15話 練習試合を見に行こう
「本当の本当に達也から何も言われてないんだよね?」
先程から永井さんから何回も同じ事を聞かれている。当然僕は何も言われていないと正直に話しているが庇っているんじゃないかと勘ぐられている。
「御影君がそんな悪い人じゃないって分かってるでしょ」
「でも口悪いし態度も悪いからなあ」
御影君、全然信用ないみたいで流石に同情してしまう。御影君はただ素直になれないだけみたいなのに。
「……、分かった。でも何かあったらすぐ言って。血祭りにして二度と立てないようにするから」
「……」
何か前よりもっと怖いこと言い出してるんだけど。絶対言えないんだけど。
「そ、そんな事より今週末永井さん練習試合なんでしょ?調子どう?」
凄い無理やり話を変える。下手くそすぎて逸らしたのがバレバレだと思うがどうだろう。
「絶好調!!シュートめっちゃ決めちゃうから」
永井さんはシュートフォームをしてみせて笑顔になった。こんなんで誤魔化せちゃうのか。
「それに赤城君が来るんだし張り切っちゃうよ」
「はは、怪我しないように気をつけてね」
永井さんの事だから怪我などしそうにないが張り切りすぎて空回りしないか不安になる。
「怪我しないようによくケアしてるもん」
「そうだよね。ごめんね」
「いや、謝る必要ないけどね」
永井さんは「はは」と笑いながら背中をバシバシ叩く。すいません、背骨がボキボキ鳴っているので程々にしてもらえませんか。
そして朝のホームルームの時間になったので解散して自分の席に戻る。戻る際、御影君と目が合った。御影君は苦笑いをしていた。
「赤城君、大丈夫だった〜?」
ホームルームが終わった後、柏木さんが僕の席に来るなり心配した表情で歩いてきた。
「ああ、全然大丈夫。御影君は優しい人だよ」
「うわっ、全然信じられない」
まあ柏木さんは御影君の事嫌いだって言ってたしそんな感想にもなるか。でも本当に何もされてないんだし僕が頼りないからか?
ふと龍之介の方を見るとウズウズと僕のことを見ていたが、隣に柏木さんがいるのを見てこちらに来るのを止めているのだろう。
「私は二人がくっつくように滅茶苦茶サポートするから」
柏木さんはフンッと鼻息荒くしている。僕と永井さんが付き合えるようになるとは思えないけどありがたいな。
「……、本当二人仲良くなってるよね〜」
いつの間にかジト目の永井さんが僕達の前に立っていた。何か不機嫌な気がするけど気の所為か?
「そ、そんな事ないって〜。明日香の彼氏取らないから」
「か、彼氏じゃないから!!」
永井さんは顔を赤くして必死に否定している。そんなに否定しなくても……。そんな嫌なのか……。
「え〜、昨日も二人で一緒に帰ってるし。もうしちゃった?」
柏木さんの一言で僕達二人は固まってしまう。しちゃったとは……。
「り、凛〜。アンタ何言ってんの!?」
「え、その反応ってマジで?」
「するわけないでしょ!!」
その後、柏木さんがクラス中を逃げ回り、永井さんが追いかけ回している光景を見ることができた。
そして時は経ち、約束の土曜になった。僕は学校の体育館前に立っていた。
「流石に勝手に入っちゃヤバイよなあ」
中ではバスケ部の人達が既に練習を始めているのか声が聞こえていた。しばらく待っていると体育館の扉が鈍い音をたてながら開かれる。
「あっ、赤城君。おはよう〜。今日はありがとね」
「永井さん。おはよう」
永井さんがバスケのユニフォーム姿で立っていた。今まで見たことのない衣装を見ることが出来て眼福です。
「ってその大きい袋どうしたの?」
「いや、何買ってくれば良いか分からなくて取り敢えずスポーツドリンク買ってきたんだ」
何を買えば喜ばれるか本当に分からずペットボトルのスポーツドリンクを二十本や手で食べられるゼリーなど買ってきたのだ。
「え、本当に何も持ってこなくて大丈夫だったのに」
「あれ、そうなの?」
練習試合を見学させてもらうのに手ぶらはマズイだろうと思ってスーパーで買ってきたのだが余計なお世話だったのだろうか。
「ご、ごめん。じゃあこれ持って帰るよ」
「いやいや、買ってきてもらったんだからありがたく貰うね。部員の皆も喜ぶと思う」
永井さんは「ありがとね」と言いながら袋を持った。そして僕達は中に入る。
体育館には僕達白雲高校の女子バスケ部員と対戦相手の他校の生徒がもう各自の練習を行っていた。所謂アップというやつだろうか。
「は〜い。みんな集まって」
永井さんは女子バスケ部員達を集める。いや、僕何処にいれば良いんですか?集まりに混ざるといけないと思って体育館の隅に慌てて移動する。
「今日、練習試合だけどこちらの赤城君が差し入れを持ってきてくれました」
部員達はおおっと歓声が上がる。止めてくれ、僕は大した物を買ってはいない。
「え〜と、スポーツドリンクやゼリーなど貰ったのでみんなでありがたく頂きましょう。はい、みんなお礼言って」
女子部員達は僕に向かって元気よく「ありがとうございます!!」と言ってくれた。僕は恥ずかしすぎて苦笑いをするしかなかった。
「先輩!!質問があります」
「実香。どうしたの?」
実香と呼ばれた女子部員が手を上げて質問をしてきた。永井さんを先輩と呼ぶので一年生だろう。
「そちらの赤城さんは先輩の彼氏でしょうか?」
「ぶっ」
僕と永井さんはぶっと吹き出してしまう。他の部員達は「キャー」と大歓声が上がっていた。
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