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赤さびの魔女  作者: うめやす.
4章_ドラゴンを狩る魔女
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第五十七話 ミナの待つ家へ

ナルとリン、そしてレアルは、まだ陽が昇らないうちに屋敷から飛び立った


今日の検査人数は一万人


六箇所の会場を回る予定だ


最初の会場に到着した三人は、休む間もなく検査を始める


レアルの檄が会場中に響く


「一人5秒だ! 遅れるな!」


会場の兵士たちが声を上げる


「オオオ!」


ナルの前には、次々と人が来ては去っていく


一つの会場の検査が終わると、すぐにレアルに連れられ、次の会場へと急いだ


食事も、移動中にサンドイッチを食べるだけだった


目まぐるしい一日が過ぎていく


最後の会場での検査を終えたころには、すっかり夜も更けていた


ナルは椅子にぐったりと座り込んでいる


リンも隣の椅子に腰掛け、疲れたように小さく息を吐いた


その前には、顔色一つ変えていないレアルが立っていた


「ふむ、移動時間込みで17時間か……」

「なかなか思うようにはいかないものだね」


「こんなものはデスマーチと呼ぶのです」

「貸与とて魔力消費がないわけではありませんよ」

「わたくしたちを殺す気ですか」


「そんなつもりはない」

「現に君たちは生きているではないか」


「レアルはやりすぎだよ」

「わたし、途中で何度もめまいがして倒れかけたんだからね」


「ナルは少し体力に不安があるね」

「もっと鍛えた方がよいのではないか?」


「リンの弟子になってから、ずっと鍛えてきてこれなの!」

「わたしには向いてないのよ」


「そんなことはないだろう」

「リンは君に甘いからね」

「鍛え方が不十分なのだ」

「しばらく、私にナルを預けないかね?」

「三カ月も鍛えれば、それなりになるだろう」


ナルが即答した


「絶対やだ!」

「ひどい目に遭うに決まってるわ」


リンもすぐに答えた


「わたくしがナルを他人に預けるはずがないでしょう」

「あなたはやりすぎます、師に向いていませんよ」


「私の考えは逆だがね」


リンは小さく息を吐いた


「なんにせよ、これでミナの所へ帰れますね」

「今夜は月明かりもあります」

「十分に帰れるでしょう」


レアルが意外そうに聞き返す


「もう帰るのか?」

「夜も遅い」

「我が屋敷にもう一泊してから帰ればよかろう」

「昨夜とはまた違った趣向を用意してある」


ナルが身を乗り出す


「え、ほんと? どんなの?」


すかさずリンが遮った


「嫌ですよ、帰ります」

「わざわざ罠を張って獲物を待ち構えている場所へ、戻る必要はありません」


ナルが残念そうに言った


「えー、帰るのは明日でいいじゃん」

「予定よりずっと早く終わったんだし」


レアルがすかさず同意する


「ナルもこう言っているよ」


「あなたはレアルに懐柔されすぎです」


リンはそう言って立ち上がった


「いいから、今すぐ帰りますよ」


レアルは笑みを浮かべてリンを見る


「なにを焦っているのかね」

「ひょっとして、捕まりそうなのかな?」


レアルがそう言った次の瞬間


稲光とともに、レアルのすぐ横へ雷が落ちた


「うぬぼれないでください」

「その舌を引き抜きますよ」


それでもレアルは表情を崩さない


「また、お誘いするよ」

「その時は、ミナも一緒に招きたいね」


リンは返事もせず、水を弾けさせて空へ舞い上がった


「あー、リン、待ってよー!」


ナルはレアルを振り返り、大きく手を振る


「またね、レアル! 楽しかったよ!」

「リンって、いろいろこじらせてるから大変だろうけどさ」

「頑張ってね、応援してる!」


赤い砂が弾け、ナルも空へ舞い上がる


そのまま先を行くリンを追いかけた


レアルは顎に手を当て、納得したように頷く


「ふむ、こじらせている……か」

「実に的を射ているね」


ナルはすぐにリンへ追いついた


二人は帰路を急いだ


結局、二人は一週間以上かかるはずだった仕事を、三日で終わらせた


三日しか離れていないのに


もうずいぶん長く、ミナに会っていないような気がする


家ではミナが待っている


もうすぐ、その顔を見られる


そう思うと、ナルの胸は弾んだ




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