第四十一話 ナルVSレアル 1
三人は城へ行き、リックと会うために組合の外に出てきた
リンはふと足を止めた
それから、どこか楽しそうに二人を振り返る
「もう、お上品にするのはやめにしましょう」
「魔女の移動とは、早ければいいのです」
「馬車で優雅にちんたら行くなんて、元々、わたくしの性に合わないのです」
「あなたたちもわたくしの真似をしてついてきなさい」
リンはその場で少し屈んで地面を蹴った
足元で水が弾け飛び、空高くリンは舞い上がる
ナルが空を見上げて声を上げた
「うわーー! リンが飛んだよ! かっこいいー」
ミナはぽかんと口を開けたまま、リンを目で追った
「魔法で自分を吹き飛ばしたんだよ、なにあれ、凄い……」
ミナはリンの真似をして
ジャンプに合わせて足元で魔法を破裂させる
リンよりも遥かに高速でミナは空高く消えてしまった
ナルが慌てて叫んだ
「ちょっと、置いてかないでよ!」
ナルも思いっきり踏み出して足元で赤い砂を破裂させる
あっという間にナルの身体は空に押し出される
ナルは空中で声を弾ませた
「なにこれ! たのしい~!」
ナルが飛んだ先に、リンがいた
「城まで飛んでいきますよ、わたくしについてきなさい」
そう言ってリンはまた水を弾けさせて大きく前に飛び出していった
それをナルも追って飛び出す
すぐにリンに追いついてナルは言った
「なんで今まで教えてくれなかったの? 超楽しいじゃん!」
「あなた達に教えたら、どこに飛んで行ってしまうかわからないからです」
「ましてミナに教えたら、勝手になにをし始めるか分かりませんからね」
ミナが上から急降下し
高速で二人を追い抜いた
早すぎて目で追えない、まるで光が通り過ぎたようだった
すぐにミナは二人に合わせるように横について飛び始めた
「これいいね! 多分わたし、3日もあれば世界を亡ぼせちゃうかも!」
ナルが驚いて聞いた
「なにそれ! どういうこと!? なんでそんな発想がでるの?」
リンは風に髪をなびかせたまま、さらりと言った
「ミナは蘇った時、酷い荒れようでしたから」
「世界を亡ぼすって張り切ってたんですよ」
「その頃は、わたくしもこの国を滅ぼそうとしてましたから」
「利害の一致だったんですけどね」
「ナルのおかげで、わたくしたち更生しちゃいました」
「よかったですね」
ナルは二人を見比べた
「なんの話!? あなたたち危ない人だったの」
ミナは楽しそうに笑った
「実はナルって世界を救ったんだよ!」
「やさぐれた魔女からね」
「もっと胸を張りなよ!」
リンは不満そうに言い返す
「失礼ですね、わたくしは世界まで滅ぼそうなんてしていませんよ」
「それは、どっかの化け物がやろうとしていたことでしょう」
ナルは納得できない顔で声を上げた
「なんなのよ急に! 意味がわかんないわよ」
「ちゃんと説明してよ!」
ミナは笑ったまま答えた
「わたしたちは、ナルが好きだって話!」
「ナルが守りたいものなら、わたしたちも守ってあげるよ!」
リンは二人を見て、ほんの少し表情をやわらげた
「そういうことですね」
「でもね、ミナ」
「わたくしは、あなたも、ナルと同じくらいに愛おしいですよ」
「あなたたちさえ良ければ、養子にして、娘にしたいと思っています」
ミナの肩が、わずかに引いた
「えええ……リンの娘?」
ナルは視線を泳がせた
「弟子でいいよね……」
リンはすぐに畳みかける
「あら、わたくしの資産って凄いですよ?」
「10回くらいは遊んで人生終えられるくらいに貯め込んでますよ?」
ミナが呆れたように言った
「なによそれ、リンの遺産目当て~みたいな?」
ナルはむっとして言い返す
「バカにしないでよ、わたしたちそんなんでなびかないからね」
リンは楽しそうに続ける
「わたくしの養子になれば、あなた達は姉妹です」
「三人家族じゃないですか」
「そういうの、憧れませんか?」
ナルは首をかしげた
「うーん、でも今も似たようなものじゃない?」
リンはミナに向けて言った
「わたくしも、さすがに娘二人を恋人にしようなんて思いませんよ」
「ミナにナルを襲わせて笑っているなんて、二度としなくなります」
ミナは顎に指を当てたまま、ほんの少し黙った
「わたし、リンの娘になろうかな」
「いつかはナルにすごいことされそうで怖い」
「リンに守って欲しい」
ナルが不満そうに声を上げた
「なによそれ~、わたしじゃ嫌なの?」
ミナはじとっとナルを見る
「はぁ? そのセリフ、なんかおかしくない」
「ナルっていつの間にか、急におかしくなってるよね」
「なにがあったのよ」
ナルは答えた
「私はきちんと向き合うって決めたの!」
「もう後悔したくないから」
そうこうしているうちに城が間近に迫ってきた
するとリンが咄嗟に二人に言った
「面倒な人が、滞在していたようです、きますよ」
三人に向けて高速で何かが飛んできた
リンは水の盾を出して防ぐ
ミナは手で払うようにして弾き飛ばした
ナルは砂でガードする
そして、三人とも城門の前に着地した
そこには攻撃した主が立っていた
魔力省長官レアル・ジスト




