第17話 キャバクラで遊んでみた
「オラッ! さっさと商品詰めろ! 俺はYouTuberなんだぞ!? 世界同時配信なんだぞわかってんのか!?」
動画には俺が宝石店のショーケースからジュエリーや腕時計を取り出して持参したバッグに詰めるよう店員に詰め寄る様子が、
「チェストマウントハーネス」と呼ばれる器具で胸に固定したスマホで撮影された、ブレまくりの映像として収められていた。
カメラには映ってないが、宝石店強盗をしている時はギンギンに勃起していて、痛いくらいだった。
『マックスありさわ 宝石店強盗してみた』という動画をYouTubeに挙げた所、3日経っても「再生回数:0」だった。
こんな動画YouTubeどころか世界中どこの動画サイトでも規約違反でガチアウト。アップロード後10分も経たずにアカウントごと削除されてそのまま警察に通報されるはず。
ところがアップロード後5日が経ってもYouTubeはもちろん警察も被害に遭った宝石店も何も言ってこないし、テレビのニュースにもなりやしない。
宝石店強盗なんて全国区のニュースになってもおかしくない大事件なのに……。
やはり「YouTubeに上げた動画の内容は全部無かったことにされる」らしい。
それなのに「盗んだ宝石や腕時計」はしっかりと手元にあるのが謎だが……まぁいいか。
「YouTubeに動画を上げれば起こした事は全部無かったことになる」ってのが分かってりゃいいか! 深く考えても答えなんて出てこねぇしよぉ!
「強盗に奪われた宝石や腕時計はシリアルナンバーが全部把握済みで、照会すればすぐに盗品だとわかるから保証書もアフターサービスも無効。
だから売るには盗品用の販売ルートが必要だから素人が宝石店から盗んだところで無駄」宝石や貴金属に詳しい人が言うにはそうらしいが、そこも大丈夫だった。
そもそも「窃盗事件自体が無かったことにされている」から盗んだ宝石や腕時計も「盗品扱い」ではなく「正規品」として流通する。
だから盗品用のルートを介さずその辺の買取店で気軽にカネに交換できるわけだ。
もちろん1つの店で一気に交換したら怪しまれるので複数の店で小分けにして売る。それも縁もゆかりも無い場所へ電車で出かけての事だ。
そうして手に入ったお金は……軽く500万を超えていた。
「す……スゲェ!」
1万円札紙幣の山!! どう考えても18歳の大学1年生が持っている額ではない、とてつもない額のお金!!
スゲェ! 俺は神になったんだ! 今の俺なら何だって出来る! そんな万能感を満たすために夜の街へと繰り出した。
「はいどうもー! マックスありさわでーす! 今回はキャバクラ遊びをしたいと思います! 早速行ってみましょう!」
そう言ってスマホで撮影しながらキャバクラ店に突入する。最初は「あまりにも若すぎる」と怪しまれたがカネを持っていることが分かると手のひらクルリ、すぐに上客と思われるようになった。
事前に撮影許可はもらっていて、堂々とカメラを持って店に入った。
「よーし! とりあえずシャンパン開けようか!!」
「「「キャーッ!!」」」
強盗で稼いだカネはキャバクラに費やした。開幕でシャンパンを開けてキャバ嬢たちは大はしゃぎ。
いやー! カネって便利なもんだな! ウハハハハハ!!
「有沢さんは何で稼いでるんですか? 会社の社長にしては随分と若いと思いますけど」
「YouTuberさ。マニアックだけどウケの良いファンが根強くいるジャンルだから表向きにはあまり有名じゃないけどね」
「へーそうなんだ。私『マックスありさわ』って初めて聞いたけどYouTuberってそんなに儲かるんだ。凄いですねぇ!」
「YouTuberって言っても「ヒカキン」や「はじめしゃちょー」ばっかりじゃないんだぞ? 中堅どころでもこれ位は稼げるもんさ」
「YouTuber」であること以外は全部大ボラな事を言って、でっかい人間であるアピールをする。
美女に囲まれ酒を飲むのは最高で、性別は違えどホスト通いで女の子が身体を売ってまでして貢ぐのも納得がいく話だ。
「あれ……?」
とあるキャバ嬢が気づいた。俺の股間はビンビンだったのだ。
「もーやだー! 有沢さんってば! 変なこと考えてるの!?」
「ああこれか。信じられないだろうけどYouTubeに関わってると自然とこうなっちゃうんだよ。4歳の頃からずっとそうだったんだよ」
「!? ええ!? 4歳の頃からですか!? ホントに!?」
「ホントホント。人によってはモナリザの手を見て勃起した人だっている位だから、よくある話だと思うよ俺は」
「えー? 私は初めてかなー、YouTubeでこうなる人って」
キャバ嬢は多少ひきつった顔をしているように見えるが、それでも上客相手ならとおだててくれた。
いやー、18歳の未成年なのに23歳って偽って酒飲んじまったよ。最初の動画で4月に大学に入ったばかり、って言ってたのに。
まぁいいか、動画上げれさえすれば無かったことになるんだしなぁ! キャハハハハ!!
一通り楽しんだところで動画の締めに入る。
「本日の動画は以上となりまーす! この動画が良いなと思った方は、チャンネル登録と高評価を是非よろしくお願い致します!
チャンネル登録の後、ベルのマークの通知をオンにしていただければ最新の動画も見れますのでそちらもよろしくお願いします。
こんな企画してくださいとか、コメントも何でもOKですのでお待ちしています!
それではご視聴ありがとうございました! イェーイ!」
キャバ嬢と一緒に画面に映って撮影を終える。と同時にお会計だ。うーん、ざっと見て450万か。慣れない、と言うか本当は飲んじゃいけない酒を飲んで千鳥足で家に帰る。
翌朝動画を作りアップロードして、今回のキャバクラ遊びも無かったことになる……はずだ。後日再生具合を見てみると……
『マックスありさわ キャバクラで遊んでみた』
再生回数:0
やっぱりそうだよなー! 俺の撮る動画は全部「再生回数:0」だもんなー! 知ってるよ。




