5話 永井さんの友達
「本当余計なことしてくれたね……」
「おいおい、恋のキューピットに随分な物言いだな?」
龍之介は得意顔で偉そうだ。どうしてくれるんだ。
「陰キャの僕が永井さん達と一緒にいたりしたら良い笑いもんだよ」
「そんなの誰も気にしな……、いや一人だけ分からんな」
僕が懸念していることと同じ事を考えているのだろう。御影君の存在だ。永井さんが僕を誘うくらいだから二人は付き合っている訳では無いのかもしれない。もし付き合ってたら御影君が許すはず無いし。しかし御影君が永井さんと仲が良いのは確実。何か言われてもおかしくない。
「まあ何かあったら慰めてやるよ」
「そんなものはいらない……」
もし何かあって、龍之介に気を使われるだけなど意味がないようなものだ。
「わ、悪かったって。だけど永井さんと距離を縮めるチャンスを向こうから誘われてるんだぞ」
「……、分かってる」
無論、龍之介が僕のために気を使ってくれているのなんて分かっている。
しかし面倒なのがヒエラルキーというものである。僕達白雲高校二年一組のヒエラルキーはこうだ。頂点に御影君や運動部の活発な人達が一軍。そしてその他大勢の生徒たちが二軍だとすると、僕や龍之介のような日陰者達が三軍という情勢である。ちなみに永井さんも女子の一軍といった感じであろう。
「でもお前には頑張ってほしいぜ。俺らみたいなのから永井さんみたいな女子と付き合ったら凄いことだぞ」
「いや、勝手に代表にしないで欲しい」
龍之介は何か滅茶苦茶凹んでいたので笑ってしまう。まあ、でも起きてしまった事は仕方がない。覚悟を決めるか。
そしてその後、授業を終えて昼休みの時間が来てしまった。
「赤城君、こっちこっち」
永井さんは柏木さんの机と僕の分の机までくっつけて食べる準備を終えていた。永井さんは滅茶苦茶激しく手招きをしているので深呼吸をしてそちらへ向かう。
「赤城君、よろ〜」
机にだらんとうつ伏せになりながら首だけ僕の方を向けて挨拶をしてくる女子。この子こそ永井さんの友達の柏木凛さんだ。
「よ、よろしく」
僕は用意された机に弁当を置いて席に座る。
「聞いたよ〜。漫画とかアニメとか詳しいんでしょ?」
「そ、そんな事無いと思うけど……」
「明日香がプロフェッショナルだって。秋葉原を庭のように歩いてたって言ってたよ〜」
いや、それ永井さんが案内してって言うから紹介しただけなんだけど。僕は永井さんをチラッと見ると舌を出してごめんと手を合わせたジェスチャーをしていた。
それ永井さんが可愛いから許すけど、龍之介だったら頭チョップしているな。
「ウチもそこまでじゃないけど漫画とか見るから教えて欲しいって言ってこの場をセッティングをしてもらったんだ〜」
なるほど、急に一緒に御飯を食べようと言ってきたのはこういう背景があったわけか。
「ウチ、恋愛とかラブコメ漫画好きなんだけどオススメな漫画とかある〜?」
「う〜ん、知ってるかもしれないけど【彼女の親友】とかは?」
「あ〜、ちょっとドロドロしたやつだよね。あれ面白いよね〜」
なるほど、柏木さんラブコメ好きとあって結構詳しいみたいだ。永井さんといつも一緒にいるけどどんな人か知らなかったな。
「そうそう。主人公にアプローチかけてくる女子が可愛いよね」
「あ〜、遼っちはそっちか。彼女の方に感情移入しちゃうんだよね〜」
一軍女子だと思って身構えていたけど結構話が合って楽しいと思っていた。ていうか僕のこと、遼っちって呼んだよね?
「ねえ、私もいるんだけど?」
永井さんから放たれた一言に僕は固まってしまう。やばい、楽しくて永井さんを放置してしまった。永井さんを見ると冷たい目をしている。
「凛もさ。赤城君は元々私の友達なんだけど?」
「え〜、でも今日から遼っちとウチも友達だし。ね〜」
柏木さんは僕に向かって手を出してきた。僕もよくわからないが手を挙げると「うぇ〜い」と言ってハイタッチしてきた。なるほど、これが陽のノリか。
「ふん。昨日はあんなに私の事をきれ……」
「それは言わないでもらえますか?」
よくよく考えると僕は昨日何であんなに可愛いとか綺麗とか口走っちゃったんだ。そりゃ揶揄われるに決まってる。
「え〜、でもウチも今度、遼っちとアキバ行きたいな〜。良いでしょ?」
「え?そりゃ勿論良いけど」
基本、僕は帰宅部なので暇だ。アニメや漫画見るので忙しいけど。それを聞いて永井さんはピクピクしだした。どうしたんだろう。
「あはは、二人共、私が思った以上に仲良くなったみたいで何よりだよ」
「ごめんなさい」
何かよく分からないけど永井さんが怒っているので僕は取り敢えず謝ることにした。
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