神殿騎士団
王都の神殿騎士団、総勢200名
その内、親衛隊20名、従者30名、騎士150名
で成り立っている。
その騎士団を統括しているのが、ヨルン団長だ。
神殿の横に騎士団の本部が併設されており、
その向こうに広い演習場がある。
今朝、全団員に緊急収集がかかり、この演習場に全員整列している。
ヨルン団長が皆の前に立った。
「神への忠誠を誓って、敬意を示せ!」
「は!神に忠誠を!」
皆が、握った手を胸に置く。
「皆の者、今日集まって貰ったのは、全員に注意喚起をするためだ。
この神殿に昨日、神の子が参られた!
神の子ゆえ、お顔を直に見てはならぬ!いいか!
跪いて顔を上げるな!
守れぬ者は、厳罰とする!わかったな!」
「「「「「 は! 」」」」」
「では、神の子の護衛を決める。
親衛隊長!ここへ!」
「は!」
「貴賓ゆえ、親衛隊の中から護衛を選ぼうと思うが、いいか?」
「は!ありがたき幸せ」
「うむ。ただし、平民に対し偏見のない者を選びたい。4人ほど候補はいるか?」
「親衛隊は、皆貴族ですので、少なからず偏見はあるやも。」
「うーむ、もしいない様なら、騎士から選抜することになる。」
「いえ、それでは親衛隊の沽券に関わります。
相手が平民でも神の子であれば、仕えられるでしょう。
アインス!ツヴァイ!ドライ!フィーア! 前へ!」
「「「「 は!」」」」
4人が前に出てくる。
「お前たち、神の子が平民出身でも、平身低頭で仕えられるか!」
「はい!」「お仕えさせて下さい!」「大丈夫です!」
皆、目がキラキラしているから大丈夫そうだ。
「よし、この後、私に付いてこい。
隊長も一度挨拶した方がいい。一緒に来い。」
「は!承知しました。」
「全員!解散!」
「「「「「は!」」」」」
「さあ、行くぞ。」
神殿の方へ、団長の後を5人が、キビキビしながら付いていく。
神殿奥の貴賓室まできたら、神官長のヴィランが待っていた。
「どんな様子だ?」
「今、朝食を取られた所だ。お着替えも済まされている。」
「眼鏡は?」
「うむ、気を使ってか、今は掛けておられる。」
「そうか。では、まず、親衛隊長と挨拶し、
そのあと護衛する4名を紹介しよう。
ああ、お前たち、聞き忘れるところだった。
スキル遮断の魔道具は、皆何か付けているか?」
「はい。」
「では、隊長、神官長、行くぞ。他は待機だ。」
「は!」
コンコン
「サムイ様、今よろしいでしょうか?」
「あ、はい、大丈夫です。」
「入ります。」
ガチャ
「昨日は、よくお眠りになられましたか?」
「はい。すみません。拭いて貰ってる途中で寝てしまったみたいで。」
「いいえ、そのような事お気になさらず。昨日はお疲れでしたね。
今日は、護衛をする者を連れて来たので、挨拶に参りました。
この者は、親衛隊長です。
護衛する者達を決める立場にありますので
もし、護衛に不備があるようなら、私かこの者に伝えて頂ければ、
入れ替えさせていただきます。」
「親衛隊長のジークと申します。
何でも遠慮なくお申し付け下さい。」
「あ、はい!よろしくお願いします。」
「ふむ。ジーク、お前最近、抜いたか?」
「は? な、何を突然!」
ヴィラン神官長は、急いで、サムイの後ろへまわった。
「今、サムイ様は眼鏡をしておられるので、お顔を見る事が出来るが、
眼鏡は出来るだけ無しで過ごして欲しいのだ。
で、いつだ?」
「?? 1週間程前かと。」
「うーん、微妙かも知れんが、まあ、ものは試しだ。
サムイ様、一度眼鏡を外して貰えますか?」
「はい。」
眼鏡を外した。
真正面で顔を見た。
「ああ、神様!んっ、ぐっ、ヨルン!」
跪き、手を組み合わせてサムイを仰ぐ。
が、耐えているのがよく分かる。
「ほお。さすが。
ヨルン団長よりは少々残念ですが、
やはり身体を鍛えているのが良いのですかね。
ん?ヨルン団長は大丈夫なのですか?」
「ああ、俺は昨日抜いてきた。おかげでこの通りだ。」
・・抜く時、サムイ様のお顔が浮かぶのは言えんがな。
「なるほど。これはいい情報です。それなら・・・」
神官長がブツブツ言い出しているが、声が小さいので聞こえない。
「ふう、ふぅ、ヨルン!俺を忘れるな!!」
「ああ。サムイ様、すみませんが、眼鏡を。」
サムイが眼鏡を掛けると、ジークは脱力した。
「まあ、こういう訳だ。」
「なにが、こういう訳だ!ヨルン!先に説明しとけよ!」
「クックック、ジーク、言葉が昔に戻ってるぜ?」
「お前!わざとだろ!絶対そうだ!そういう奴だからな。」
「お貴族様が、そんな言葉遣いでいいのかねー」
「お前もだろ!全く!はあーー!
は!すみません!
サムイ?様。お名前はサムイ様でよろしかったでしょうか?」
「あ、はい、クスクス。お2人は仲が良いんですね。」
「ただの腐れ縁ですよ。で、ヨルン、ちゃんと説明しろよ。」
「まあ、あれだ。この方のスキルが、とてつもないって事だ。
直にお顔を見た時、こちらのスキル遮断はほぼ無効になると思っておいてくれ。
唯一、眼鏡の遮断でなんとかなっている。
ただ、子供の頃から眼鏡をしているようなので、
大人になるに連れて、それも遮断が効かなくなるかもしれない。
まあ、これまで色々魔道具見て来たからな。
経験則だが。
ヴィラン神官長から聞いた話では、眼鏡を掛けたままでも
相手の調子を良く出来ると。」
「そうです。サムイ様が 天使様 と言われる所以です。」
「サムイ様、それは子供の頃からできましたか?」
「いいえ、そもそも、出来る事自体、3年程前に知ったので。」
「ああ、あの災厄のあった年ですか。なるほど。
んー、暫くは様子見しましょう。
何か少しでも変わった事があれば、我らにご相談下さい。」
「ヨルン、護衛達はどうする。
同じ様に眼鏡を取ったり、掛けたりしてもらうのか?」
「いや、今日は眼鏡を付けてもらったまま、挨拶させよう。
慣れた頃に、拝顔させて頂こう。」
「サムイ様、それでは隊員を呼んで参ります。」
ジーク隊長が、ドアを開けて隊員を呼ぶ。
「4人共、入れ!」
バタバタバタ
4人が横並びに立ち、拳を胸にあてる。
「端から自分の名前を言え!」
「アインスです!」
「ツヴァイです!」
「ドライです!」
「フィーアです!」
「「「「よろしくお願いします!!」」」」
「はい!よろしくお願いします!」
「4人共、この方がサムイ様だ。
今朝は眼鏡をしているので、お顔を見れるぞ。
だが、今後、眼鏡を掛けていない時が増えるだろうから
必ず、視線を下へ下げろ。お顔を見るな。
また、慣れた頃に、拝顔させて頂く。
それと、週に1、2回は自分でなり、外に行くなりして
熱を抜いてこい。厳命だ!わかったな!」
「は?は、はい!了解致しました!」
「ヨルン隊長からの厳命は必ず守れ。
これより2人体制で交代し護衛につく。
私も途中入り、毎回、同じ者同士が護衛に当たらない様に回す。
アインス!ドライ! 今から護衛に立て。」
「は!」
「ここへ入ろうとする者は、子供以外、神官だろうが止めろ。
詳しい話は、交代後に話す。」
「は!承知しました。」
「では、サムイ様、何かご用がありましたら、
この2人にお申し伝えください。」
「あ、はい、わかりました」
「他の隊員は、俺について来い。
詳しい事を説明する。」
「は!」
2人を残して、神殿騎士団の人達が足早に去っていく。
ヴィランがサムイの横に立ち、
「サムイ様、騒がしくさせて申し訳ありません。
もうじき、朝の礼拝を終えた子供がやってきます。
その子にあなた様のお世話をさせますので
なんなりとお使い下さい。」
「はい。あ、あのー」
「はい。なんでしょう?」
「僕はここで何をすればいいのでしょう?
もし、何もないのなら、
出来れば、まだ災厄で苦しんでいる人達を癒したいのです。
ここから出れないなら、ここへ来ていただくとか
どうにか出来ませんか?」
「ああ、なんと慈悲深い方だ。
神よ、ここにサムイ様をお与えくださり、感謝します!
ええ、ええ、あなた様の言う通りに。
ですが、ここに慣れていただきたいので
暫くは、ここで休養をお取り下さい。
また、様子を見て、苦しんでいる民をお連れいたしましょう。」
「わかりました。」




