第四十一話 ナルVSレアル 3
ミナが、レアルを気の毒そうに見ている
「酷い……理不尽だよ」
「あのおじさん、結構強かったのに……」
「やっぱり、ナルの戦い方って性格悪いよね」
ナルは不満そうに言い返した
「なに言ってんのよ、ミナが一番理不尽じゃん」
ミナは首を振った
「そんなことないよ、私は違うよ」
「私はちゃんと戦うもん」
「ナルのは、戦わせてもくれないじゃん」
「あのおじさん、わざわざナルを気遣って、どんな攻撃するかまで教えてくれてたじゃん」
「絶対良い人でしょ」
「かわいそうだよ」
ナルは肩をすくめた
「なによ、かわいそうって、勝てばいいでしょ」
「教えてくれなんて、頼んでないわよ」
リンは倒れたレアルを見下ろしながら小さくため息をつく
「レアルにとっては、大きな挫折になりますね」
「彼は貴重な実力者です」
「必要以上に誇りまで折らないようにしてください」
「本当なら、わたくしが相手をして差し上げたかったですね」
それからナルに目線を移す
「ナルなら苦もなく勝利するだろうとは思っていました」
「だが、ここまで容赦なく一方的に倒すとは……」
「ミナであっても、なんの予備知識もなく今のナルと戦えば、勝てるとは限りませんね」
ミナも同意するように言った
「それは言えてるね、特に悪食がずるいよ」
「てか、悪食ってどんどん大きくなってない?」
ナルが答えた
「そういえば、前より全然大きくなったね」
「今なら結構広い範囲を悪食の光で覆えるよ」
ミナは不安そうに言った
「それって大丈夫なの?」
「そのうち悪食が大きくなりすぎて、また表に出てきたりしないよね?」
リンは小さく手を叩き、無理やり話を切り替えた
「さ! 城に入りましょうか」
「リック王は手強いですよ、戦いになったら大変です」
ミナはすぐにリンを追いかけるように詰め寄った
「ちょっとまってよリン、聞こえてたでしょ?」
「悪食って今後も大丈夫なの? なんか大きくなってるよ?」
リンはさらに聞こえなかったふりをした
「もうここまでやってしまいましたから」
「城壁を飛び越えて中に入ってしまいましょう」
ミナはさらに詰め寄った
「ちょっとまちなさい! なんで無視するの?」
「ひょっとして悪食って、そのうちまた出てくるの!?」
リンは観念したように、棒読みで返事をする
「どうでしょうね、わたくしにも想像がつきませんね」
「さっぱり分かりませんね、わたくしは知りませんね」
ミナはリンを指さした
「あんた目が泳いでるじゃない!」
「嘘つくんじゃないわよ!」
「知ってるなら教えなさいよ!」
リンはため息をつく
「悪食は宿主の欲望によって大きくなる……みたいな記録は読んだことがありますが」
「そうだとしても、どうしようもないじゃないですか」
「ですから、わたくしは言っているでしょう」
「ミナが恋人になって安定させた方がよいと」
「ナルがモンモンとしているから、どんどん悪食が大きくなるのでは?」
ナルが不満そうにむっとする
「なによその言い方、わたしが欲求不満みたいじゃない」
リンはきょとんとした顔をした
「ちがうんですか?」
ナルは即座に叫んだ
「違うわよ!」
そこでミナが思いついた
「ひょっとして……なんだけど」
「悪食の感情を抑え込んでいるから、大きくなっちゃってたりする?」
リンは今初めて気がついたように感心して言った
「ああ~、なるほど、そう言われてみればそうですね」
「ミナがそう言ってくれて、わたくしもほっとしました」
「最近急に大きくなっています」
「もしそうだとしたら、どこまで大きくなるんでしょうか」
「やはり、早々にミナさんには覚悟を決めて頂いて……」
遮るようにミナが言った
「絶対やだからね!」
ならばと妥協案をリンは提示する
「では、せめて、定期的に悪食に身を任せて頂いて……」
ミナは即座に答えた
「絶対、絶対やだからね!」
次の瞬間、大きな魔力が膨れ上がるのを感じ取り
三人は同じ方向を向いた
城壁の上にリック王が立っていた
ミナと同じスキル「王の血統」を持つ
王の血統は、その者の全ての能力を強化する
最強のA級魔法使い
それがリックのもう一つの顔だった




