋トレしないとな。
また明日から鍛錬付き合ってやるよ。頑張ろうな。」
「うん!アツイありがとう!僕頑張るよ!」
両手をグーにしてやる気満々だが、いくらやってもその願いは叶わない。
すまん、サムイ。言えない俺を許してくれ。




