4-22 リンVSリック
リックが強烈に地面を蹴る
大きな地響きがして、リックがリンに向けて飛び出す
「ウオオオオ!」
リックの雄たけびと共に、その光は大きく広がっていく
リックのスキル、光の衣
その身を光が包み込み
すべてから術者を守り、すべてを破壊する矛となる
ミナが眉をひそめて言った
「これ……やばくない?」
光を全身にまとったリックが飛び込んできた
その光で地面を削りながら
リックは轟音と共に右拳を突き出す
リンは水の盾を出して防いだが
それは一瞬で砕かれ、役に立たない
咄嗟に水の刃を幾重にも重ねるようにして光を受け止める
水の刃は粉々に吹き飛び、リンは後ろに激しく吹き飛ばされる
地面に何度も体をぶつけ、鈍い音を響かせた
最後は地面を滑り、ようやく止まった
ミナが焦ってナルに言った
「まずいよ! リックの方が全然強い」
「リンは手を出すなって言ったけど」
「助けに入るよ! ナル」
ナルも頷いて動き出した
「うん!」
その時、リンが叫ぶようにそれを制止した
「駄目です!」
リンの一喝に、二人の体が止まる
リンはまだ膝をついたまま立ち上がれない
いつもの口調で二人に言った
「だめですよ」
「わたくしから、楽しみを奪わないでください」
ミナとナルは困惑して顔を見合わせる
ミナはリンに叫んだ
「死んじゃうよ! リンじゃ無理だよ!」
ナルも叫ぶように言った
「わたしたちが戦うから! もうやめて!」
リンはゆっくりと体を起こしながら二人に言った
「だめです」
「手を出せば、あなたたちを破門してしまいますよ」
リンはふらつきながら立ち上がった
全身が泥にまみれ
髪も服もぼろぼろになっていた
あちこちに深手を負い
小さな傷は数えきれない
いつもの綺麗な顔には、大きな擦り傷がついていた
リンは二人の方を向いて、小さく笑って言った
「おねがい」
リックが言った
「三人で戦わないのか?」
リンはまっすぐに、リックを見据えた
「はい、あなたはわたくしの獲物ですから」
リックは拳を強く握った
「お前ごときが、一人で俺を倒せるとでも?」
「ほんのひと撫でで、その様ではないか」
ひときわ大きな雷鳴が鳴り響く
リンはリックを力強く睨みつけた
そして言い放った
「わたくしが今日まで生きながらえてきたのは」
「この時のためだったのです!」
リンがそう言うと
その肩にクロが現れた
降り注ぐ雨が、いくつもの水のムチへと形を変える
水のムチは四方八方からリックへ伸び
その光の衣ごと、強引に絡みついた
リックの動きが止まる
次の瞬間
空が白く裂けた
轟音と閃光が重なり
幾筋もの雷がリックへ落ちる
一本ではない、二本、三本
さらにその上から、容赦なく雷が重なっていく
リンの胸元で赤い石が強く輝いた
空から降る雷は、さらに太く、激しくなっていく
リンの持てる力
そのすべてが
リック一人に叩き込まれていた
やがて雷は
空と地面をつなぐ巨大な雷光の柱となり
リックを完全に飲み込んだ
白く染まった世界の中
雷の轟きだけが響いていた
そして、限界を迎えたように赤い石が静かに砕け散った
すっと雷光が消える
雨も止んでいる
リンは膝をつき、肩で息をしていた
すべてを使い切った
リンはリックがいた場所から目を逸らさなかった
煙が立ち上っている
その奥から、ゆっくりと足音が聞こえてきた
重く、確かな足音だった
煙を引き裂くように
リックが歩いて出てくる
先ほどと同じく、リックは光に包まれている
あれほどの雷撃を受けても、服の端すら焦げていない
リック自身にも傷一つ付いていなかった
リンはそれを見て小さく息を漏らした
「これでも、届きませんか……」
リックはリンの前まで歩いてきた
とどめを刺そうと左腕を振り上げる
ミナとナルの声が重なる
「リン!」
二人は同時に飛び出した
ミナは無数の巨大な光の槍を空中で輝かせる
虹色の矢も無数に現れた
ナルは溢れ出すように紫の光を放ち
その周りで、赤い砂と白い砂が混ざり合うように舞い始めた
ナルの腕には使い魔のアカが巻きついていた
二人の魔法を警戒して
リックがリンから視線を外した
その時、リンが動いた
右手を握りしめ
リックの胸を、そのまま殴りつけた
リンの拳は小さな音を立て
リックがまとう光の衣に当たって止まった
光に触れた拳が小刻みに震え
皮膚が裂けて血が飛び散る
リックはリンを見下ろしながら吐き捨てるように言った
「無駄なあがきを」
リンは小さく笑って言った
「一人なら、勝てませんでしたね」
次の瞬間、リンは右手を開いた
その手の中には
紫色の結晶が握られていた
ミナの力によって結晶化した
ナルの悪食の光
直後、リンの手から雷が弾ける
リックの光とリンの雷がぶつかり合い
二つの力に挟まれた紫色の結晶が砕け散った
結晶は拳ほどの大きさの悪食の光へ戻り
リックの光を飲み込んでいく
その時、リンの背後で魔法の水が破裂し
リンの体を前へ押し出した
その勢いのまま、リンは右手を押し込み
リックの光の衣の内側へ食い込ませていく
リンの右腕から
骨の折れる鈍い音が何度も鳴った
悪食の光は、リックの光の衣を食い破り
ついには、リンの右手がリックの胸に触れた
そして、次の瞬間
リンの掌から、無数の水の刃が弾けた
リックの体が痙攣するように大きく揺れる
その身を包んでいた光が消え
立ったまま、大きな音を立てて後ろへ倒れた
リックの胸には、刃で何度も切り裂かれたような傷が刻まれている
それを見届けたリンも、膝から崩れ落ちた




