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3-11 兄妹審査

大きな座敷の前には立て看板があり、貼られた紙にこう書かれていた


第三軍女子組合宴会場


ナルが立て看板を読んで首をかしげた


「女子? ってことは女の子だけってことかな」


ミナが小声で言った


「じゃあイナクはいなそうだね、どうする? 戻る?」


ナルはまだ興味があるようだった


「一応どんな感じかだけ見ようよ、宴会場とか見る機会ないじゃん」


二人が宴会場に入ると、料理がバイキング形式で並べられていた


そこには大勢の係員が立っていた


二人はその中に紛れるように立った


会場では、やはり大勢の女性達が盛り上がっていた


ただ、会場の一番奥には台座があって、その上には大きな垂れ幕が掛かっている


そこには“英雄イナクの勝利を祝う会”と書いてあった


ナルがミナに耳打ちした


「ね! あれ、イナクって書いてあるよ」


ミナも垂れ幕を見上げた


「うん、なんか主役みたいな感じだよね」


垂れ幕の下には、銀色の長い髪をした男の姿があった


第三軍長官、ノア・グレイだ


そしてその横にはイナクの姿があった


だが、イナクの周りには人影がいくつもあった


ナルは二段ほど低くなった声で言った


「ちょっと……これ……どういうこと」


イナクの両隣には女性が座り、その体を寄せていた


それだけでなく、イナクの肩にもたれかかる女性までいた


ミナが驚きながら言った


「なんか……イナクが女まみれなんですけど」

「彼女ってレベルじゃなくない?」

「ハーレム作ってるよね?」


ミナの言葉を聞いて、ナルがピクリと反応する


ナルは少し震えた声で言った


「なによあれ」

「わたしのこと好きって言ってたくせに」

「もう他の女に行ってるの?」

「これは裏切りよ!」


ミナがまた驚いた顔をする


「それをナルが言うのはどうかと思うよ?」

「それって1年以上も前の話だし。ナルの方が振ったんだし」

「ナルこそ、何度も他に行ってたじゃん」


ナルが早口に言った


「わたしは一度もそんなことないもん!」

「あれは悪食のせいだから!」

「わたしはまだ初恋もしてないから!」

「全部ノーカンよ!」


「え! そんなかんじ?」

「ソラも? あんなに色々あったのに?」


ナルは即答した


「そうだよ!」


「カウントくらいしなよ」


「やだよ!」


ミナは少し呆気にとられた顔をする


「裏切りって……ナルは別にイナクの彼女じゃないでしょ?」


ナルは語尾を強めて言った


「わたしはイナクの家族だよ!」

「お付き合いするなら、まずはわたしたちに挨拶でしょ!」

「誰よあの子達、知らないわ!」

「家族に対する裏切りよ!」

「わたしたちの尊厳を踏みにじってるわ!」


「はぁ? 尊厳?」


これは言ってもだめだ……とミナは思った


それから、ミナは改めてイナクを見た


「でも、たしかに……イナクが彼女を作るのはいいけど、3人はやりすぎね」

「さすがに家族として見逃せないわ。堕落よ」


ナルがはっきりとした口調で言った


「ねえ、あそこに魔法撃ち込んで逃げない?」


「はあ? 何考えてんのよ!」

「誰か死んだらどうするの!?」


「死なないくらいに撃てばいいんでしょ!」


「いいわけないでしょ!」

「イナクだっているんだよ?」


「別に良くない?」


「ちょっと落ち着いてよ、誤解かもしれないし」

「なんでそんなに怒るのよ」


「なんかむかつくんだから仕方ないでしょ」


するとノアが立ち上がり、通る声で言った


「我が第三軍に勝利をもたらした英雄イナクをたたえよう」


会場の女性達が黄色い声を上げた


「今宵の余興だ!」

「イナクに気に入られたいものは前に出ろ! そして戦え」

「最後まで勝ち抜いた者には、今夜イナクと同室になる権利を与える」


イナクがビクリとしてノアを見た


「イナクは不利な戦場に一人で立ち」

「我が第三軍に念願の勝利と名誉を与えた」

「お前らの中に、イナクを慰め、喜ばせようという者はいないか!?」


するとイナクにしがみ付いていた3人の女が離れ、前に歩み出た


ノアはそれを見て高らかに言った


「我が軍が誇る女隊長三名が名乗りを上げた」

「他にはいないか!?」


ミナがナルに耳打ちする


「なんか凄いことが始まったね、イナクを取り合う感じ?」


するとナルは返事をせずに歩き出した


「え!? ちょっとナル?」


ミナの制止を無視し、そのまま3人の隊長の前まで歩み寄る


そのうちの一人がナルを見た


長く赤い髪で、日に焼けた筋肉質な女だった


「ん? なんだい、あんたは」


もう一人の女が、ナルの前に立ちはだかる


短い黄色い髪に、引き締まった細身の体


童顔だが、目つきは鋭かった


「ちょっと、邪魔よ。あっち行きなさい」


最後の一人が、軽い足取りで横に回り込む


緑色のショートヘアーに、小柄で可愛らしい顔立ち


いたずらっぽく笑いながら言った


「なにか答えなさい。邪魔よ、あなた」


ナルは三人を一人ずつ値踏みするように見てから言った


「あなた達はイナクに相応しいのかしら?」

「少し試してあげようと思ってさ」

「戦って誘惑する権利を勝ち取るなんて、見苦しくて見ていられないわ」


周囲の笑い声が遠のいた


ナルは冷めた目で三人を見渡し、さらに言った


「そんなものでイナクを取り合おうというのなら」

「わたしを倒してみなさい」

「そうしたら、少しは認めてあげる」


黄色い髪の女が言った


「認める……なにを言ってるの?」

「あなた、イナクの何?」


そしてナルに掴みかかろうとする


赤髪の女がそれを腕で遮りながら言った


「ラミル、今日はイナクのお祝いだよ」


そう言われて、ラミルは怒りをこらえるように踏みとどまった


さらに赤髪の女がナルに言った


「なにあんた? 冗談ではすまなくなるよ?」

「あんたさ、私たちが誰なのか分かって喧嘩売ってる?」

「私たち、100人隊長だよ?」

「今すぐ謝罪して消えないと、許してあげないよ」


会場中の視線がナルに集まる


イナクも驚いた顔で見ていた


そしてナルは言った

「100人隊長? そうなんだ」

「そんなことが、いま関係あるの?」

「わたしはあなた達に話してるのよ。一人じゃ怖いの?」

「だったら、ご自慢の部下も全員連れてかかってきなよ」

「わたしは一人で十分よ」


会場に大きなどよめきが広がる


敵意を込めた怒声が上がりはじめた


ミナが頭を抱える


「ちょっと! なにやってんの!?」


赤髪の女が言った


「あ~あ、うちは血の気が荒いのが多いからね。もう無事じゃ済まないよ、あんた」


ナルは答えた


「好きにすればいいじゃない」

「わたしも、好きにさせて貰うわ」

「はやくかかってきなよ」

「それとも、あなた達のイナクへの気持ちなんて、そんなものなの?」


次の瞬間、ラミルがナルに殴りかかった


一瞬のうちに間合いを詰め、ナルの顔面に向けて拳を放つ


ナルはそれを払いのけるように左腕を振った


次の瞬間、赤い砂が舞い、ラミルは弾き飛ばされて壁に激突した


赤髪の女が言った


「魔法使い!?」


緑髪の女が叫んだ


「総員、戦闘よ!」


会場中の女兵士たちが怒声を上げながら立ち上がり、ナルへ殺気を向けた


ナルはひるまずに言った


「仕掛けてくるなら、覚悟してかかってきなさい!」




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