8話 勇気を出して誘ってみる
あの後、約束通りゲーセンで一緒に遊ぶ事になった。
「で女子二人との食事会は楽しかったのか?」
「普通……、そういや龍之介教室いなかったね。何処行ってた?」
僕がそう尋ねた瞬間、龍之介はヒヒッと気持ち悪い苦笑いをした。
「ふっ、飯食べる相手がお前しかいないからこっそり一人で食べられる所探してたんだよ……」
「そんな事になるなら、何故僕を永井さんの元へ行かせたんだ……」
「そりゃ、お前友達のキューピットになるためだろ」
何やかんやで僕の事を思ってくれたという事か。時々気持ち悪いこと以外は良いやつなのだ。
「だったら昼、龍之介も一緒にすれば良かったんじゃ?」
「ふっ、俺が女子と一緒にいることが出来ると思うか?」
「今後の人生どうしていくつもりだ……」
とまあ、こんな事を話しながら時間は過ぎてその後は解散。家に帰ることとなった。
何だかんだ二時間くらいは遊んだみたいで家に帰る頃には七時近くになっていた。スマホを見ると永井さんからメッセージが届いていた。
『部活やっと終わったよ〜』
永井さんはこんな時間まで部活をしているのか偉いなと思いながら『お疲れ様』と返事を返す。するとブブブとスマホが揺れる。どうやら永井さんからの着信だった。僕は首を傾げながら電話に出る。
「どうしたの?」
「う〜ん。返事があったから電話しちゃった」
電話をする理由も永井さんからのものだと思うと可愛く感じる。これが龍之介だったら「は?電話切るよ」と返事をすることだろう。
「まあ僕は家だから全然良いけど。永井さんは家じゃないんでしょ?」
「うん。一人で歩いてるのが暇でさ〜。ちょっと付き合ってよ」
なるほど、僕は暇潰しの相手という訳か。ちょっとだけ残念な気持ちになる。いや、わざわざその相手に選んでもらった事を光栄に思わなければ!!
「でも凛と仲良くなったみたいで良かったよ」
「ああ、柏木さんね。漫画にかなり詳しくて楽しかったよ」
柏木さんの漫画の知識はラブコメだけだったら僕や龍之介より上かもしれない。そう考えると結構オタク気質な所もあるかも。
「へ〜、誘ってあげた私といる時よりも楽しそうだったもんね〜」
「うん?永井さん?」
なんだ、ちょっと毒がある気がするけど僕の気の所為だろうか。元々、永井さんが僕と柏木さんと合わせる為のセッティングだと思っていたけど違うんだろうか。
「全く、あんなに私に可愛いとか綺麗とか言ってたのにさ。凛にもデレデレするなんて」
「ちょ、ちょっと!?僕が女たらしみたいな言い方しないで」
恋愛経験0の陰キャに対してかなりおかしな事を言っているよ?それに本人には言えないが柏木さんは僕と永井さんとの間を応援してくれると言ってくれているし。
「ふふっ、冗談冗談」
「な、なんだ、ビックリした〜」
まあ本気で怒っている様子では無いみたいで良かった。
「でも、私ともちゃんとお話しようね」
「う、うん」
自分の親友の柏木さんが僕に占領されたら良い気はしないよな。これは僕が悪いよなあ。
「あっ、そういえば用あった」
「ん?どうしたの?」
永井さんは急に何かを思い出した様だ。一体何だろう。
「今度の土曜、女バス他校と練習試合するんけど。多分、私スタメンなんだよね」
「お〜、流石」
「うん、それでね……」
「?」
何か永井さんの歯切れが悪いような気がする。何か僕に頼みたい事でもあるのかな。
「し、試合の応援に来てくれない?」
「えっ」
僕が永井さんの応援に?永井さんが頑張っている姿は正直みたい。だけど。
「それ、僕が観戦出来るものなの?」
「体育館の二階からなら平気。前に凛が応援に来てくれたことあるし」
なるほど、確かに体育館の二階から観戦する分には誰の邪魔にもならないだろう。だけど僕が見に行って良いものなのかな。
「邪魔にならないなら……」
「ならない!!ていうかむしろ……」
僕は永井さんの言葉の続きを待つ。しかし数十秒待っても何も聞こえない。あれ、通信が悪いんだろうか。
「もしもし〜、聞こえてるかな?」
「ご、ごめん。聞こえてるよ」
「永井さんや皆の邪魔にならないなら是非行かせてもらっても良いかな?」
バスケ部の邪魔にならないなら、永井さんがバスケしている姿を見てみたい。僕は自分の素直な気持ちに従う事にした。
「ほ、本当?良かった〜。私頑張るから!!」
「う、うん。そ、それで聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたの?」
「そういう応援行ったことないから分からないんだけど……。差し入れみたいなのって何持っていけば良いの?」
恥ずかしい話、運動部とは関わりが無かったのでそういう場合、何を持っていけば失礼に当たらないか不安だ。
「ふ、ふふっ、私が誘ってるんだからそういうの大丈夫だよ。ママと同じ事言っててウケる」
という事で僕は女子バスケ部の試合観戦をすることになった。
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