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赤さびの魔女  作者: うめやす.
4章_ドラゴンを狩る魔女
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第四十六話 音色の出会い 2

そんなの覚えてるの?


ミナはそう思った


ずっと、ユアンは自分の演奏を聞いているミナに気づいていたのだろうか


やがて、ゆっくりと、やわらかな旋律が流れ出した


ここに二回目に来た時と、確かに同じ曲だった


「わたしのこと、ずっと見てたんだ……」


ミナはいつものように水路の方を向いた


水が流れている


草木が揺れている


小鳥が屋根の上で羽をふくらませている


亀が水路の縁でじっとしている


ムギが目を閉じて、しっぽだけを小さく動かしている


そして、ユアンのピアノの音色がある


すごく落ち着く……


匂いと音


風と水


小さな生き物たちの気配


それが、ユアンの弾く曲と一緒に、ゆっくり胸の中へ入ってくる


やがて曲が終わると、またユアンが窓から顔をのぞかせた


その顔を見て、ミナはすぐに拍手をした


「ありがとう、すごく良かったよ」


ユアンが少し不安そうに聞いた


「この曲で正解だった?」


「うん、よく覚えてたね」


ユアンはほっとしたように笑った


「実は、不安だったんだ」

「僕が気づかない時にも、君が来てたんじゃないかってね」


ムギが起きて、大きく伸びをした


それからすぐに、ミナの方へ歩くようにして消えてしまった


ミナは吊り橋の上から降りた


「それじゃ、わたし帰るね」

「連れもいるから、戻らないと」


「う、うん、今日はありがとう」


立ち去ろうとするミナに、ユアンが慌てて声を掛けた


「あの、ミナ」


「ん?」


「もし良かったら、またここにおいでよ」

「僕には、ピアノを弾くことしかできないけど」

「ミナに喜んでもらえるように、練習しておくから」


「言われなくても、勝手に来てたでしょ」

「またね、ユアン」


「うん! またね、ミナ」


ミナは歩いてきた道を戻る


先ほど聞いた曲が、自然と鼻歌になって出てきた


「なんか楽しかったな」

「また……会えるかな」


しばらくして、ナルがいる飴玉のお店にたどり着いた


ナルは思う存分に飴玉を食べて、ほくほく顔で座っていた


その横には飴玉の箱が山積みになっている


山積みになった飴玉の箱を見て、ミナは呆れた


「どんだけ食べたのよ」

「よく飴玉ばっかりそんなに食べられるわね」


「あ、ミナ、おかえり~」

「どこ行ってたの~?」


「ただの散歩だよ、どことかないよ」

「もう帰ろうよ」


二人はお店から出て歩き出した


少し歩いていると、ミナの鼻歌が始まった


そんなミナを横目にナルが聞いた


「なんか今日は機嫌がいいね」

「いいことでもあったの?」


「そんなんじゃないよ」

「今日聴いた曲でさ、気に入ってるの」


「へー、なんて曲?」


「そういえば知らないや」

「今度会ったら聞いてみようかな」


ナルの足が少し止まった


「今度会ったら聞くって……だれに?」


「だ、だれでもないよ」


ナルがじとっとした目でミナを見る


「だ~れ~に?」


「だれでもないって」


「あー! なにか隠してるでしょ!?」

「そういうの、分かるんだからね」

「わたしにも言えないってどういうことよ!」


「なんでもないんだってば」


逃げるように、ミナは走り出した


「待ちなさい! ミナ!」


ユアンのことを、ナルに隠す理由はなかった


でも、ナルとは違う場所で、初めてできた友達だった


なんとなく、気恥ずかしかった


ずっとミナは、音だけでユアンを知っていた


初めて実際に会って話をしたユアンは、聞いてきた音が形になったような人だった


ずっと知っていたような気がした


そして、相手も自分を知っていてくれたのが嬉しかった


その小さな出会いを、少しの間だけ独占したかった


もう少ししたら、ナルにも教えよう


そう……

もう少ししたら……




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