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赤さびの魔女  作者: うめやす.
3章_過去からその先へ
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第三十九話 週刊イナクニュース 2

ナルは不満そうに二人を見た


「なによそのリアクション、もっと驚いてよ」


ミナは面倒そうに手をひらひら振った


「いや、知ってたし」


リンも当然のように言った


「わたくしも、かなり前から知っていましたよ」


ナルは頬をふくらませた


「ええーー、知ってたなら教えてよ」


ミナは呆れたように頬杖をつき直す


「教えろって言われてもねぇ……あんたのことでしょ」


リンは少し残念そうに肩を落とした


「そういうのは自分で気づく方がよいでしょう」

「それに、まだしばらくはイナクさん情報でナルのリアクションを楽しみたかったというのに」

「ほんとミナはせっかちですね」


ミナは納得いかない顔でリンを見た


「え、なんでわたしが怒られてるの」

「リンってやっぱり趣味と性格が悪いよね」


リンは笑顔のまま、目だけを細める


「あなたは口が悪いですね、黙らせますよ」


ミナも負けじと身を乗り出した


「黙らせてみなよ」


ナルは慌てて二人の間に入る


「ちょっと、わたしのことで喧嘩しないでよ」


ミナが言った


「もうこんな回りくどいことやめて、イナクに手紙でもなんでも書いて告白しちゃってよ」

「リックがどうこう言うなら、わたしが黙らせてあげてもいいよ」


ナルの肩が、ぴたりと止まった


「告白……?」


ミナは言い聞かせる


「そうだよ、ちゃんと恋人になっちゃえば、変な心配しなくて良いでしょ」


ナルは目を逸らし


モジモジとし始めた


「いや……それはちょっと……」

「まだ早いっていうか……」


ミナは呆れたように言った


「はあ? なによそれ、遅いくらいでしょ?」

「さっさとしなよ」

「あんたわたしに対しては鬼のように手が早かったじゃん」


ナルはモジモジしながら返す


「あれはわたしだけじゃないっていうか……」

「まだちょっと怖いっていうか……ちがうかもっていうか……」

「ミナなら、後からやっぱ違うって分かっても、謝れば許してくれそうだった……って言うか……」

「全然怖くなかったって言うか……」


ミナが目を見開く


「なによそれ! 今とんでもないこと言わなかった!?」


リンが口をはさんだ


「まあまあ、恋心に気づいたと言っても、つい先ほどのことですから」

「物怖じしても仕方がありませんよ」

「ただ、イナクさんと距離を縮めるにしても、しばらく遠慮してください」


そう言って、リンは立ち上がった


部屋の隅から金属の箱を持って戻ってくる


箱のふたは開いており


中には手紙がたくさん入っていた


ナルが聞いた


「なにこれ?」


「リック王からのラブレターです」

「毎日1通、多い日は3通届いています」


ミナが顔をしかめて言った


「うえ、なにそれ、超絶気持ち悪いわね」


「最近ではわたくし宛に、脅迫めいた手紙まで届くようになりました」


ナルがミナに寄り添うように隠れる


「あの人やだ……なんかわたしを見る目が怖いんだもん」


ミナが呆れたように言う


「なんでそんなにナルに執着してんのよ、あのおじさん」

「ちょっと会っただけじゃない」


リンが言った


「大まかに男には2種類います」

「一つは、手に入ると執着する者」

「一つは、手に入るまで執着する者」


「リック王は二つ目のタイプですね、俗物です」


ミナが少し後ずさって、汚いものでも払いのけるように手を振った


「うわ、また出た。リンのやさぐれ説法」

「そういうの、うつったら嫌だからやめてほしいんですけど」


リンはちょうどいい機会とばかりに話し出す


「前から言おうと思っていましたが、ミナはピュアすぎますよ」

「あなたのような女こそ、口先と見た目だけの男に引っかかるのです」

「おとぎ話のような本を読むのはおやめなさい」


そう言って、リンは一冊の本を掲げた


ピンクと水色の表紙には


運命の王子様というタイトルが書いてある


ミナが声を裏返した


「あ! それは! ベッドの下に隠してたのに!」


「あなた、最近この手の本ばかり読んでいますね?」

「書庫係のニーナから情報を仕入れているそうじゃありませんか」

「こんなものを読んでいたら、夢ばかりみて騙されますよ」

「リックとルッツを見たでしょう? あれが王子様の現実です」

「リックは二つ目のタイプ、ルッツは一つ目のタイプ」

「ミナはまだマシなルッツタイプを見抜けるようにしなさい」


ナルがきょとんとして聞いた


「え? じゃイナクは? イナクはそんなんじゃないと思うよ」


「イナクさんは囚人タイプです」

「執着うんぬん関係なく、そこに居続けます」


「なにそれ? 囚人とか意味わかんない」


ナルの反応を無視して


リンはミナに言った


「ミナ、お手数ですが火を貸してもらえますか?」

そう言って、リンはリック王の手紙の束へ目を向けた


ミナも手紙を見て、小さくうなずく


「うん、分かった」


机の上にムギが現れた


ムギは手紙に息を噴きかける


次の瞬間、金属の箱の中で


手紙が勢いよく燃え上がった


「おじさんの恋文はよく燃えるわね」


ミナがそう言うと


箱の中で、リックの手紙が黒く崩れていった


その火を見つめたまま


リンの表情から、先ほどまでの笑みが消える


「二人に話しておかなければならないことがあります」


ナルとミナは、赤い炎越しにリンを見た


「大切な話です」


いつもと違うリンの雰囲気に


二人は少し身構える


そして、リンははっきりと言った


「わたくしたちの国は、このままいけば戦争に巻き込まれます」


それを聞いて


二人の体がこわばった




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