21話 朝からお疲れ
「この事、キャプテンに言っても良いって言うんですか?」
「言って良いも何も柏木さんは永井さんの友達だよ」
柏木さんは榊さんに向かってダブルピースをしている。ちょっと煽らないで欲しい。
「キャプテンの友達と……、これがNTR《寝取られ》ってやつですか」
人聞きが悪すぎやしないか?そもそも僕は付き合ってないし、柏木さんも僕に興味なんて無い。柏木さんはその様子を見て笑っている。なにわろてんねん。
「逆に永井さんに僕と柏木さんに対してこう言ってたよって報告して良いの?」
その瞬間、榊さんは血の気が引いたのかどんどん顔が白くなっていく。これは効くみたいだな。
「うっ、私の体は安くないんですから……」
「マジで何言ってんの!?」
まるで脅しをかけて榊さんを襲うみたいな風評被害止めてくれ〜。本当に永井さんに報告しなくちゃいけなくなるから。
「この子、面白いね〜」
柏木さんは我関せずといった感じでニヤニヤ笑っている。君も当事者なんですけどね。おかげで登校中の他の生徒達に「なにあれ、痴話喧嘩?」だの「あいつら何してんだ」とザワザワしだしている。
「ああ、もう、二人共遅刻しちゃうからさっさと行くよ」
「赤城君、早いよ〜」
「先輩、話は終わっていません!!」
恥ずかしくなってきたので僕は早歩きで学校に向かう。二人も慌てて僕の後ろについてくる。いや、もう一人で行かせて欲しい。そうこうしているうちにクラスに着いた。柏木さんは兎も角、一年生の榊さんまで付いてきた。いや、なんで?
「赤城君、おはよ〜、って凛と一緒か。いや、何で実香までいるの?」
教室に着いた途端、永井さんから挨拶されるが一緒にいる榊さんの顔を見るなり怪訝な顔をする。そりゃそうだ。
「ち、違うんですよ。赤城先輩がこの女子と一緒に登校してたんで」
焦った榊さんは速攻で僕達の事を話す。いやいや僕達友達なんだから永井さんが怒る訳ないじゃないと高を括る。
「……、ふ〜ん。昨日あんな事言っておいて」
「あれ?」
予想に反して不穏な雰囲気になっている。いや、僕と柏木さんが友達になったって永井さん知ってるじゃん!!
「いやいや、何でウチに嫉妬してるの。ウケる」
柏木さんは永井さんに笑いながらポンと叩く。怒っている永井さんにそんな行動を取れるのは柏木さんだけだろう。
「ふん。私のいない所でイチャイチャされるとムカつくの」
「え〜、そっちなんか練習試合呼んでイチャイチャしてたんでしょ?」
「そ、それは……」
おお、永井さんを言いくるめている。流石柏木さんだ。そんな様子の二人を僕と榊さんはただ眺めている。
「榊さんこれで分かったでしょ?」
「柏木さん……、要注意人物です」
言いくるめてる柏木さんを見て余計警戒しだしている。いや、何の警戒なんだ。榊さんは永井さんに挨拶をしてブツブツ言いながら自分のクラスへと帰っていった。
僕も二人で盛り上がっているので自分の席へと向かう。するとそこには龍之介が立っていた。
「……、お前がハーレム主人公になったみたいで俺は嬉しいぜ」
「何言ってんの?」
いつものごとく、龍之介が意味不明な事を言い出しているので放って置くか。僕は黙って席に座る。
「いや、朝から三人の女子に囲まれて困っているお前、最高に主人公していたぞ」
「困ってるのが分かるなら助けてよ」
「ふん、俺が女子とまともに会話出来ると思うか?」
ドヤ顔の龍之介がムカつくので頭を軽くパシンと叩く。今日は朝からみんな様子がおかしすぎる。そのせいで滅茶苦茶疲れた。僕は龍之介を無視して机に突っ伏す。
「何逃げてるの?」
突っ伏してから数十秒後だろうか。顔を上げると前の席に永井さんが座って僕を見下ろしていた。
「いや、逃げたわけじゃ」
「全く、他の女子と友達になるのは良いけど程々にしてよね」
「……、何で?」
僕は永井さんの言っている意味がよく分からず聞き返してしまう。そうしたら何故か頭をチョップされる。そんなに痛くはないが意味が分からず頭を抑える。
「……私が負けず嫌いなの知ってるでしょ?」
「それは知ってるけど」
バスケを全力でやっている永井さんを見たのでそれは知っている。横を見ると龍之介は消えていて自分の席について僕の方をチラチラ見ている。いや助けてくれよ。
「……、モタモタしてたら私だって他の所に行っちゃかもしれないんだから」
永井さんは何かを呟いて自分の席に戻っていった。一体、どうしたというのだろうか。益々疲れた僕は一時間目の授業も机に突っ伏す事となった。
「僕が一体何をしたっていうんだろうか」
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