第五十話 新たなる王 1
しばらく馬車に揺られていると、王城へとたどり着いた
レアルは馬車の扉を開けて、階段を下に置く
そして手を差し出し、三人を降ろした
「私は先に行って待っていなければならない」
「君たちは、後から来なさい」
そう言って、レアルは急ぐように城へ入っていった
それからリンを先頭に、三人は城へ歩いて入場する
入口の左右には兵士が立ち並んでいた
三人が近づくと、兵士たちは手に持った旗付きの槍を左右から合わせるようにして、トンネルを作った
城内に入ると、すぐにルッツが出迎えてくれた
「おお、リン、ナル、ミナ」
「よく来てくれた」
リンはうやうやしくドレスのスカートを広げて礼をする
そして、ナルとミナにも視線を送り、礼をさせた
ルッツはリンを見て言った
「リン、怪我の具合はどうだ?」
「まだ痛むのか?」
リンの怪我はほとんど治っていたが
右腕にはまだ包帯をしている
ただ、今日は長袖のドレスでそれを隠していた
「はい」
「もうすっかり治りました」
それから、ルッツはナルとミナにも声をかけた
「やあ、これは見違えたな」
「二人とも美しい」
「すっかりご令嬢になったね」
すると、リンが遮るように口を挟んだ
「ナルとミナは修行中の身です」
「男性との会話は禁じております」
「ルッツ王といえども、ご遠慮ください」
ルッツは少し面白がるように返した
「でも、ナルは城の兵士と気さくに話していたと聞いたぞ?」
リンはナルをちらりと見る
ナルは、そういえばそうだった、という顔をしていた
「ナルには後できつく言い聞かせておきます」
「男性との会話は禁止です」
「用があれば、わたくしが話します」
ルッツは少し困ったように笑った
「分かったよ」
「さあ、会場へどうぞ」
「私がエスコートしよう」
ルッツはリンに右手を差し出した
リンはその手に、自分の左手を軽く置く
そして、二人は歩き出した
会場には、すでに大勢の貴族たちが待ち構えていた
玉座から離れた場所には、跪いた様々な身なりの人々が大勢いる
有力な商人、軍人、役人たちだった
ルッツはリンの手を引きながら
会場の中心を通る赤い絨毯の上をゆっくりと歩く
まるで見せつけるように
その後ろには、ナルとミナが付き従うようについていった
ナルがミナに耳打ちする
「ねえ」
「なんか、すごい見られてない?」
ミナは会場を見回しながら、小声で答えた
「ルッツにはめられたね」
「まるで、わたしたちがルッツの子分みたい」
「どういうこと?」
「見せつけたいんでしょ」
「わたしたちがルッツの味方だって」
「ふーん」
今、この国で最も恐れられているのはリンだった
一部の人間は、リンがリック王を一騎打ちで倒したことを知っていた
つまり、最強のA級魔法使いの称号がリンへ移ったことを知っている者たちがいる
加えて、リンは二人のA級魔法使いを弟子として持っていた
ルッツがリンをエスコートしたのは、この光景を皆に見せるためだった
リンはルッツのためにリック王を殺した
そう思わせるために
玉座の横には王妃の席があり、マリーがその前に控えていた
玉座の左手には、レアル、ノア、その隣には黒髪に黒い衣装の男が立っている
それぞれの後ろには、黒い椅子が置いてあった
さらにその横に、三つの席が用意されている
ご丁寧に、椅子の色は紫、赤、白だった
ここに座れと書いてあるようなものだ
またナルがミナに耳打ちした
「あれ、わたしたち用の椅子だよね?」
「どう見てもそうだね」
ルッツは玉座の前まで進み、振り返って会場を向いた
リンは紫の席の前に立つ
ナルは赤い席の前
ミナは白い席の前
この時、ルッツが来賓たちに見せたかった光景が完成する
王となるルッツ
王妃となるマリー
そして、玉座の周囲に並ぶ六人
ナルたちが暮らすこの国、セルレア王国が誇るA級魔法使い八名
その全員が、この場に集まったのだ
そして、ルッツは腰の剣を抜き、高々と掲げた
「我、ルッツ・セルレアは、神の名において国王となる」
「異議のある者は、声を上げよ」
会場は、しんと静まり返った
それを確認するように、ルッツは会場を見渡す
「我こそは王なり」
「セルレア王国に栄光あれ」
会場が一斉に割れるような声を上げた
「栄光あれ!」
それから歓声と拍手がどっと湧き上がった
ルッツは剣を鞘に納め、ゆっくりと玉座に座る
それを見て、マリーも椅子に座った
ノア、黒い男、レアル、そしてリンも腰を下ろす
ナルとミナは慌てて自分たちの椅子に座った
さらに大きな歓声が上がった




