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聖邪混濁 〜寒い冬から暑い夏へ〜  作者: anishina
第三章 青年時代〜サンガル
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サンガル王との対面

アツイ様ーーー!


アイスが走り寄ってくる音が聞こえたので

「アイス!俺は大丈夫だ!ドアを死守しろ!」


「あ、でも、」


「ほら、大丈夫だって。」

とマントを広げてみせた。穴などどこにも開いていない。


「わ、わかりました。」

とドアの前に戻って行った。


俺は、王の手に持っている銃を両手で握り、引き金から指を外して、銃を取り上げた。

「王、驚かせてすまない。少し話がしたい。」

近くの椅子を手繰り寄せ、王の枕元近くに座る。


「王、あのレインボーブリッジはよく出来てた。すごいよ。」

王は目を見開き、俺を見た。


「頑張ったな。ずっとここで王様やってたんだろ?

まあ、戦争はどうかと思うけど、色々頑張ったのはわかるよ。」


王様は涙をポロポロ流し出す。

「あ、あ、待ってたんだ。ずっと。ずっと。

でもだれも来なくて。

俺はここで1人で。

戦争したら、誰かが橋に気付いてくれると思った。

でも誰も来なかった。

人がいっぱい死んだ。死なせてしまった。

人を増やさないとと思って、色々頑張ったんだ。

ここは異世界だろ?

いい薬が手に入ったんだ。

ゴホゴホ

若返りも成長を止めるのもあったんだ。

みんなに話をしたら飲んでもいいって。

俺も一緒に飲んだんだ。

よく効く薬で、でも強い薬だから、少しづつ。

ゴホゴホ

でも半年前くらいから、薬を飲んだ人達の具合が悪くなり出して。

ヨークで癒しが出来る天使がいるって

どうしても手に入れたくて、戦争の話を

グハッ」


「王!話は聞くから、ひとまずこの薬を飲め。

これは悪い作用はないから大丈夫だ。ほら、飲め。」


「はあはあ、ゴクゴク」


「よく1人で頑張ったよ。でもなんでここにはお前の子供しかいないんだ?」


「はああ、俺はもうダメだ。俺が死んだら俺の子の誰かが王になる。

俺の子にこんな孤独な思いをして欲しくない。

ここにいるのはみんな家族だ。

みんなでこの国を、王1人じゃなくみんなで守って欲しかった。

でも戦争の噂を流した辺りから食料が届かなくなった。

まずいと思った。

薬を飲んだ民達が、自ら村に行くと言い出して、

元々村にいた者は、サザンか、スピカの町に移住した。

王都にいた元気な民を少しでもヨークに近い町へ行かせた。

そこならまだ商人が来るかもしれないから。

そして、もしヨークから騎士達が来たら少しでも皆を守れるようにしたかった。

ここに残っている者は、戦いに向いていない俺の子供だ。

町に行かせても足手まといになる。」


「そうか・・・、そうだ、村に幸運スキルの子供が1人いたんだ。知っているか?」


「あ、ああ、俺の子供だ。子供は沢山いて名前は母親が付けるんだが、死んでしまって名前は聞いていなかった。


母親が死んだ小さい子供と乳飲み児を集めた。

ここには、乳をあげる女はもう誰もいない。

育てる女もだ。放っておいても餓死で死ぬ。


俺、この世界ではちょっと不思議な力が使えるんだ。

強く言葉を相手に言えば、その通りになる。

俺は、集めた子供達に、死ねって言ったんだ。

餓死で死ぬより、俺が殺した方がいいと思ったんだ。

そしたら1人、生き残った。

きっとあの子は幸運なスキルか何かを持ってるんだ。

なら、生き残れるように、ヨークに近い所へ連れて行ってもらった。

もしその幸運が村へ行った民達にも訪れるなら、村へ行った民を救って欲しかった。

銃も使い方を教えた。生きる術は多い方がいい。」


「ああ、そうだな。あの子は生きているよ。もう大丈夫だ。」


「そうか、そうか良かった。村へ行った民は?どうなったんだ?」


「あ、ああ、クロス村の民は・・・俺達が村に着いた時は、もう亡くなっていたよ。」


「そうか。俺のせいだな。」


「どうしようも出来なかったんだろ?みんな安らかに死んでたよ。」


「そうか。俺もじきに皆のところに行く。向こうでみんなに謝るよ。」


「ああ、そうだな。あ、そう言えば、ドローンも作ったんだな。

お前何気に凄いよな。」


「あれを見たのか?そうか。テストで飛ばしたとき、魔王を見た。

もし、魔王を討伐したら、勇者の国と言われて、国が豊かになると思った。

この国は凄いって言われて、食料も入ってくる。

だから、見かけたら捕まえてここへ連れてこいって言ったんだ。

俺もバカだよな。魔王なら捕まえられるはずもない。

反対に、ヨークの公爵と間違えたって。笑えない冗談だ。

俺のせいだ。どっちみち戦争は避けれない。

ヨークへ行けば食料にありつけるかもしれない。

でも俺は、ヨーク人にこの国を見て欲しかった。

どんな過酷な場所か。みんながどんなに必死に生きているか。

ヨーク人にわかって欲しかった。


俺が死ぬ前に、同じ日本人に会えて良かった。

開戦したからここへ来たんだろ?

あながち賭けは間違ってなかった。」


「そんな事で開戦するなよ!賭けるなよ!

多くの人が犠牲になるんだぞ?

俺が間に合わなかったら、お前死んでたんだぞ!」


「ああ、俺の手見てくれ。

お前がくれた薬のおかげで身体の痛みは無くなった。

でも、歳は戻らない。

俺の本来の歳は58だ。

どう見てもそんな歳の手には見えないだろ?

村へ行った民も同じ様に歳をとってた。

少しづつでもダメなんだな。まさか、一気に老けるとは。

ははは。だから死ぬのはもうじきだ。

はー、俺は神はいないって思ってた。

でも、最後の最後で神は俺を見てくれたんだな。」


「ああ、もう少し頑張れ!

俺はここにヨークの天使が連れてこられたかと思って来たんだけど

いないとこ見るとスピカの町にいるようだ。

そこから数日でここまで来れる。

それまで頑張れ!天使が見れるぞ。お前の賭けが勝ったんだ。」


「ああ、でも俺は満足している。

俺の苦労をわかってもらえて、もう思い残す事はない。」


「王、名前を教えてくれ。」


「俺の名か?ここでの名前なら、ラグルリット だ。

日本人名は、タチバナ リョウタ。

神はなぜ、前世の記憶を残して転生させたんだろうな。

無い方が余程幸せだったに違いない。」


「ああ、そうだな。ラグルリット。」


「喋り疲れた。少し寝るよ。起きたらお前の名前も聞かせてくれ。」


「ああ、わかった。おやすみな。」


「う・・・ん」

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