20話 告白未遂
「僕にも何か手伝えることって無いかな?」
「え?」
僕はいつの間にかそう呟いていた。何が出来るかは分からない。ただ眼の前の女の子の手助けがしたい。ただそう思っただけだった。
「え、マネージャーになってくれるの?」
「ま、マネージャーはちょっと……。ボランティア的な?」
「な、なにそれ……ぷっ」
永井さんは耐えられずに笑っている。確かに部活のボランティアってなんだよと我ながら思う。
「でも何かの助けになりたいと思うのは本当だよ。何をすれば良いのか分からないけどさ……」
僕が真剣に言ってるのが伝わったのか永井さんも笑うのを止めて僕と向き合う。
「……、気持ちは嬉しいよ。ありがとね」
「……」
「でも良いよ。私が白雲高校女子バスケ部の部長なんだし、事務的な事は顧問の先生もやってくれるしね」
「そ、そう……」
関係ない僕が出過ぎた真似だったのだろうか。そう思うと急に恥ずかしくなってきた。
「だから、こうやって私と一緒にいて愚痴を聞いてくれるだけで良い」
永井さんは陽の光を浴びて更に輝いて見えた。まるで女神のようだ。
「そ、それじゃあ手助けにならないよ」
「……、じゃあ練習時々見に来てよ」
「えっ?」
僕が練習見に来るだけじゃ何も意味ないと思うんだけども。永井さんはそれで良いんだろうか。はっ、練習を見に来て自分が自分で何をすればいいか考えろという事か。
「分かりました。自分で自分の仕事を見つけろという事ですね」
「何いってんの?」
永井さんは心底呆れた顔をしていた。こんな永井さん見たことない……じゃない。違ったのか。
「それじゃあ、ただ練習見ただけでは意味ないんじゃ……」
「に、鈍すぎる……。そんなんじゃ彼女出来ないよ」
齢十六にして生涯彼女出来ないと宣告されてしまう。大人になったら可愛い彼女出来る可能性だってあるかもしれないじゃないか。
「はあ、まあ良いよ。他の部員達も赤城君来たら楽しそうだから是非来て」
まあ確かに。彼女達、僕達が付き合っていると勘違いしているからか楽しそうだったな。
「でもみんなに僕が彼氏だって勘違いされちゃうけど大丈夫?」
「何、嫌なの?」
永井さんからドス黒いオーラが出ている。やばい、これ回答をミスったら大変な事になってしまう。
「全然!!永井さんと付き合えるなら光栄だよ」
「……」
永井さんは何故か近付いてきてぽかぽか僕の事を叩き出した。全然痛くないので怒っている訳ではない……のか?
「……、赤城君の気持ちは分かったけど。ちょっと待って欲しいかも……」
僕は脳内で言葉の意味を考える。どういう事だ。僕が付き合えるなら光栄と言っての返事。これ振られてないか。
「い、いや、今のは……」
「分かってるよ。冗談でしょ?」
いや、本当に好きだから冗談ではないんだけど、ここで冗談にしないと告白したことになってしまうと脳内で頭グルグルになってしまう。
「う、うん……」
ひとまず現状維持を選んでしまう。僕は情けない男である。
「……意気地なし」
ボソッと永井さんが呟いた。今、キモいとでも言われてしまったのだろうか。その後、何処か不思議な空気でお互い無言のまま並んで駅まで歩いて解散となった。
そして週明け、月曜。いつものように欠伸をしながら駅から学校までの通学路を歩く。
「あっ、赤城君だ〜」
「あ、柏木さん」
柏木さんは「やっほ~」と手を上げながら僕の所まで走ってきた。
「明日香から聞いたよ。バスケ部の応援に行ったんだって?」
「あ、永井さんから聞いたんだ。そうそう」
僕達は並んで話しながら通学路を歩く。僕は土曜にあった事を柏木さんに話す。
「へ〜、もうすっかり彼氏ポジじゃ〜ん」
「いやいや、友達として応援にいったに過ぎないよ」
友達の応援に試合を観に行くことだってあるだろう。そう答えると柏木さんはうわっという顔をする。何でそんな表情するんだ。
「は〜、惚気話を聞かされてウチは悲しいよ」
「いや、この話柏木さんから始めたよね」
お互い笑いあいながら歩いていると、ふと真後ろに気配を感じ取る。何だと思って振り返ると榊さんが僕を睨んでいる。
「あっ、榊さん」
「浮気者……」
榊さんの口から呪詛のような言葉が放たれた。何を言ってるんだ、この子は。
「先輩、なんで他の女子と一緒に歩いてるんですか?」
「赤城く〜ん。この子は?」
「えっと女バスの一年生の榊さん」
取り敢えず僕は柏木さんに榊さんの事を紹介する。
「ちょっと、キャプテンという彼女がいながら何してるんですか!!」
「いや、付き合ってないって言ったよね?」
榊さんは何故かプリプリ怒っている。僕が一体何をしたっていうんだ。
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