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赤さびの魔女  作者: うめやす.
3章_過去からその先へ
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第四十話 わたし達の作る未来 2

今のところは……


リンはその言葉を飲み込んだ


目の前の争いは回避できるだろう


だが、それはミナに依存し続けるということだ


いつかはミナもいなくなる


ミナが与えてくれた時間で


大人達が問題を解決しなければならない


「わたくしは少し出かけてきます」


そういって、リンは出口に向かって歩き出した


呼び止めるようにナルが声を掛ける


「リン、どこに行くの?」


「リック王に会ってきます」


「わたしたちも一緒に行くよ」


「いえ、特にナルは顔を見せない方がいいと思いますよ」


ナルは小走りにリンの近くに来た


「だったら尚更わたしも行くよ」

「あのおじさんが私を諦めないと、いつまでたってもイナクのことが心配でしょ」

「直接行って話をつけるわ」


ミナも軽い足取りでリンの所に来る


「そうだね~、さっさとイナクに告白して貰いたいし」

「リックは黙らせにいかないとね」


リンは手の指先で頭を押さえた


「言ってもついてくる気ですね……」

「心配事を増やさないでください、美容の大敵です」


ミナが明るく言った


「大丈夫、リンには小じわなんか1つもないよ~」


ナルも続いた


「そうそう、ないよね~」


リンの動きが止まり、早口で言った


「どういう意味です?」

「わたくし、小じわの話なんてしていませんよ」

「わたくしに小じわがあるのですか?」


ナルが慌てて取り繕うように言った


「え! いや、もののたとえだよ、気にしないで」


ミナも続く


「そうそう! たとえ話だよね」


リンは納得できないように二人を見る


そしてミナに視線を移して言った


「悪食の封印を解きますよ」


慌ててミナが白状した


「さっき笑ったときに小じわが出てて」

「リンもやっぱりおばさんなんだなって思ったのよ」

「普段は無いよ! ほんとにない!」


ナルが慌てて言った


「リンはおばさんじゃないよ! そんなこと思ってないから」


少し、妙な間があった


その横から


ナルがミナに声を掛けた


「ミナ、好き」


ミナは事態に気づいた


とっさに逃げようとしたが遅かった


「ちょ!」


紫の光がミナを包み


赤い砂がその体を縛りつける


ナルが飛び込むようにミナにキスをする


ミナの断末魔が響いた


「んーーー!」


リンは少し声を震わせて言った


「さきほどの内緒話も聞こえていましたからね」

「今回だけは見逃してあげたのに、もう許しません」

「おばさんと言った罰です、しばらく元には戻しませんからね」

「楽しい思い出を二人で作ってください、おばさんが見守ってあげますから」


リンは腕を組んで、ここぞとばかりに本音を言う


「そもそも、ナルが男なんかにかまけているのも、本当は気に食わないのです」

「もう、あなた達で恋人になりなさい。三人で楽しく暮らしましょう」


ナルがミナの服に手をかけた


リンはそれを薄く笑って眺めている


「まずい! リンは本気だ!」


そうミナは思った


ミナとナルの上に虹色の矢が何本も現れた


悪食の紫の光に触れている部分はポロポロと結晶化して紫の石が落ちていた


リンは虹色の矢をちらりと見た


「結晶の矢って何本も出せたんですね」

「1本なら試してみたい対策もありましたが……」

「……残念ですが、仕方がありませんね」

「分かりました、危ないからそんなものはしまってください」


次の瞬間、ナルがさっとミナから離れた


悪食の光と赤い砂も消える


ナルが気まずそうに言った


「ごめんね、ミナ」


ミナはすぐに怒鳴りつけた


「これで何回目よ!?」

「なんでそんなすぐに悪食に乗っ取られるのよ!」

「ちょっとは抵抗してよ!」


リンはもう隠すのも面倒になったように言った


「あなた達が気まずくなるのも嫌だから黙っていましたが」

「それは、ナルがミナを好きだからですよ」

「ですからすぐに感情が抑えられなくなるのです」

「ソラさんの時は、いきなりキスして押し倒したりはしなかったでしょう」


ミナの表情が固まった


「え?」


それからゆっくりとナルを見る


ほっぺを指でポリポリとかきながらナルが言った


「えへへ、実はそうかも」


ミナは一瞬、言葉を失った


それから、ようやく意味を理解したように


声を裏返した


「なに言ってんのよ!? あんたはイナクが好きなんでしょ?」

「なんでわたしになってんのよ!」


ナルは少し照れたように笑う


「うん、イナクが好きだけど、ミナもちょっと好きだな~って」


ミナは頭を抱えるようにして叫んだ


「なんなのよあんた! どっちもどっちも行けるの!?」

「なんでそんなことになってんのよ!」


リンが口を挟んだ


「なんで、なんでって、好きになるのに理由なんかあるわけないじゃないですか」

「性別なんて些末なことです。ミナも真剣に考えてください」

「あなたがその気なら、わたくしは応援しますよ」

「ナルが男のものになるなんて吐き気がします」

「むしろあなたが率先して引き受けなさい、それが一番よろしい」


ミナがリンに勢いよく指をさす


「よろしくないわよ!」

「あんたろくなこと考えてないわね!」


ナルが小さく手を上げて言った


「あ、でもわたし、イナクの方が好きだよ」

「ミナも好きだけど、どっちかと言えば友達だもん」

「それに、男の子の方がいい」


ミナは安堵した表情でナルの肩を掴む


「よかった! 正気に戻ったのね! ナル」


それからすぐにナルの発言が引っかかった


「ん? どっちかと言えば?」


リンは顎に手を置き、考え込む


「そうですか、つまり、ミナの体を男にしてしまえば……」


ミナの背中に冷たいものが走った気がした


「な……なにいってんのよ……」


リンは真面目な顔で続けた


「元々ミナは魔法で作った体なのですから」

「頑張れば、男性器くらいは付けられるのでは? と思いまして」


予想もしなかったリンの返事に


ミナの顔から血の気が引いた


「そんなものわたしに付けたら」

「あんたもろとも、この国を消し去ってやるからね!」

「私は女なの! 100%女なの!」

「絶対にやらないでよ!」


すると、リンはさっと話を切り替えた


「さて、冗談もほどほどにしてそろそろ行きましょうか」

「もう三人で行きましょう、色々と、どうでもいい気がしてきました」


ミナはまだ疑うようにリンを見た


「どっからどこまでが冗談なのか気になるわね」


ナルは明るく笑った


「私たちなら大丈夫だよ、なんとかなるって」


リンは少しだけ笑う


「気休めに聞こえないから、おかしいですね」


三人は歩き出した


リック王を説得して


戦争を起こさないために




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