第五十二話 ナルVSリン&レアル 1
ナルとリンは旧市街で、能力検査を流れ作業のように次々と行っていた
ナルは小さな仮設小屋の中で、検査に来た人たちを相手にしている
能力検査は、ナルとリンが持つ貸与の力を使って行われる
一時的に能力を貸し与え、ステータスを表示させることで、その人の才能やスキルを確認するのだ
ナルとリンには、それができた
ナルはテキパキと検査をこなしていた
「はい、次の人~」
入ってきたのは、年老いた老婆だった
老婆はありがた迷惑そうにナルへ言った
「無料で検査してくれるのはありがたいが」
「今さらこんなことをしてもらってもね……」
ナルは軽い調子で答えた
「無料なんだから別にいいでしょ」
「知ってて損はないじゃん」
「それに、魔法の才能って遺伝することが多いんだってさ」
「魔力がある子は、気を付けないと家族を傷つけちゃうこともあるんだよ」
「おばあちゃんに魔力があるなら、孫がそうならないように気を付けられるでしょ」
そう言って、ナルは右手を上げた
「はい、いくよー」
「ちょっと体が重く感じるけど、平気だから」
ナルが老婆にした話
それこそが、一斉検査をやると決めた理由だった
魔力を持つ自分の髪を、危険だと知らずに切ってしまったことで
母は亡くなり、父は足を失った
もう、そんな不幸が絶対に起こらないようにする
そのために考えついた方法が、全員を検査するというものだった
しばらく検査を続けていると、人の流れが途切れた
そして、リンがナルの小屋に入ってきた
「旧市街は全員の検査が終わったようです」
「思ったよりも早く終わりましたね」
「うん、リンもありがとう……」
「わたしのわがままに付き合ってくれて」
「いいえ、手伝えて嬉しいですよ」
「ナルが自分からこのようなことを提案してくる日が来るとは、感慨深いです」
「傍であなたの成長を見るのが、わたくしの楽しみなのです」
「え~、なんか照れちゃうな~」
リンの目元がぴくりと動いた
リンは、ゴミ箱の中に飴玉の空箱がいくつも捨ててあることに気づいた
「なんですか、これは? 飴は一日五個までです」
「え! いや、そ、それは……」
「あ、そうだ、検査に来た人たちにあげたんだよ」
「嘘をおっしゃい」
「あなたはいつになったら飴を我慢できるようになるのです」
「いったい今日だけで何個食べたんですか」
「体に悪いと言っているでしょう」
「しょうがないじゃん、たくさん届いたんだから」
「届いた?」
「うん、レアルがここで検査してるって、どこかで知って届けてくれたんだよ」
「なるほど……あの男が原因ですか」
「飴でナルを懐柔しようとするなんて小賢しい」
「一度懲らしめておく必要がありそうですね」
「そんなことよりさ」
「次はどこに行くの? 街や村を回るんでしょ?」
「はい、わたくしたちは北へ向かいます」
今回の一斉検査では、国の北半分をナルとリンが担当し
南側はほかの者たちが手分けして回ることになっていた
「北にはレアルの領地があります」
「我が国で二番目に大きな町も、そこにあります」
「まずは、そこへ向かいましょう」
リンは少しだけ目を細めた
「ついでに、レアルにはきちんと話をつけておきます」
「えー、やめてよ」
「飴をくれなくなったらどうするのよ」
「あなたは食べすぎです」
「目の前にあれば、我慢できないでしょう」
「提供元を絶つ必要があります」
「早く行きますよ」
「ミナも一人にしておくのは心配なのです」
「悪い虫が周りを飛んでいますからね」
「はーい」
二人は外に出てから、魔法をはじけさせて空高く舞い上がった
北へ、北へと空の旅を急ぐ
「ねえ、どれくらいでレアルの領地に着くの?」
「二時間ほどでしょうか」
「レアルの領地で飴を作ってるって言ってたよね~」
「わたし、作ってるところを見てみたい!」
「気は進みませんが……」
「ナルの社会勉強という意味では良いかもしれませんね」
「そうそう、勉強だよ!」
「絶対に行くからね!」
リンはため息をついた
「まったく……調子がいいですね」




