王都騎士団団長ヴォルフ
ダイバオの守備隊本部に王城と繋がるゲートがある。
サンガルと開戦するにあたり、王都から騎士、兵士を出兵してくれる事になったが
急ぎ、今後の戦略を詰める為、王城から、王都騎士団団長がゲートを通ってやってきた。
「よくいらしていただきました。
私はこのダイバオの守備隊隊長のレグルスと申します。
どうぞよろしくお願いします。」
「ああ、こちらこそ急な来訪に応えていただき感謝する。
王都騎士団団長のヴォルフだ、よろしく頼む。」
ゲートのある部屋から出た所で、二人が握手を交わした。
会議場まで案内をしながら歩く。
「こちらに、レイグリット公爵が来ていると聞いたが、誠か?」
「はい。サンガルの怪しい動きで、内情視察で来ていたそうです。」
「はああ、公爵は、自分が蟄居の処罰を受けている事を忘れているのか?
王も王だ。あの様な災厄を起こした者を蟄居だけなど甘い!
その上、今回の総指揮をその子供にさせるなど、開いた口が塞がらぬ!」
「それは・・・。
王都の災厄は聞き及んでおりますが、事故の様なものとも聞いております。
それに、処罰内容ですが、公爵領での蟄居という事でしたな。
このダイバオも公爵領ですので、ここにいても問題はないはずです。」
「な!何をその様な屁理屈を!
そなたは、あの災厄を知らぬからそんな事が言えるのだ!」
「ええ、その場に私はおりません。
ですので、被害に遭われた方の思いは、私などの想像をはるかに超える事でしょう。
ですが、まだ10歳の頃にその様な処罰を受けて、
あのようにご立派な方になっておられるのをみると、
私には王の采配が最適解だったと思わざるを得ませんな。」
「な?貴殿はその子供に騙されているのではないか?
あれから5年しか経っておらぬ。まだ15の子供に何が出来る!」
「それは、実際に見て、感じていただきましょう。」
いつのまにか、会議場の前まで来ていた。
レグルスが、ドアを開けて、中に入るよう促す。
「ふん!私は騙されんぞ!」
ヴォルフが会議場に入ると、
大人の中に混ざって子供が一人いる。
テーブルの上には地図が置いてあり、議論を交わしていた。
「橋の向こうの敵の人数は?動きはどうなってる?」
「はい、偵察部隊の報告では、兵士は約500人ほどいるようです。
サンガル王からの指示待ちのようですが、部隊割もされており、各自銃を携帯しているとのこと。
あとは、どうも年齢が若い者が多いようです。」
「若くても銃は撃てるからな。戦争経験が無くても即戦力になる。
銃の無力化の方法を考え無ければな。何か有効な魔道具はあるか?」
「そうですね。先日のように暗ければ、同じ手が使えるでしょうが、昼間となると・・・」
「無いか。あ!そうだ!魔道具に水を出すのあるよな。風呂場で使うやつ。
あれ、塩水にできるか?」
「え?どうでしょう。何に使うか教えてもらえますか?」
「銃っていうのは鉄で出来てるんだ。
塩水につけて数時間放置しただけで、錆びて使い物にならなくなるはず。
押収した銃で試してくれ。但し、引き金を引くと暴発する恐れがあるので充分注意してくれ。」
「それなら、ブクブクが使えます!
通常は、水を放射して、相手の牽制に使うのですが、
塩水に変更して上空から降らせば、敵も雨かと思い気にならないかも。」
「それは使えそうだ。だがそれなら、敵全員に外に出て来て貰わねばならないな。」
「俺が出る。また、黒髪、金目が役に立ちそうだ。
向こうの橋の前で俺が立ってれば、釣れるだろ。」
「アツイ様!」「公爵様!」
「アツイ様、またあなたはご自分を軽んじる!その癖はやめていただきたい!」
「いや、軽んじてる訳じゃ無いさ。一番効率がいいから言ってるだけさ。
もう決めたから。文句を言うなよ。」
「はあー、全くあなたは・・・
は!申し訳ありません!全く気付かずに。王都の騎士団長様でしょうか?」
ヴォルフは暫し呆然としていたが、騎士の問いかけに我に返った。
「ああ、王都騎士団団長のヴォルフと申す。
この度は、開戦に向け話を詰めたく先行してゲートで来た。
詳しく聞かせていただこう。」
アツイは、驚いた顔をして、素早い動きでヴォルフの前へ来た。
なんだ?
ヴォルフが訝しんでいると、
アツイは腰を曲げて頭を下げた。
「ヴォルフ殿!5年前の襲爵の折、謁見の間に騎士が何人もいた。
恐らく貴殿の部下だったであろう。
全員、俺のせいで死なせてしまった。
本当に申し訳無かった。
謝罪しても命は元には戻らないとわかっている。
ただの俺の自己満足になってしまうが、謝罪させて欲しい。」
「あ・・・ああ、レイグリット公爵様、頭をお上げ下さい。
謝罪も不要です。
我々騎士は、仕える主君に命を捧げております。
あの場所で、儚く逝ってしまったのも、忠義のため。
誰もその尊厳に異を唱える事はありません。
それよりも、今は敵国との戦いを最優先にして下さい。
我々はあなたの指示に従いましょう。」
とヴォルフは、膝を折った。
「ヴォルフ殿。すまない、あ、いや、感謝する。」
「で、我々は何をすればよろしいかな?」
ニコッと笑顔をアツイに向けてくる。
「ああ、ではこちらで話を」
とアツイは元の場所へ戻り、ヴォルフもテーブルの前へ移動する。
後ろからレグルスが、ドアを閉めて、微笑んで会議に参加した。




