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赤さびの魔女  作者: うめやす.
4章_ドラゴンを狩る魔女
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第六十一話 二人の恋愛相談 1

ナルは鼻歌交じりに廊下を歩いている


「飴玉14個は大成果ね~」


ミナの部屋の前で足を止め、扉をノックした


コンコン


返事はない


コンコン


もう一度ノックすると、ゆっくりと扉が開いた


そこにはミナが立っていた

白い寝間着を着て、ウサギの寝帽子を被っている


部屋の明かりはついていない

カーテンも閉めきられ、中は薄暗かった


ミナは沈んだ顔をしていた


「ごめん、寝てた?」


「ううん……横になってただけだよ」


「お茶とお菓子を持ってきたけど、一緒に食べる?」


「うん……食べる」


食べると聞いて、ナルは少しほっとした


ミナに促され、部屋の中へ入る

ミナがゆっくりとカーテンを開けると、陽の光が部屋に差し込んだ


ナルは床にお盆を置き、絨毯の上に座る

そして早速、飴玉を一つ口へ放り込んだ


ミナは静かにベッドへ腰かける

やはり、なんとなく元気がない


ナルは飴玉を一つ取り、ミナの口元へ差し出した


「あーん、これを舐めると元気が出るよ」


ミナは少し驚いた顔をする


「いいの? 貴重な飴玉だよ?」


「いいよ、はい、あーん」


ミナが口を開けると、ナルはその中へ飴玉を放り込んだ


ミナが口の中で飴玉を転がす


「……いちごの味がする」


「おいしいでしょ」

「それってレアな味なんだから」


「うん、おいしい」

「ナルの貴重な飴を食べてると思うと、格別においしく感じるわね」


「なによそれ」

「それで、どうしたの? らしくないじゃん」


「あはは、ごめんね」

「心配かけちゃった?」


「リンが心配してたよ」

「わたしは、ミナが話したいタイミングでいいと思ってたんだけど……」

「なにかあるなら相談してほしいかな」


するとミナが身を乗り出した


「ほんとに!? 相談してもいい?」

「怒ったりしない?」


ナルは小さくため息をつく


「ってことは、やっぱりユアンがらみなんだね」

「怒ったりしないよ」

「ミナが元気ない方が嫌だもん」

「一人で悩まないでよ」


「怒ってユアンに何かするのはなしだよ」

「リンなんか何するか分からないし、だから言えなかったの」

「ナルは、わたしの味方してくれる?」

「ナルが味方なら、リンだって手出しできないはずだからさ」


「う、うん……分かったよ」

「ってか、なんか聞くのが怖くなってきたわね」

「ひょっとして、わたしたちがいない間に凄いことになったの?」


「実はさ……」


ナルの喉がごくりと鳴った

口に入れていた飴玉を、うっかり飲み込んでしまう


ミナはいったい何を言い出すのだろう


「ナルとリンが出かけた日にね」

「わたし……ユアンの部屋に初めて入ったの」


ナルの頭が一気に回転を始める


男の子の部屋に……

わたしたちがいない……

三日間……

ミナの元気がない……


「それでね、すぐに帰るつもりだったんだけど」

「わたしが転んじゃって、ユアンに抱きついた……みたいになっちゃって」


帰るつもりだった……

抱きついた……


これは……

そういうことよね……


そしてナルの頭は、一つの結論を出した


あの男……始末してやる


「わたしも、ユアンとくっつくと居心地がよくて」

「ずっと嗅いでいたいって思う匂いもして」

「すぐに離れられなくてね」

「それでも頑張って離れたの」

「そしたらユアンが、両手で抱き寄せてきてね」


ナルは表情を変えず、真剣な顔で話を聞いていた


しかし頭の中では、すでに抹殺計画を立て始めている


さらって捨てるなんて、手ぬるいわね

あの家もろとも、完全にこの世から消し去ってやろう


わたしを本気にさせたことを後悔させてやるわ


「それでね、ユアンにキスされそうになったの」


はい、きた……

やっぱり……


まずは目の前のミナを慰めよう

何を聞いても、穏やかに話を聞こう

そして寝かせよう


それから、あいつを消しに行こう……


ナルはそう考えた


「でも、わたしが逃げたから、キスはしなかったんだけど」

「そういうことをしたいなら、きちんとナルとリンに挨拶してよって言っちゃって……」


話の続きを早合点し、ナルはうなずきかけた


「そうだっ……」


だが、すぐに話が違うことに気づく


「え? してないの?」


「うん、わたしが逃げたから」


「キスすらしていないの?」


「なによ、その言い方」

「してないわよ」


「なーんだ、わたしてっきり」


「なんだってなによ」

「なんだと思ったのよ」


「だって、男の子の部屋に、わたしたちの留守を狙って上がり込んで、抱きついたなんて言われたらさ」

「大人の階段を上ってきたって話だと思うじゃん」

「びっくりさせないでよね」

「人を殺しちゃうところだったじゃない」


「な、何をする気だったのよ……」


「相手をこの世から消し去って」

「ミナの記憶を消して」

「全部なかったことにしようかと」


「なによそれ!」

「とんでもないこと考えてるわね」


「だって、ちゃんと相談するって言ったじゃん」

「挨拶だって、紹介だって、まだされてないよ」

「部屋に入ってるのも、本当はNGなんだからね」


「それは……ムギが勝手に部屋へ入っちゃって」

「抱きついちゃったのも、ムギに押されたのよ」

「ムギはユアンにすごく懐いてて、わたしとくっつけたがってるの」


「なによそれ」

「勝手にそんなことする使い魔なんているの?」

「アカは、わたしの言うことなら何でも聞くわよ」


「ムギって自由なのよね」

「言うこともあんまり聞かないし」

「勝手に出てきたり、消えたりするし」


「それで?」

「だったら、なんで元気がなかったのよ」

「要は、何もなかったんでしょ」


「実はさ、ユアンが、ナルとリンに挨拶するために家へ来たいって言ってるの」

「それから、わたしに気持ちを伝えるって……」


「え、来るの? ここに?」


「来たいって言われてるの」

「でも、そんなことして大丈夫かな……って」


ナルは顎に手を当て、少し考えた

それからクッキーをひとかけら取り、口に入れる


「大丈夫ではないわね」

「正直、わたしも歓迎できないわ」

「だって、認めたらミナを盗られちゃうってことでしょ」


「やっぱり……そうだよね」


「でも、気持ちは分かるよ」

「恋愛って、悩むもんね」


「ほんとに!」

「ナルも悩んでるの? イナクのことで?」


「まあね、ずいぶん悩んだわよ」

「ただ、わたしの話は今はいいじゃない」


「それよりさ、ミナの気持ちはどうなの?」


「え?」


「ユアンのことが好きなの?」

「結婚したいくらいにさ」


「……たぶん、そうだと思う……」

「でもね、そんな極端な話じゃないのよ」

「もっとゆっくり、お互いを知れたらいいなって……」


「なによそれ……要は好きなんじゃない」

「そのうちユアンばっかりになって、わたしは捨てられるのよ」


「なによ、その言い方」

「わたし、真剣に話してるんだけど」


「わたしだって真剣だよ」

「ミナが本気で好きなら、わたしは味方するしかないじゃない」

「本当は嫌だけど、ミナの幸せの方が大事だからね」


「ほんとに? 味方してくれるの?」

「さっき、ユアンをこの世から消し去ろうとしてなかった?」


「わたしに無断で、挨拶すらしないからでしょ」

「ちゃんとしてくれれば、そんなことはしないわよ」


「うん……ありがとう」

「ねえ、ナル」


「なに?」


「人を好きになるって凄いね」

「わたし、ずっとユアンのことばっかり考えてる」

「ユアンと一緒にいたい」

「抱きしめてほしいって思ってるの」

「ユアンの匂いすら……愛おしいの」

「こんな気持ちになるなんて、思わなかった」

「ナルも、イナクにはこんな感じなの?」



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