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赤さびの魔女  作者: うめやす.
4章_ドラゴンを狩る魔女
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第六十二話 ユアンの挨拶 1

ミナはユアンの車椅子を押し、組合に入った


二人はエレベーターに乗り、最上階の部屋へ向かう


ユアンは黒いジャケットとズボン


白い襟の付いたシャツで正装していた


右胸にはツバキの花が飾られている


ユアンは落ち着かない様子だった


まさか、この大きな組合の最上階に


ミナの家があるとは想像していなかったからだ


「本当に……ここが……ミナのお家なの?」

「ここに住んでるの?」


「そうだよ、ギルド組合の最上階に住んでるの」

「リンは魔法省の長官だから」


「長官? よくわからないけど、きっと、すごく偉い人ってことだよね」


「そうだね、でもそんなに気を使わなくてもいいよ」

「堅苦しい感じの人ではないから」


ユアンの喉が鳴った

ただでさえ緊張しているのに、余計に怖くなった


「すごく不安になってきたよ」

「魔法使いとは知っていたけど」

「ひょっとしてミナって凄い子だったの?」

「僕がミナの近くにいることを、認めて貰えるのかな」


「大丈夫だよ、ナルは味方してくれるって言ってたし」

「リンは……ちょっとこじらせてて、思い込みが強くて、何するか分からないけど」

「根は悪い人じゃないから……たぶん」


やがてエレベーターが最上階についた


紫を基調とした豪華な空間が広がる


ふかふかの絨毯の上を車椅子は進む


動物や魔獣、魔物の剥製が並んでいた


ユアンは目をぱちぱちさせながら見上げて口を開ける


「な、なんだか、凄いところだね……」

「魔法使いのお家ってこんな感じなの?」


「これはリンの趣味よ、ちょっと変わってるけど、気にしないで」


進んで行くと、次は大きな噴水があった


中央には王様らしき男を女性が踏みつける大理石の像がある


壁には女性が男性を踏みつけたり、殴りつけたり、剣で刺したりしている像が並んでいる


「これは……すごいね」

「作者の想いが伝わってくるようだよ」

「特にモデルの女性の執念と、強烈な自立心を感じる」

「きっと有名な芸術家なんだろ?」

「誰が作ったものなの?」


「し……しらないわ……」

「その像はあまり見ないで、ユアンが汚れる気がする」


それからミナは、一度立ち止まってゆっくりと深呼吸をする


緊張感のある声でユアンに言った


「ユアン、二人に会う前に約束して欲しいの」

「リンは綺麗で、ナルは可愛いけど、容姿を褒めちゃだめだからね」


「え? なんでだい?」


「軽薄な男と思われたら、なにを言い出すか分からないから」

「二人とも、わたしを大切にしてくれているけど、ちょっと愛情がいびつなの」

「一見、可愛らしい人達に見えると思う」

「でも中身はたちが悪いから……絶対に騙されないで」


「わ、わかったよ」


そして、ようやくリンの部屋に入った


三方向すべてが大きなガラス張りになっている


部屋全体が白く輝いていた


そして、待ち構えるようにナルとリンが立っていた


その特徴を見て、すぐにユアンは二人だと分かった


ミナが話してくれた通りだった


ユアンは自分で車椅子を進めて


頭を下げて挨拶した


「はじめまして、ユアンといいます」

「ミナの友達で、仲良くさせていただいています」

「今日は急に訪ねてきてしまって、ごめんなさい」


リンが言った


「わたくしはリン・セピア」

「ミナの母親です」


ミナが裏返った声をあげた


「え! 母親?」


ユアンがリンを見つめながら言った


「リンさん、お会いできて光栄です」


ナルが続くように右手を腰に置いて胸をはって言った


「わたしはナル・ラピス」

「ミナの姉よ」


またミナの声が裏返る


「え? 姉?」


ユアンが丁寧にナルに向き直って言った


「ナルさん、ミナから話を聞いています」

「お会いしたかった」


ナルの目には敵意が浮かんでいた


右手を腰に置いたまま少しとげのある声を出す


「あら、そうなの」

「で? 会ってみた感想は?」


「聞いていた通り、可愛らしくて、楽しそうな人だなって」


可愛いと褒めてしまったユアンの後ろで


ミナがしまったという顔をした


「可愛い? 生意気ね、あんた幾つよ」


「僕は16才です」


「年下じゃない、目上の女性にたいして可愛いだなんて、失礼じゃないかしら」

「女とみれば言ってるんじゃないでしょうね」


「あ、ごめんなさい、そんなつもりは……」


ミナは慌ててナルに近づいて耳打ちする


「ちょっと! なにやってんのよ、味方してよ!」


「……ごめん……つい……」

「だって、こいつ、ミナにキスしようとしたんでしょ?」

「むかむかしちゃって……」


「しっかりしてよ! ナルだけが頼りなんだから」


その一瞬、リンの目元がピクリと揺れた


「ナル、失礼ですよ」


リンはナルをいさめるように声を掛ける


それからリンは優しくユアンに微笑んで言った


「ユアンとお呼びしてもよろしいですか?」


「はい、もちろん」


「よくぞ、訪ねてくれました」

「大したお構いもできませんが」

「どうぞ、あちらのテーブルへ。飲み物を用意します」


そう言ってリンはテーブルの方へ手を差し出した


いつもは4脚並んでいる椅子が、今日は3脚しかなかった


リンが車椅子を入れるために、開けておいたのだろう


ミナはそんなリンを窺うように見る


あれ?思ってたのとちがうな……


ひょっとして……

リンって意外とちゃんとしてる?


きっと、わたしの心配のし過ぎだったんだ


ミナは安心したようにため息をついた


空けられた場所へユアンの車椅子を入れ


自分もその隣へ座る


向かいにはナルが座った


リンは陶器のポットから飲み物を注ぎ


ユアンの前へ差し出す


中身を見たユアンが、少し驚いた顔をした


ミナは急いでカップを覗き込む


「え? お湯?」





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