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聖邪混濁 〜寒い冬から暑い夏へ〜  作者: anishina
第三章 青年時代〜サンガル
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サンガルの国境の街

会議が終わり、守備隊、衛兵、王都騎士団、公爵家近衛騎士団、隠密部隊

それぞれの長が、慌ただしく準備をする為、部屋から出ていく。


部屋に残ったのは、俺と俺を護衛する4人だ。


「さあ、ちょっくら、国境の橋と渡った先を確認してくるかー。行くぞ!」


「「「「 は! 」」」」


宿屋に戻り、ロガンとラックを連れて、荷馬車が置いてある所へ移動する。

みんなそれぞれの服に着替える。

俺は、耳を触って、色を変える。

最初に計画していたのが、この状況下で役にたってくるとはな。


2台の荷馬車に乗り込み、国境の橋の手前の関所へ行くと、

通行証の確認、荷物の確認を経て、橋への入り口が開かれる。

幅広の橋を荷馬車が、ガタコトと走る。


ほーー、よく作ってあるなあ。だけど、やっぱ思った通りだな。

見た目はレインボーブリッジだが、実際は普通の橋に装飾してあるだけだわ。

実質的に、吊り橋で馬車を何台も行き来させようと思うと、かなりの強度が必要になる。

恐らくサンガル王は東京付近の出身なんだろう。

30年前、郷愁の思いで作ってもらったんだろうが、そんな簡単に作れるもんじゃない。

銃やドローンは、何度か試行錯誤すれば作れるだろうが、橋はそうはいかないからな。


作り手の事を考えながら橋を渡った先に、またサンガル側の関所がある。

通行証を出すと、思いの外すんなりと入れた。


開戦したと言うのに、こんなに警戒がザルでいいのか?

と思ったが、街を走って納得した。


見るからに食料が足りていない。

路上で、痩せ細った人達が蹲っている。

ダイバオでは一切見られない光景だった。


ヨークから来た馬車だとわかると、ヨロヨロしながら、後をついてくる。


ヨークからの馬車を待ってたんだ。

食料を積んでるってわかってるから。

だから関所の人もすんなり通したのか。


こんな光景、思いもしなかった。

何やってんだよ!サンガル王は!

仮にも日本から来たんだろ!

そんで王様やってんだろうが!

なんで!戦争なんだよ!

頭あんなら、交渉しろやー!


と頭に来てたら、顔が真っ赤になってたようで

「アツイ様、大丈夫ですか?」

と、ラックに心配された。


「ラック、この光景をお前はどう思う?」


ラックは外を見て

「僕はヨークに生まれて良かった、と思いました。

今まで、国の外へ出た事はありませんでしたが、

国によって、こんなに違うのかと、驚きました。」


「そうだな。俺もヨークに生まれて良かったと思う。

けど、こうなってるのは、民が悪い訳じゃ無い。

上の者がきちんと働いていないからだ。

俺は、公爵家に生まれた。

上に立つ物として、この光景を忘れず、決してヨークがこうならない様に働くと誓う。」


「はい!アツイ様にお仕えして、僕も出来る事をお手伝いしたいと思います。」


ガタン。

「アツイ様、着きましたよ。

ご指示通り、街の中央広場です。

普段であれば、賑わっているのですが・・・

出店も人も見当たりませんね。

やはり、開戦したので戒厳令が出ているのでしょう。」


ロガンは商売しやす様に、中央広場の端に荷馬車を停めた。


「そうか。兵士も見当たらないな。

ジャック、どの辺にいたとか会議でいってたか?」


「そうですね。小隊で散らばっているような事をいってましたが。」


「うーん、これ、どうやって隠れてる奴らを外に出せば・・・」


「ご心配には及びません。そこは私にお任せを。

その前に荷馬車の設置を皆さんでお願いします。」


ロガンの指示で2つの荷馬車の後ろをくっ付ける形に置いて、馬を荷馬車から外した。

ロガンは、荷馬車の屋根の片側を外して、外側に屋根を作った。

商売時に、雨が降っても濡れない様になっている。


荷馬車に積んであったのは、日持ちのする固い糧食と、芋などの根菜類だ。


ロガンは、メガホンもどきを持って息を吸い、

「食料を持ってきたー!今から売り始めるよー!早い者勝ちだー!」

大音量で街中に響き渡る。


どっから湧いて出るのかと思うくらい、街の人やサンガル兵が入り混じり

凄い勢いでやって来る。


「はいはーい!キチンと並んで並んでー!ちゃんと並ばないと売れないよー!

ここにいるこわ〜いお兄さんが見張ってるからね〜!

お金は持って来たか〜い?物物交換でもいいが、対価に見合う物じゃないと売れないよ〜!」


ヒソヒソ (ロガン、大丈夫なのか?集まるのはいいけど、略奪が起きるんじゃ?)

ヒソヒソ (アツイ様、大丈夫ですよ。良くも悪くもサンガル人は素直なんですよ。

最初にこうすると言えば、それに従います。)


まじか。複雑だが、今はありがたい。


「アツイ様、サンガル兵がかなり集まっています。

見る限り、街の人達同様、あまり食べていない様です。

あれでは、戦う前に倒れますよ。

ですが、全員銃を携帯しているのは間違いありません。

倒れても引き金を引けば、人を殺せる武器とは・・・

厄介な物を作りましたね。サンガルは。」


「そうだね。」

俺が銃を作ったわけではないが、向こうの世界の物の知識を持ち込んで

こちらの人達を困らせる事になった状況はなんだか罪悪感を覚える。


今、それを嘆いても始まらない。

「さあ、計画通り、始めようか。」


「はい。ラックはロガンを手伝ってくれ。

スレイ、タール、後を頼む。」


「了解です。」

「お任せを。」


ジャックとアイスは、右、左に別れて建物の陰にいき、

塩水のブクブクを中央広場の上空に打ち上げる。


すると、雨の様に降り始めた。

誰も、雨だからと帰る者はいない。


ジャックとアイスは数分おきに場所を移動しながら、ブクブクを打ち上げていく。


街の人には可哀想だが、仕方ない。


ロガンが並んでいる人々に手渡しで売っている。

ラックは商品の出し入れ、スレイが横で睨みをきかしている。


俺とタールは今のところ出番なし。

だけど、街の人が震えているのを見て、何もしないのはやはり心がざわつく。


「なあ、タール、炊き出ししないか?」


「は?炊き出しとは?」


あーこっちには無いのか。


「ここで、大人数のスープを作って、来た人にあげるんだ。

みんな寒そうだろ?

魔道具の鍋あったよな。材料も根菜類や干し肉あるし、すぐ出来るな。」


「ええ!了解です!すぐ用意しましょう!」


「おーい!今からスープを作るから、欲しけりゃお椀を持って並べー!」


それを聞いたサンガルの人達は、わたわたと食器を取りに戻っていく。


芋とかぼちゃを洗って、適当に小さく切る。

あとは鍋に食材とお湯を入れて、煮る。

魔道具の鍋なので蓋をすると煮える。火も使わないので有難い。


既にお椀を持って並んでいる人達がいた。


「さあ、配ろう。」


街の人も兵士もごちゃまぜになって、並んでいる。


兵士がお椀を差し出して聞く。

「これはいくら払えば貰えるんだ?」


「お金は要らないよ。寒そうだったから、俺の奢りだ。」


「な、に?お前達は商人だろう?儲からないのになぜこんな事を。」


「何も儲ける事だけが大事じゃない。あんた達はお客様だ。

倒れられたら商売出来なくなるからな。

こっちもちゃんと考えてるよ。」

俺は、怪しまれない様に、ニコッと笑って誤魔化した。


「ははは、俺達は、ヨークを攻めようとしていたはずなのに、

こんな施しを受けるなんて・・・

なあ、これを対価として受け取ってくれ。

もう、俺は兵士を辞めるよ。」

と、銃を渡してきた。


え・・・まじで?


「いいのか?高い物じゃないのか?」


「いいんだ。こんな物より、このスープの方が価値がある。

あんた、いい奴だな。ありがとう。」

とニッコリ笑って、スープを受け取り去っていった。


それを見ていた他の兵士も、次々と銃を渡してスープを貰っていく。


え、ええーー、予想外な事にみんなの目が点になっていた。


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