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聖邪混濁 〜寒い冬から暑い夏へ〜  作者: anishina
第三章 青年時代〜サンガル
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サムイ様は神様だー。

アツイ様、遅いなあー


サムイがスピカの町の門の上から、クロス村への街道をジーと見ていた。


「ねえ、ジーク、戻った方がいいんじゃない?

ここの町を無力化したって言いに。」


「サムイ様、待てば来るのですから、わざわざ戻らなくても。

それにアツイ様達は、ここに戦力が集まってる事すら知らないのですから

普通にやってくると思いますよ?

疫病がこちらで流行っているかもとサムイ様を先行させたのですからね。

それに、まだ目的地ではありません。

ここからまた王都に行かねばなりませんので、少しでも身体をお休め下さい。

馬に乗るのも慣れていないのですから、お疲れでしょう?」


「もう昨晩、綺麗なお部屋で寝たから疲れも無くなったよー!

まだかなあ。アツイ様。

ヨルンがまだ具合悪いのかな。アツイ様は優しいから治るまでこないのかなあ。」


サムイの後ろからスピカの町長が声をかけてきた。

「神様、サンガルの者がお顔を見たいとここへ殺到しております。

申し訳ありませんが、お顔をお見せできませんか?

ささ、こちらへ」


「えー、またあ?今日これで何度目になるの?

僕の顔、もう見飽きたでしょう?」


「何をおっしゃいますか!神様のご尊顔はずっと見ていても飽きるなど!

ありえません!どうか、どうか皆にお顔を。お願いいたします。」


「はあ。わかったよ。」

と門の上から、町側の方に開けた所まで歩いて行く。


上から見下ろすと、沢山の人達がこっちを見ている。

兵士、町民が集まっている。子供と年寄りはいないみたいだけど

ここが戦場になる予定だったんだから、どっか別の所に避難しているんだろう。


「みんな、怪我とかしてない?寝込んでる人がいたら言ってね。」

と言いながら、手を振る。


サンガルの皆から歓声が上がる。

「神様ー!来ていただいてありがとうございますー!」

「神様ー!」

「神様ー!」


はあ、僕は神様じゃないんだけど、ジークが、このままでいいんじゃないですか?

とか言うものだから、違うと言い出せなくなっちゃったな。


しばらく手を振った後、また門の上、街道が見渡せる所へ移動する。


「サムイ様、アツイ様の一行はまだ見えませんか?」

ジャックがブルーを連れてやって来た。


「うんー、まだ見えないよ。」


「ブルー、アツイ、みたい。アツイ、あいたい。まだ?」


「うん、まだだね。」


アツイ様ったら、こんな小さい子供を誑かしていくんだから!

ブルーって名前もアツイ様が付けたって聞いた時、

僕がどれだけビックリしたか。

まさか、アツイ様の子供にするつもりじゃないよね。

僕が!僕がアツイ様の子供を産むんだからね!

アツイ様と僕の子供・・・ああ、想像するだけで顔がニヤける。


「サムイ、かお、とけそう。だいじょうぶ?」


「ははは、どうせ、アツイ様の事を考えてたんでしょう。」

とジークが言うと、ジャックが

「違いない。クックック」

と笑う。


戦時の敵のいる場所とは思えぬ和やかさだ。


「あ!あそこに荷馬車のホロが見えてきました。

馬ではなく、荷馬車で来たから遅くなったんですね。」


もう夕方、町に灯が所々で灯されていく。


「ああ、あの2台は神殿の荷台ですね。

糧食などが載せてあるはずです。

ひとまず、我らの分を確保してあとは、ここの者らに分け与えましょうか。」


「そうだね。あと、ここから王都まで、2日でしょう?

往復4日と国境の所まで全部で1人6日分あればいいのかな?」


「そうですね。王都の1日を足して7日あれば余裕かと。

それに王都まで2日というのは馬車で行く場合で、

馬で駆ければ1日で着くと思いますよ。」


「ん!じゃあ、あとはジークに任せるよ。

僕は下へ行って、アツイ様をお迎えするよ!」

サムイはジークの返答を待たずに、下へ降りる階段に向かった。


「サムイ様が2日癒しを使わなかっただけで、言葉が以前のように戻ってきたように思う。

ジャック殿、どう見えた?」


「ええ、私にもそう見えました。

神殿では、かなり酷使されていたのですね。」


「あ、いや、それを言われると心臓に矢を射抜かれたようだ。

サムイ様のしたい様にとさせてしまった我ら大人の責任だ。

なにを言っても言い訳にしかならない。

申し訳なかった。」


「いえ、責めても仕方ないので責めませんよ。

今は、元に戻って来た様で、安心している所です。」


「ジャックー!ぼくも、アツイ、あうー!」

ブルーが、ジャックの服を引っ張って、サムイの行った方へ行こうとする。


「ああ、わかった。一緒に行こうな。」


ジャックはブルーの手を握って、下へ降りて行く。


ボソ (あの男、サムイ様にもあの様な接し方だったのだろうな。羨ましい。)


その後ろをジークも一緒に付いていく。


門の前で、サムイが今か今かと首を伸ばして荷馬車を待っている。

ジャックはその横でブルーを抱っこして同じ方向を向いていた。

ジークはサムイの後ろに立って、サムイにサンガル人が近寄るのを牽制していた。


しばらくすると、肉眼でも御者の顔が見えてきた。

「あ、あれはロガン?サザンからこっちへ来てたのか。

無事にサザンも無力化したか。良かった。」


「アツイ様ー!!」

と大きな声で、サムイが叫ぶ。


その声にロガンはこちらに目を向けた。


物凄い驚いた顔をしているが、何かおかしな格好をしてたか?

とジャックは自分の姿やサムイの姿を見回した。

?何も変わった所はないが・・・

ああ、ブルーを抱っこしているからか?


「ジャックさーん!無事だったんですかー?」

ラックの声が、荷台の方から聞こえて来た。


無事?ああ、疫病に罹ったか心配してくれたのか。

「ああー!みんな大丈夫だー!」


そのまま荷馬車が門の所まできて止まった。

「アツイ様ー!アツイ様はどこ?」


ブルーも一緒に

「アツイー、どこー」

と頭を動かしてアツイ様を探している。


ロガンとラックは顔を見合わせて、困惑した顔をする。

ジャックは、その顔を見て、焦りだした。

「おい!アツイ様に何かあったのか?もしかして、疫病に罹ったのか?

何があった!説明しろ!」


ジャックの迫力に狼狽える2人。

荷馬車の後ろから、馬に乗ったヨルンが近寄ってきた。

「いや、そうじゃない。

アツイ様も騎士団のみんなも元気だ。

そうではなくて、どこから話せばいいのか。

とにかく、アツイ様はここにはいない。」


「ヨルン!お前、大丈夫なのか?」

ジークが声を聞いて、振り返った。


「ヨルン!もう身体は大丈夫なの?

アツイ様がいないってどういう事?」

サムイが首を捻る。


「恐らく今頃、次の村リゲルの近くにいる。」


「「「 は? 」」」

サムイとジャックとジークの声が被った。

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