第四十二話 リンVSリック 2
リックが強烈に地面を蹴る
大きな地響きがして、リックがリンに向けて飛び出す
「ウオオオオ!」
リックの雄たけびと共に、その光は大きく広がっていく
リックのスキル、光の衣
その身を光が包み込み
全てから術者を守り、全てを破壊する矛となる
ミナが眉をひそめて言った
「これ…やばくない?」
光を全身にまとったリックが飛び込んできた
その光が地面を削り
轟音を響かせながら、右拳を突き出す
リンは水の盾を出して防いだが
それはすぐに砕かれ、役に立たない
咄嗟に水の刃を幾重にも重ねるようにして光を受け止める
水の刃は粉々に吹き飛び、リンは後ろに激しく吹き飛ばされる
地面に何度も体をぶつけて鈍い音が響いた
そして、最後は地面を滑るようにしてから、ようやく止まった
ミナが焦ってナルに言った
「まずいよ!リックの方が全然強い」
「リンは手を出すなって言ったけど」
「助けに入るよ!ナル」
ナルも頷いて動き出した
「うん!」
その時、リンが叫ぶようにそれを制止した
「駄目です!」
リンに叱られたように、二人の体は止まる
リンはまだ膝をついたまま立ち上がれない
いつもの口調で二人に言った
「だめですよ」
「わたくしから、楽しみを奪わないでください」
ミナとナルは困惑して顔を見合わせる
ミナはリンに叫んだ
「死んじゃうよ!リンじゃ無理だよ!」
ナルも叫ぶように言った
「わたしたちが戦うから!もうやめて!」
リンはゆっくりと体を起こしながら二人に言った
「だめです」
「手を出せば、あなた達は破門してしまいますよ」
リンはふらつきながら立ち上がった
体中が、髪まで泥にまみれていた
服はボロボロに破れている
あちこちに大きな怪我をしている、小さな傷は数えきれない
いつもの綺麗な顔には、大きな擦り傷がついていた
リンは二人の方を向いて、小さく笑って言った
「おねがい」
リックが言った
「三人で戦わないのか?」
リンはまっすぐに、リックを見据えた
「はい、あなたはわたくしの獲物ですから」
リックの拳が強く握られた
「お前ごときが、一人で俺を倒せるとでも?」
「ほんのひと撫でで、その様ではないか」
ひと際大きな雷鳴が鳴り響く
リンはリックを力強く睨みつけた
そして言い放った
「わたくしが今日まで生きながらえてきたのは」
「この時のためだったのです!」
リンがそう言うと
その肩にクロが現れた
降り注ぐ雨が、いくつもの水のムチへと形を変える
水のムチは四方八方からリックへ伸び
その光の衣ごと、強引に絡みついた
リックの動きが止まる
次の瞬間
空が白く裂けた
轟音と閃光が重なり
幾筋もの雷がリックへ落ちる
一本ではない
二本、三本
さらにその上から
容赦なく雷が重なっていく
リンの胸元で
赤い石が強く輝いた
空から降る雷は
さらに太く、激しくなっていく
リンの持てる力
そのすべてが
リック一人に叩き込まれていた
やがて雷は
空と地面をつなぐ巨大な雷光の柱となり
リックを完全に飲み込んだ
眩い雷光が輝いた
白い世界の中
雷の轟きだけがあった
そして、限界を迎えたように
赤い石が静かに砕け散った
すっと雷光が消える
雨も止んでいる
リンは膝をつき
肩で息をしていた
全てを使い切った
リンはリックがいた場所から目を逸らさなかった
煙が立ち上っている
その奥から
ゆっくりと足音が聞こえてきた
重く、確かな足音だった
煙を引き裂くように
リックが歩いて出てくる
先ほどと同じく
リックは光に包まれている
あれほどの雷撃を受けても
服の端すら焦げていない
リック自身にも
傷一つ付いていなかった
リンはそれを見て
小さく息を漏らした
「これでも、届きませんか…」
リックはリンの前まで歩いてきた
とどめを刺そうと左腕を振り上げる
ミナとナルの声が重なる
「リン!」
二人は同時に飛び出した
ミナは無数の巨大な光の槍を空中で輝かせる
虹色の矢も無数に現れた
ナルは溢れるように紫の光を放ち
その周りで、赤い砂と白い砂が混ざり合うように舞い始めた
ナルの腕には使い魔のアカが巻きついていた
二人の魔法を警戒して
リックが、リンから視線を外した
その時、リンが動いた
右手を握りしめ
リックの胸を、そのまま殴りつけた
それは小さな音を鳴らして
リックがまとう光の衣に当たって止まった
光と触れている拳が、小刻みに揺れて血が飛び散っている
リックはリンを見下ろしながら吐き捨てるように言った
「無駄なあがきを」
リンは小さく笑って言った
「一人なら、勝てませんでしたね」
次の瞬間、リンは右手を開いた
破裂するように
その手から雷が弾ける
リックの光と、リンの雷がぶつかり合う
そしてその間には、紫色の石があった
ミナの能力で、結晶になった、ナルの悪食の光
結晶は破裂するように砕け、すぐに小さな拳大の紫色の光が広がった
リックの光は、悪食の光に飲み込まれて消えていく
その時、リンの背中で、魔法の水が破裂してリンの身体を前に押し出した
リンの右手は押し込まれるように
リックの光の衣の内側へ入っていく
骨が折れる鈍い音が何度も鳴った
悪食の光は、リックの光の衣を打ち消し
ついには、リックの胸にリンの右手がたどり着いた
そして、次の瞬間
リックが痙攣するように大きく揺れた
するとリックの光が消え、立ったままの姿勢で、後ろに大きな音を立てて倒れる
リックの胸には、刃で何度も切り裂かれたような傷が刻まれていた
それを確認するように見下ろした後、リンも膝から崩れ落ちた




