26話 独占欲
「で、何で避けてたのか教えて貰える?」
仁王立ちしている永井さんに対して僕は地面に座らされている。少し離れた所で龍之介と柏木さんが楽しそうにご飯食べ始めている。僕もあっち行きたいですね。
「い、いや〜、避けてなんか無いよ」
テヘッと頭に手を載せてとぼけてみる。すると永井さんのプレッシャーが上がって額に青筋が見える。
「私の目を見て言える?」
「い、いやあ」
ぐいっと近付いて眼の前に顔がある状態だ。僕は目を見れずにそらしてしまう。
「あそこでチューしないのかな〜」
「アイツ、ヘタレなんで無理じゃないですかね」
あの二人は関係ないからと好き勝手言っている。特に龍之介、後で憶えておけよ。
「……、私怒ってるんだけど」
「ご、ごめん。でも理由はちょっと……」
何とか目を合わせて謝る。理由が僕が永井さんの事を好きだと言ってしまった所を聞かれたのが怖いというダサい理由だから言いたくはない。
「はあ、分かったよ。ご飯食べちゃおう」
「う、うん」
僕達は柏木さん達がいる場所まで歩いて座り込む。
「赤城君、鬼嫁大変そうだね〜」
柏木さんがニヤニヤしながら耳打ちしてくる。大変そうだと思っているなら助けて欲しいです。後お嫁さんじゃないよ。すると次に龍之介がこそっと呟く。
「お前さあ、あそこで抱きしめてやればそれで終わりだろうがよ」
「龍之介、自分が出来ないことを人に言わない方が良い」
龍之介は「うぐっ」と言いながら弁当を食べ進める。僕もさっさと食べちゃおう。弁当箱を開けると大好きな唐揚げが入っている。
「あ〜、良いなあ。一つ頂戴よ」
「え?永井さん、これ食べたいの?」
永井さんは唐揚げが気になるようで頂戴とお願いしてきた。まあ一つくらい良いか。僕は弁当を永井さんに渡す。
「はい、どうぞ」
「む〜、そうじゃないでしょ。あーんして」
「はい?」
永井さんは口を開けてあーんと言っている。え、これ僕が永井さんに食べさせるって事!?僕は柏木さんと龍之介の方を見ると露骨に顔を逸らされる。こら、見捨てるな。
「早く〜」
「うう……」
僕は箸で唐揚げを持ち上げて何とか永井さんの元へ渡そうとする。緊張で持っている箸がプルプル震えている。永井さんの顔までもう少しというところで永井さんが逆に近付いて唐揚げをガブッと口に入れた。
「う〜ん。美味しい。ありがとね」
「そ、それは良かった……」
僕は自分の箸を見つめる。間接キスしちゃってるじゃん……。何かその箸を使うのを躊躇われる。
「じゃあ、お礼に私の春巻きあげるよ」
「えっ!?いや、お気になさらず!!」
永井さんは僕の言う事を無視して箸で春巻きを掴んで僕の顔まで持ってきている。
「はい、あ〜ん」
「……」
有無を言わせない圧で「早く口を開けろ」と言わんばかりの笑顔で待っている。僕は観念して目を閉じながら口を開ける。その瞬間口の中に春巻きが放り込まれる。
「ふふ、美味しい?」
「はい。美味しいです!!」
本当は緊張で味が分からないのだがそう答えるしかなかった。柏木さんと龍之介は僕達を見て何かコソコソ話している。何か二人仲良くなってない?その後は皆で話しながら弁当を食べ進めた。
すると永井さんのポケットからバイブ音がする。何か通知が来たみたいだ。
「なんだろ。あ」
「明日香、どうしたの?」
永井さんがスマホを見て考え込んでいるので、柏木さんが気になって尋ねる。
「何か、達也から休み何処か行かないかって……」
「ええ、デートの誘いじゃん。流石モテる女は違うねえ」
僕はそれを聞いて胸がチクッとする感覚がした。御影君が永井さんと一緒にデート……。
「ねえ、どう思う?」
「え?」
永井さんは僕の顔を見ている。これは僕に聞いているのか。でも僕に聞いてどうしようというんだろうか。
「な、永井さんが行きたいかど……」
「私が聞きたいのはそんな事じゃないんだけど」
一気にピリッとした雰囲気になる。これは僕でも分かる。この返答は間違えちゃいけない。
「で、でも御影君が勇気を出して誘ってる事に対して僕が口を出せる事は無いよ」
「……」
「でも……」
「でも?」
僕はこの後を言ってしまって良いのか考えてしまう。僕にそんな権利があるのだろうか。いや恐らく僕がそんな事を行って良い理由はない。だけど……。
「永井さんと御影君が二人でデートするのは……嫌かな……」
言ってしまった。勇気を出して誘った御影君に対して申し訳ない気持ちと言わなければ良かったのではと脳内でグルグル回っている。
「ふふ、何で嫌なの?」
「え?」
そんな僕と対照的に永井さんは笑顔になっていた。どうして笑っているんだろう。僕はその笑顔の理由を考えている。
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