第8話 リズムゲーを画面を見ずにやってみた
……誰も見てくれない。誰1人俺の動画を見てくれない。動物を撮っても、事故現場を撮っても、奇をてらって納豆風呂に入っているところを撮ってもだ。
それでもYouTuberを辞めるという選択肢は一切なかった。何せ4歳の頃に『勃起する程』感動したのがYouTuberだ。それを辞めるなんて「西から太陽が昇る」位『断固として』あり得ない事だ。
講義もサークル活動も終わり自宅の中にいるというのに、これっぽちも落ち着かない……重苦しい、潰れそうだ。俺は腹に石でも詰められたような顔をしてテレビの電源を付けた。
ちょうどCMのところで、とあるリズムゲームの物が流れていた。
まてよ……!! そうだ! ゲーム実況! ゲーム実況はやったことなかった! これを使おう!
「はいどうもー! マックスありさわでーす! 今日は話題のこのゲームをやろうと思います!」
いつものテンションで動画撮影を開始する。CMで見たリズムゲームのソフトを買ってきて練習し、今日が本番だ。
「では早速やってみたいと思いまーす!」
BGMが流れ出す。そのゲームの中では最も簡単な曲の一番易しい難易度、誰でもできるものだ。
「やっぱりねぇ、音ゲーは一番易しい曲がそのゲームのテーマ曲になると思うんですよ。何せ誰もが一度は遊ぶ曲ですよね? だからPVでも流れることが多いしこのゲームならコレ! っていうのがかっちりハマるんですよ」
最初の頃に比べるとだいぶ上達した(と個人的には思う)トークをしながらゲームをする。リズムゲームのキモであるBGMにトークを被せているが、それでもミスをせずにフルコンボでゲームを終えた。
曲が終わると同時に……。
「フルコンボ! すごい!」
偉業を祝福するボイスが流れた。
「とまぁこのままじゃ本当に普通にゲームをやってるだけなので……」
俺はテレビに背を向け、後ろから撮っていたカメラと向き合う。
「では今度は、画面を一切見ずに音だけでプレイしようと思いまーす!」
さっきやった曲を再び選ぶ。
ゲームに集中しているのか、終始無言。正確にはトークしている余裕が無い。
何せ画面が見れないって事は頭の中に譜面を完璧に覚えて、しかもタイミングを外さずに演奏するのが求められるので必死だ。
曲が終わると同時に……。
「フルコンボ! すごい!」
偉業を祝福するボイスが流れた。
「うおー!! やっとフルコン行けた。これでもう8回くらいは撮り直ししてるんですよねー」
フルコンボを達成した瞬間、思わず歓声を上げる。途中でコンボが途切れたかどうかを確認する事が出来ないから、途中で失敗しても気づけずに最後まで演奏するしかない。
だから「フルコンボ達成のボイス」が流れないと「また失敗か」と徒労感だけが溜まっていく一方だった。
それだけにようやく達成した時の感動はひとしおだ。
「今日の動画は以上となりまーす! この動画が良いなと思った方は、チャンネル登録と高評価を是非よろしくお願い致します!
チャンネル登録の後、ベルのマークの通知をオンにしていただければ最新の動画も見れますのでそちらもよろしくお願いします。
こんな企画してくださいとか、コメントも何でもOKですのでお待ちしています!
それではご視聴ありがとうございました!」
いつもの締めの言葉を述べて、撮影を終える。撮影を開始したのは学校から帰宅した後で、もう日没だが早速編集だ。
フルコンボ達成でハイになってるのか疲れる事無く没頭して編集作業を進めていく。
本編が完成した時には夜の11時。それでも余力があってもっと編集したいという気持ちは抑えられなかった。
最後にオマケのNG集も入れて完成したころは深夜の1時。それでも動画が完成したことの方が重要だ。
最終チェックも終えて動画をアップロードした。
翌朝。早速動画をチェックするが……。
『マックスありさわ リズムゲームでフルコン出してみた』
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