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赤さびの魔女  作者: うめやす.
4章_ドラゴンを狩る魔女
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第五十八話 お留守番の戦い 2

次の瞬間、見渡す限り、無数の光の槍が現れた


ゲレンが驚愕の声を上げる


「リンの小娘……なんだ、あの巨大な魔力は」

「まるで高位ドラゴンではないか」

「ありえん……」


「おじいさんさ、ゲレンだっけ?」

「あんたも、その横にいるご自慢の人形も、わたしには全然怖くないんだよね」


ミナはゲレンを真っすぐに見据える


「リンの方が、あんたたち三人よりよほど怖いよ」

「リンはね、あんたみたいに誰かの後ろに隠れたりしない」

「リンなら、意地でもその人形みたいに操られたりもしないわ」

「その覚悟がかっこいいの」

「わたしよりずっと弱いくせに、わたしのことを守ろうなんて思ってる」

「その生き方が愛おしいのよ」


ミナはリックへ目を向けた


かつて、一人でリックに立ち向かったリンの姿を思い出す


「だから、すごく怖いの」


周囲に浮かぶ槍が、まばゆい光を放つ


「それと比べたら、あんたたちなんか子犬みたいなものよ」

「よくも薄汚い口で、リンへの侮辱をわたしに聞かせてくれたわね」


ミナはゲレンを見下すように笑った


「わたしは、ナルやリンのように優しくないんだよ」


ミナは目を見開き、叫んだ


「ゲレン! リンに詫びながら、地獄へ落ちなさい!」


次の瞬間、大量の光の槍が一斉に放たれた


ゲレンは慌てて、アルトとリックへ命じる


「私を守れ!」


アルトとリックが、ゲレンの前に立ちはだかる


リックは光の衣を輝かせ


アルトは光の剣を構えた


そこへ光の槍が激突し始める


次々と襲いかかる槍を、二人は弾き返し、受け止めて耐える


しかし、すぐに均衡は崩れた


リックの光の衣が、ぼろぼろに崩れ去る


むき出しになった身体へ、光の槍が次々と突き刺さった


それを見て、ミナがリックへ人差し指を向ける


「バ~ン」


突き刺さった槍が強く輝き、一斉に破裂した


リックの身体は粉々に砕け散り、消えていく


アルトは光の剣で槍を受け止めていた


しかし、その剣も槍を打ち払うたびに削られていく


ついには、光の剣が粉々に砕け散った


アルトは身をかわそうとするが、右の太ももへ槍が突き刺さる


続いて、何本もの槍がアルトの身体を貫いた


ミナがアルトへ人差し指を向ける


その時、ゲレンが後ろへ手を伸ばした


崩れた柱の陰には、あらかじめ捕らえられ、身動きを封じられた女がいた


ゲレンは女を引き寄せ、盾にするように両腕で抱え込む


「やめろ! この者の命はないぞ!」


ミナは眉をひそめ、ゲレンを見る


捕らえられていたのは、中年の痩せた女性だった


身なりを見る限り、この城のメイドのようだ


ミナの光の槍が空中で止まる


そして、アルトへ向けていた指を下ろした


「あんたさ、呆れるほどろくでもないね」


「魔法を消せ! 殺すぞ!」


そう言われ、ミナは光の槍をすべて消した


アルトに刺さっていた槍も消え


アルトはその場に膝をつく


ミナは少し考えるように、顎へ指を添えた


それから、何かを思いついたように言う


「リンなら、こう言うわね」

「悪い腕ですね、引き抜きますよ」


次の瞬間、ゲレンの左右の二の腕に、小さな虹色の矢が突き刺さった


ゲレンが虹色の光に驚き、自分の腕を見る


矢が刺さった二の腕が結晶化し、赤い宝石へ変わっていく


結晶化した部分から先が、力なく床へ落ちた


ゲレンが悲鳴を上げる


「ぐああああ!」


今度はリンの口調を真似て、ミナが言った


「次はその悪いお口ですね、舌を引き抜きますよ」


悲鳴を上げて大きく開いたゲレンの口へ、虹色の矢が飛び込む


矢はゲレンの舌へ突き刺さった


その舌も結晶化し、小さな赤い宝石へ変わる


ゲレンは悲鳴にならない声を上げ、苦しみながら跪いた


自由になったメイドは、その場に尻もちをついて怯えている


それを見て、ミナが叫んだ


「見苦しく這いずってでも逃げなさい!」


メイドはその言葉を聞き、意を決したように逃げ始めた


腰が抜けて立てないらしく、床を這うようにして遠ざかっていく


それを確認し、ミナはゲレンへ歩み寄った


「さてと、あんたの顔も見飽きたわ」

「ふさわしい場所に送ってあげる」


ミナは右手を横へ伸ばす


その手に、巨大な光の鎌が現れた


「地獄にね」


その瞬間、ルッツの声が響いた


「待て!」


ルッツの光の鎖が伸び、ゲレンとアルトに巻きついて締め上げる


ミナは振り向きもせず、ルッツに言った


「どういうつもりよ」


「あんな奴を殺して、君の手を汚させては、リンに面目が立たない」

「それに、アルト兄さまの遺体は、丁重に弔ってやりたいんだ」

「きっとリンも……それを望むはずだ」

「そうだろ?」


ミナは少し間を置いてから答えた


「そうだね」


そして光の鎌を消し、手を下ろす


「じゃ、わたしはもう帰っていい?」

「あの鎖、結構頑丈そうだし」

「もう大丈夫でしょ」


「ああ、助かったよ」

「この礼は、また改めてさせてもらう」


ミナは周囲を見回し、眉をぴくりと動かした


城には、ミナの魔法によって大穴が開いていた


「いや、お礼なんて別にいらないよ」

「お城も、ずいぶん壊しちゃったしさ」


ミナは大穴の方へ歩いていく


「それよりさ、アルのことはリンに内緒にしてくれる?」


「君がそう言うなら……」

「しかし、なぜだ?」


「リンって、アルのことになると危ういのよね」

「もう死んでるアルに会ったって、どうしようもないんだしさ」

「知らない方がいいと思うのよ」


「分かった……約束しよう」


「じゃ、よろしく」


ミナは自分が城に開けた穴から飛び出した


ルッツは、その姿を見送りながら呟く


「まるで、子供が虫と遊んでいるようだった……」

「あれがミナか……怖いな」


一方、城を離れたミナは、暗くなった空を飛びながら


ようやく一つ大事なことに気づいた


「あ! エビの揚げ物、どっかで落としちゃった!」

「せっかく買えたのに~」


ミナは暗くなった空を飛び、組合にある家のテラスへ降り立った


部屋は真っ暗で、静けさに包まれている


それを見て、ミナは大きなため息をついた


「はぁ……今日も一人かぁ」


とぼとぼと部屋へ入り、明かりを灯す


誰もいない部屋を見て、ミナはもう一度ため息をついた


食卓の椅子に座り、ムギを呼び出す


その首の下を、優しく撫でた


「それにしても、今日のあいつ最悪だったなぁ」

「あんな人もいるのね~」


そこで、人形のように操られていたアルトとリックを思い出した


「ん……人形……」


何かを思いつき、ミナの目が大きく開く


「そうだ!」


ミナは椅子から立ち上がり、ばたばたと奥の部屋へ入っていった




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