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赤さびの魔女  作者: うめやす.
3章_過去からその先へ
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第三十三話 リンとの暮らし 2

その時、キッチンの方から足音が戻ってきた


リンが何かを持って立っている


その顔は、さっきより少し怖かった


リンは空になった飴玉の箱を、ナルの前に差し出した


「ナル、なんですかこれは?」


ナルの肩が、びくっと跳ねた


反射的に声が出た


「あ! それは!」


「飴玉はわたくしが預かって管理すると言いましたよね」

「1日5個までです、いったいどこからこんなものが出てきたんですか」

「あなたはここに住み始めてから一歩も組合を出ていないはず」


ナルはぎくしゃくしながら言った


「えっと……たまたま落ちてたんだよ」


するとミナが横から、にやっと笑った


「わたし知ってるよ、ナルの隠し場所」


ナルは勢いよくミナを振り返った


「ちょっと! ミナなに言ってるのよ」


ミナは肩をすくめて、さっきのナルの言葉を返す


「ナルのためになるんでしょ~」


その言葉に、リンの目がすっと細くなった


リンはすぐにミナへ向き直る


「ミナ、ナルがどこに隠しているのか、わたくしにも教えてください」


ミナは楽しそうに、ナルの部屋の方を指さした


「ナルの部屋の窓の外だよ」

「赤い砂で箱みたいなの作って、風船みたいに浮かべて隠してるよ~」


「なんですって」


リンはパタパタとナルの部屋に急ぐ


そして部屋に入ってすぐに窓を開けて外を見回した


そこには四角くなった赤い砂が四つ浮かんでいた


箱のように形を保った赤い砂が


窓の外で風船のように揺れている


リンは窓の外を見たまま、低い声で呟いた


「建物の外ならわたくしの監視外……小賢しいですね」


リンが手を伸ばすと、すぐに水の刃が四つ現れた


赤い砂の箱が切り裂かれ


中に隠していた飴玉が、ばらばらと落ちていく


ナルは窓に飛びついた


「あああーー、私の飴玉がーーー!」


その声は、まるで大切な宝物を失った子供のようだった


リンは窓にしがみつくナルの背中を見下ろした


「1日5個までです!」

「もう、他に隠しているものはありませんね?」


ナルはゆっくり振り返る


「あ、あるわけないじゃん」


ナルの目が、ほんの少しだけ横に流れた


リンはそれを見逃さなかった


静かに追及するようにナルの名前を呼んだ


「……ナル」


ナルの背中に、嫌な汗が浮かぶ


リンはゆっくり部屋を見回した


その視線が、壁の一面で止まる


「この部屋、赤い壁なんかありましたか?」


ナルの肩が、小さく跳ねた


部屋の一面だけが、赤くなっていた


言われてみれば、最初からそうだったようにも見える


けれど、リンの目はごまかせなかった


リンは無言で手を上げた


その指先から、爪のような水が伸びる


腕を振り抜くと、赤い壁が裂けた


その壁はナルの魔法の砂だった


リンは裂けた壁の中を見て、しばらく言葉を失った


壁一面に、飴玉の箱がぎっしり詰まっている


「なんですかこれは……いったいどこからこんなに手に入れたのです」


ナルは目を逸らし、乾いた笑いを浮かべた


「あはは、偶然落ちてた~……んだよ」


リンはゆっくりとナルを見る


「そんなわけないでしょう!」

「白状しなさい、さもなければ1日5個の飴も与えませんよ!」


ナルは口を結んだまま、ぷいっと横を向いた


しばらくリンはナルを問い詰めたが


ナルは固く口を割らなかった


リンは小さく息を吐いた


「わかりました、あなたがそういうつもりならわたくしにも考えがあります」

「隠し通せると思わないことです」

「ことの真相が分かるまで飴玉は与えません!」


その後、リンは組合の職員に一人ずつ面談を行った


誰が、いつ、どこで、どの店に行き


どの箱を、誰に渡したのか


リンの捜査は無駄に本格的だった


そして三日後


ついに真相が明らかになった


飴玉を渡していたのは、書庫の管理者のニーナだった


ナルに頼まれて買ってきていたらしい


リンはニーナを連れて、ナルの前に立った


その手には、飴玉密輸事件の詳細をまとめた調査ノートが握られている


リンはそれをナルの前に突き付けた


「見つけましたよ! 手間取らせてくれましたねナル」

「もう二度と、飴玉の密輸などさせません」


ナルはその場に崩れ落ちた


「そ、そんなぁ~」


隣のニーナは、悪びれた様子もなく舌を出した


「ごめんね、ナル」


リンはニーナから視線を戻し、涼しい顔で処分を告げた


「罰として、しばらくのあいだ飴玉は1日に……」


そう言ってリンは飴玉を取り出した


三日ぶりの飴玉を見て、ナルの目が輝く


その一瞬を、リンは見逃さなかった


リンは素早く飴玉を自分の口に放り込んだ


「一個もあげません」

「一週間なしです」


口の中で飴玉を転がしながら


リンは涼しい顔でそう言った


「そんなぁ~」


ナルの悲痛な声が響いた




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