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神殿 1

あの災厄の日から3年経った。


サムイ 15歳


「サムイ!今日はどこへ向かうんだ?」


「カイ!今日は北の方にある家だよー」


「わかった!ルル、行けるか?」


「うん!大丈夫〜」


授業が終わり、家に帰る前の少しの時間を使って

ジャック、カイ、ルルの3人と一緒に

具合の悪い人の家に寄るのが、毎日の日課になった。


トントン


「こんにちはー、具合はどうですか?」


「ああ、天使様、今日は来てくれたんだね。身体は少し辛いくらいだよ」


「すみません。他の家も回ってるので、毎日これなくて。」


「いやいや、来てくれるだけで嬉しいよ。」


「では、始めますね。」


サムイは、具合の悪い人の横に座り、

眼鏡越しに、目を合わせて、手を握る。


「ああ、いつも思うけど、綺麗な目だねえ。

見ていると、辛い所も、苦しい所も楽になっていくよ。

最初にあなた様が来るまでは、起き上がれないほど苦しかったが、

今はほら、このとおり、少し辛い所はあるが、体調も大分戻ってきてるよ。」


「それなら、なによりです。」


「おばさーん、洗濯して干しとくから、夜には取込み忘れるなよー」


「おばさまー、夕飯はシチューを作っておきますねー。

嫌いなものは無かったですよねー」


「それに、こうやって、身の回りの世話までしていってくれる。

本当にありがたい事です。」


ニコニコして涙をポロポロ流す女性にサムイは


「いいえ、これは、私が出来る事をしているだけに過ぎません。

あの友達達も同じ気持ちだと思います。」


ジャックは無言で、家の周りを修繕場所が無いか確認している。


サムイはそれを見ながら、

「僕は、皆に支えられながら、今、生きています。

それを、他の皆さんにも分けているだけですよ。」


「ああ、本当にあなたは天使様だ。どうか、あなた様にも幸運が訪れますように。」


「ええ、私の幸運はまだ先ですが、既に訪れは決まっていますよ。」


「よく分からないけど、あなた様のその嬉しそうなお顔が見れただけで、

それだけで、私も幸せになれるよ。」


「ふふふ。あと、このことは、」


「ああ、わかってるよ。神殿には言わないよ。

ただ、最近は外で天使様の噂話をしているのを聞いた事があるから

気を付けた方がいいよ。」


「そうですか。ご心配をおかけしてしまってますね。

気を付けますね。ありがとうございます。」


「ああ、それとこの災厄を起こした公爵様の事だけど、

公爵領で幽閉されてるって噂も聞いたけど、大丈夫なのかねえ。

また、同じ事が起こらなけりゃいいんだけど」


「ええ、大丈夫ですよ。そんな事は起こりません」


「おや、はっきり否定するねえ。

まあ天使様が言うならその通りなんだろうから、安心したよ」


「はい。安心して下さいね。ふふふ。」


「サムイ、終わったよー」

「私も作り終えたわ」


「じゃあ、そろそろ帰りますね。お大事にして下さい。」


「ああ、天使様達、ありがとうねえー」


「はーい、またねー」

手を振って家から出る。


「さ、帰ろっか。」

「みんな、いつもありがとうね。僕に付き合ってくれて。」


「よせやい。好きで付いて来てんだ。気にすんな。」

「私もよ。」

「私は、護衛ですので、サムイ様が行く所なら、どんな所でも一緒ですよ。」


みんなで歩いて、家へ帰っていく。

それぞれの家の前で別れて、サムイはジャックと自分の家に帰ってきた。


「ただいまー、あれ?誰かお客様?」


玄関で、両親と2人の男が話していた。


「サムイ!ああ、おかえり。いま」


「ああ、これがサムイという子ですか。ふむふむ。」

とサムイの顔から身体、背中、足までジロジロ値踏みされるように見られた。


「もういいでしょう?うちの子は普通の子です。

あなた方神殿に関わるような子供ではありません!」


「神殿に関係するかどうかは、こちらで決めます。」


「そうですね。綺麗な子ですが、あまり特殊なスキルは感じませんね。」


「そうですか?私は少し幸福感を感じる気がします。」


「ふむ。なるほど。幸福感ですか。ん?眼鏡をしていますが、目が悪いのですか?」


「え、ええ」


「まあ、いいです、明日、ご両親と一緒に神殿に来なさい。必ずです。いいですね。」


「はい。わかりました。」


言うだけ言って神殿から来た人達は、帰っていった。


「はああ、心配していた事がとうとうやってきたか。」

ダンは頭を抱えながら、ぼやく。

「やはり、家々を訪問させるのを許さなければ・・・

いや、もう目をつけられたんだからそれを言っても仕方ない。

まだ、眼鏡をかけたままだから、そのまま通せばなんとか。

いや、おそらく調べたらすぐわかるのかもしれない。

なら眼鏡も、もう意味は無いかも・・・」


「お父さん!しっかりして!僕、大丈夫だよ。」


「サムイ、すまない。

もし、神殿がお前を連れて行くと言ったら

私達ではもうどうにならない。

不甲斐ない父親だ。本当にすまない。」


「うっうっサムイちゃん。」


「ううん、お父さん、そんな事ない。

今までお父さん、お母さんのおかげで、

これまで一緒に過ごしてこれたんだ。

もし、眼鏡がなければ、学校も行けなかったし、

友達も作れなかった。

ジャックも護衛に雇ってくれなかったら

ここにいられなかったかもしれない。

もし、神殿に行く事になっても

18歳になったら契約通り、公爵様の所へ行く事は変わらない。

家を出るのが3年早くなっちゃっうかもしれないけど、

僕はとても幸せだったよ。

寂しくはなるけど、公爵家に行けば、

神殿と違って、またきっと会えるよ。」


「おまえ・・・覚悟は出来てるんだな。」


「うん」


「わかった。しばしの別れだ。

親の私達がお前の覚悟を台無しには出来ないよ。

明日、学校から帰ったら神殿へ向かおう。

みんなに別れの挨拶をしてきなさい。」


「はい。」


それから、食卓をみんなで囲み、夕飯を食べた。

いつものように、笑って、楽しい夕飯だった。

ただ、みんな、目に涙を浮かべていたが。


お父さん、お母さんにお休みのキスをする。

「サムイ、愛しているよ」

「サムイちゃん、愛しているわ」

「うん、僕も愛している!お父さん!お母さん!

今までありがとね!」


自分の部屋に入り、ベッドに横になる。

明日みんなとお別れだと思うと、眠たくなかった。


コンコン

こういうときは決まっていつもジャックが訪ねてくる。


「サムイ様、やはり眠れませんよね。ホットミルクをお持ちしました。」


「ジャック、ジャックとも、もう気軽に会えなくなるんだよね。

今まで、護衛してくれてありがとう。」


「いいえ、こちらこそ幸せな時間をいただいておりました。

それと今後の事ですが、サムイ様が神殿へ行かれたあと、

私は公爵領へ行き、兵士に志願します。

そこでサムイ様が来られるのを、お待ちするつもりです。」


「ええ!ジャック、兵士になるの?すごい!

でも公爵家の兵士になるのって難しくないの?」


「クスクス、はい。難しいですね。

普通、公爵家の兵士になるには、かなりの力を示さないと入れません。

あの、公爵家ですから。他の貴族よりはレベルが高いです。

でも、俺はサムイ様が、6年前に公爵家に行く事を知ってましたので

兵士になるために必要な条件をこの6年で既に得ております。

公爵家からはいつでも来ていいとお墨付きももらっているのですよ。」


「すごーい!ジャック!本当に凄いよ!

じゃあ、じゃあまた公爵家で会えるんだね!」


「はい!サムイ様、嫌と言ってもお守りする所存ですので!」


「嫌だなんて言わないよお。嬉しいな。

僕も神殿で挫けず頑張るからね!待っててね!」


「はい。今日も寝る前のお休みのキスをしても?」


「うん、もちろん!」


チュ、チュ


「ではお休みなさい。」

「うん。お休みなさい」

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