リゲル村
いつもより長くなりました。
ほぼ徹夜になってしまい、今日の戦いに何かあってはと、アイスが元気の薬をくれたので飲んだ。
この薬、副作用とかないのかな。
強い薬には副作用が付き物だ。
「アイス?この薬って、飲むと元気になるけど、その代償みたいな何かはないのか?」
「この薬の悪作用ということですか?んー、あまり聞いた事はないですね。
この薬に限っては、ですが。
他の薬で、使い続けると悪作用が出る物を知ってますので、全ての薬が出ない訳ではないですよ。」
「一応、参考のために聞きたい。悪作用とかが出るのはどんな薬があるんだ?」
「そうですね。いずれも数年間服用した場合になりますが、
髪が生える薬は、突然全ての髪が抜けます。
若返る薬も同じで、突然一気に年寄りになります。
これは例えば10歳若返ったとしても、限界がくると、本来の歳から10歳年をとります。
同じだけ反動で返ってくる感じですかね。
また、成長を止める薬も限界がくると、老化が急速に早まり、身体の中から腐ってきます。
・・・何でも程々がいいという事ですよ。
あと、ヨークでは王様の許可が無いと使えませんからね。」
ボソ (・・・・・まさか、年寄りと、腐ってたのは・・・いやいや)
「そうか。そんな薬があるのか。気をつけるよ。」
「・・・あ、ええ、知らない人から薬を貰っても飲んではいけませんよ?」
「俺は小学生か!」
「はい? しょうがくせい ですか?」
「ああ、すまん、思わず。薬はわかっている物しか飲まないようにするよ。」
「ええ、そうして下さい。
さ、グレイ団長の所へ、今日の段取りを聞いて来て下さい。
私は、荷物の整理をしておきます。」
「ああ、わかった。」
天幕を出た所で、タールが見張りに立っていた。
「タール、グレイ団長はどこにいるか知ってるか。」
「あ、はい。朝早く、自ら偵察に行かれました。」
「ええ? グレイ、大丈夫なんだろうか。」
「大丈夫ですよ。隠蔽用の魔道具持っていきましたから。」
「え!そんなのあったけ。」
「はー、アツイ様。以前、公爵領で持っている魔道具の種類、勉強してましたよね。
もう忘れたんですか?」
「はははー、そうだっけ。普段使わない魔道具の話って記憶に残らないんだよなー。
そん時、俺、多分目の前にあった視覚共有の魔道具に夢中だったわ。
あれ、持ってきてるの?」
「持ってきてると思いますよ?
ただ、共有する鳥や動物がいないので、使えないんじゃないですかね。」
「あー、そうだよな。本当にこの土地、どうなってるんだか。」
「ええ、俺もこんな土地があるとは、驚いてますよ。」
「神に見放された土地 か。確かにそんな感じだ。
ではなぜこんな所に国が・・・て、習ったな。
鉱山があって、良質の鉱物が取れるから、だったよな。」
「ええ、ここの鉄鉱や銅はいろんな物に加工出来ますからね。
あとは、ここでも育つ瑠璃麻を生産していますので、布にして流通しています。」
「上手く貿易すれば、それなりに発展する国ってことだよな。
はあ、サンガル王に会って、話がしたいな。」
「そうですねー。どう思っているのやら。
そう言えば、ロガンやラックは上手くやっているでしょうかね。」
「ロガン達は大丈夫だろう。サザンの時の様に上手くやってるさ。
向こうだって食料は欲しいだろうし。
全員が略奪は無いと判断したしな。サンガル人は商人を大事にする傾向があるらしい。
そりゃまあ生命線だしな。
上手く情報を聞き出せればいいんだが。」
「あ、グレイ団長戻ってきましたよ。」
「本当だ。おーい、グレイ、どうだった?」
「おはようございます。アツイ様。
昨夜は夜更かししておりましたが、よく起きられましたな。
感心、感心。わっはっはっは!」
「あー、お見通しかよ。で?リゲル村の様子はどうだった?」
「はい。まあ、そんなに慌てずとも。
皆で朝飯でも食べながら、話しましょう。
タール、この天幕が1番大きいから、隊長達をここへ呼んできてくれるか?」
「はい!」
タッタッタッ
「では、茶でも飲みながら、待ちましょう。」
グレイが馬から降りると、従者が近寄ってきて馬を連れていく。
グレイは、
「アイス、茶を出してくれ。」
と言いながら、天幕の中に入った。
俺も後に続く。
地面にクッションみたいなのを置いて、その上に座る。
アイスは、
「はい。今お出ししますね。」
と茶葉を荷物から取り出し、筒に入れた。
しばらくして、カップに注ぐと、いい香りのする温かいお茶が出た。
美味しいお茶を飲んでいると、5人、天幕に入ってきた。
1番隊から5番隊の隊長達だ。
「皆、呼び出しに応じて参じました!」
「ああ、みんなひとまず茶でも飲め。」
「は?あ、はい!いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」
アイスが、さっきと同じ手順でお茶を出す。
「はあー、美味い茶だ。」
「ああ、久しぶりにアイス隊長、あ!すみません!
アイスさんに淹れていただきました。嬉しいです。」
「やっぱり、美味いよなー。」
「同じ様にしても、何故かこの味は出ないんだよ。」
「ここで、アイスさんのお茶が飲めるなんて。感激です!」
「お褒めの言葉、ありがとうございます。」
「なあ、グレイ、アイスは隊長だったのか?」
「アイス、アツイ様にご説明してなかったのか?」
「あ、はい。必要ないかと思いまして。」
「はあ、お前なあ。アツイ様、
アイスはアツイ様がサンガルに行くとお話があった時、
2番隊の隊長を辞めて、アツイ様の護衛に志願したのですよ。
スレイとタールは、2番隊からアイスが一緒に引き抜いたので、
今でも、アイスに逆らう事はないでしょう。
隊の規律は厳しいですからな。」
「え!アイス、隊長を辞めて俺の護衛になったのか?
そんな!役職は隊長のが上だろ?
それに、2人も同じ隊から引き抜いて、大丈夫だったのか?」
「アツイ様の側にいられる方が、隊長より上ですよ。
あと、2番隊の補充はすぐ埋まりましたので、ご心配なく。
アツイ様、私の待遇を気にかけていただき、ありがとう存じます。
ですが、他の隊長にこの場所を取られる訳には参りませんので、
私、必死に根回しをしたのですよ?ねえ?皆様?」
「はっはっは!そうそう、こいつ必死だったわ!」
「ええ、怖かったです。」
「もう、ほんとしつこかったです。」
「どっからあの情報を知ったのか、恐ろしい。」
「今でも、アイスさんが羨ましいです。はあ。」
「ね!アツイ様。
今では私、アツイ様をいついかなるときでも
触ることを許していただいています!
ほら!いいでしょう〜」
とアイスは俺をいつもの様に、膝抱っこして、マントの下に手を入れて触る。
「はあ、お前本当に俺の事、好きなんだな。
いや、嬉しいよ?俺はこんなんなのに、慕ってくれてさ。
サンキュウな。ちゅう。」
アイスのほっぺに感謝のキスをした。
「うふふ。アツイさまあー。」
アイスにぎゅうと抱きつかれた。
「あー、はいはい、羨ましい限りだな。」
「いいなあ。」
「なんで、俺、諦めたんだろう。」
「うーん。何かいい贈り物でも用意しようかな。そしてあわよくば。」
「どうにかして、お側にいけないかな。」
「おーい!そろそろ、偵察の話をしたいいだが?」
「「「「「す!すみません!」」」」」
「グレイ、話して。」
「あーコホン。ここから北西に10分くらい行った所に、リゲル村がある。
隠蔽の魔道具を使い、村の中へ入った。
死人がいたかどうかは分からないが、村民はまだ生きている。
ただ、みんな年寄りばかりだった。
兵士がいるかもと見て回ったが、全員白髪で、ヨボヨボの老人ばかりだ。
子供も、1人とて見ていない。
もちろんサムイ様もおらなんだ。
どうも腑に落ちない。
兵士はサンガル王都かスピカの町に分散されているか、
またはどちらか片方に集めているのか。
なぜあの村は年寄りだけなのか。
最初の村も年寄りか腐っている者だけだったな。
誰か、何か意見はあるか?」
「グレイ団長、これは憶測の域をでませんが、よろしいでしょうか?」
「アイス?なんだ。言ってみろ。」
「先程、アツイ様に薬の悪作用を説明させていただきました。
その説明の中で、若返りの薬と、成長を止める薬の悪作用が
クロス村の死因かもと、頭を過りました。
もしかすると、クロス村とリゲル村で薬の実験をしていたのかと。」
「お、おお、なんてことだ。
もし、それが誠にサンガル王の仕業なら。
神をも冒涜する行為だ。
全ては、神が恩恵を与えたもう生命の灯。
それを実験になど。」
「なあ、待てよ。それは、憶測だろ?
本当に実験だったのかわからないだろ。
もしかしたら、好意で薬を飲ませたかも知れないじゃん。
悪作用知らなかったら、めっちゃいい薬なんだから。」
「アツイ様はお優しいですな。
サンガル王を庇うとは。
ですが、確かに憶測です。
勝手に決め付けてはいけませんな。
申し訳ありません。」
「俺は!・・・」
俺は、サンガル王が元日本人だから庇うのか?
だって、レインボーブリッジを見た目だけでも作っちゃうやつだぞ?
銃やドローンを作る奴でもあるし、戦争もしちゃう奴だけど・・・
もし、俺がヨークじゃなくて、ここに生まれてきたら。
同じ事をしたかもしんない。
20年前、戦争でいっぱい民が死んだなら、増やそうと考える。
死んだのは年齢で言えば20〜50歳までの男子。
戦争に行かせるなら戦えないとな。
残った年寄りでは子供を産めないから、若返りの薬があれば使うだろう。
残った年頃の女には、成長を止める薬も同じ理由で使う。
そして、恐らく自分も使う。
ブルーが言ってたじゃないか。
王様の子供は沢山いるって。
男は、歳取っても子供は出来るが、悪作用を知らない俺なら絶対飲む。
勃ちが違うだろ?
ってことはさ。
「悪い。俺、今からサンガル王に会いに行ってくるわ。
本当は、今日リゲル村に兵士がいたら、村毎制圧する予定だったよな。
でもいない。その場合は、スピカからロガンがリゲル村まで来るのを待つか
王都に先行して潜入するか、現状を把握した後、動く手筈だった。
でも、どうしても、今すぐ、会いに行かないと手遅れになる気がする。
お前達はロガンを待ってから行動してくれ。
俺、捕まりに王都へ行ってくる。マントがあるから死にはしない。」




