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赤さびの魔女【ナル・ラピスクロニクル】  作者: うめやす.
2章_魔女の姉妹弟子
19/31

第十八話 二人のラピス

今までも

これからも

「ひいいい、苦しいぃ~」

ミナの悲鳴が上がる


「じっとしていてくださいませ、すぐに終わりますから」

メイド服を着た女性が3人掛かりでミナにコルセットを着せていた


「なにこれ!こんなのいるの?」


「ドレスを着るんですから、まずはコルセットを身に着けて頂かないと」


「なんかこれ小さくない?こんなの入るわけないじゃん」


「締め付ければ入ります!」


「なんで締めるの!?無理だって!」


その横でナルが平然とコルセットを身に着け、赤いドレスを着ていた

「はやく着ちゃいなよ~、おおげさなんだってミナは」


「なんでナルは平気なの!?」


「ん~?そうだな~」


顎に人差し指を置いて少し考えてからナルは言った

「ふとってないから?」


「ナルは痩せすぎなだけでしょ!ガリガリじゃん」


「そうだよね~、押さえつけるお肉がなくて残念だわ」


「むかつくんですけど!」


二人は王宮のパーティーに参加するため組合で準備をしている

どうやら城ではドレスが正装らしく、二人は身支度を整えていた


しばらく格闘した後に、ミナも白いドレスを身にまとう

ナルは赤いドレスだった


「へ~、綺麗じゃんミナ、やっぱ素材がいいよね~」


「なにそれ、いやみ?」

「ナルの方が似合ってるよ、それより今日は気を付けてよね」


「なにをよ」


「美味しい物食べさせられて、餌付けされないように」


「またそういうこという」

「食べ物くらいでどうこうなるわけないでしょ」


身支度を整え組合の外に出ると馬車の前でドレス姿のリンが待っていた

紫のドレスを着ている


ナルからため息が出た

「きれい…」


「ほんとだね、大人の女性って感じ…あのリンなのに…」

ミナも関心したように言った


二人が近づくとリンが声をかける

「お二人とも可愛らしい。良く似合っていますよ」


ミナが小さく苦笑いを浮かべる

「リンに言われちゃうと、ちょっと気まずいわね」


ナルが残念そうに言った

「リンって…もったいないよね…」


「変なことを言わないでください」

「さぁ、行きましょう」


そう言ってリンは馬車に乗り込む

二人はそれに続いた


馬車が動き出すと、リンがすぐに言った

「二人とも、念のため確認します」

「この町の周辺では、強い魔力は常に探知されている」

「特にミナ、あなたの異常な魔力値は国の脅威と見なされています」

「それを白い脅威と呼び、一年前にわたくしとあなた達で退けたことになっています」


ナルが言った

「うん、だからわたし達ってちょっと有名人なんだよね」


「とくにミナ、あなたは絶対に魔力を使わないでください」

「マリーの時のように、気づく者もいるでしょう」


ミナはすこし面倒そうに返した

「はーい。気を付けるよ」


馬車に揺られてほどなくして城の前に着く

つり橋を渡り、大きな城壁をくぐる


ナルの両手がきゅっと握られた


ここに来るのは二度目だった

前にソラと一緒に配管の仕事で入ったことがある


この城の地下には、魔力を吸われ続けるドラゴンがいた


ナルは思い出さないように、小さく息を吐いた


馬車は城の門の前で止まり、リンと一緒に馬車を降りる


降りてすぐに男が三人を迎えた

その男をみてナルは少し身をこわばらせる


紺色の綺麗な身なりをしている中年の男だった

よく通る声で言った


「リン・セピア、ミナ、ナル、よくぞお越しいただきました」


男は手を差し出しリンも自分の手の甲を差し出す

リンの手の甲に男は軽く口づけをする


「ミナ、ナル、ご挨拶を」


そう言われて二人は練習したお辞儀を実践する

スカートを両手でもって広げ、少しかがんで小さく礼をする


「ミナです、ごきげんよう」

「ナルです、ごきげんよう」


二人は内心背中がかゆくなるが

このようにだけ返すようにと言われていた


「魔力省長官レアル・ジストです。本日は陛下の催しを取り仕切っております」

「お二人にご参加いただき光栄です。是非楽しんでください」


レアルは目だけを動かしてナルを見た

ナルはレアルを嫌っているのが顔に出ていた


「かわりはないようだね」


その顔を見た瞬間、ナルの中に地下の光景がよみがえる

魔力を抜かれ続ける、可哀そうなドラゴン達


ナルはこの男が嫌いだった


「どうぞこちらへ、ご案内いたします」


そう言ってレアルは手を門の中へ差し出し歩き出す


「行きますよ、二人とも」


「はい、恩師様」


二人の声が重なって返事した


これも相当練習した


リンは事前に何度も言い聞かせていた

自分から離れないこと

勝手に受け答えしないこと

魔力を使わないこと


そして何より、三人の絆が揺るがないと周囲に思わせること


ミナがナルに耳打ちした


「すごい豪華だね、絨毯フカフカ」

「なんか転んじゃいそう」

「ナル、あのレアルって人知り合い?なんか変だったよ」


「前にちょっとね…嫌なやつなの」


レアルは綺麗な装飾が施された扉の前に止まり、それを内側に開けて部屋に入る

中は絢爛豪華な内装の広い部屋だった


「皆さまが集まるまで、こちらでくつろいでください」

「お茶請けも用意してあります。良ければどうぞ」


それだけ言って、レアルは扉を閉め立ち去った


ナルは椅子に勢いよくすわって背筋を伸ばした


「んー!やっぱり肩がこるね~」


「ナルは緊張感ないね。わたし緊張してるかも」


「せっかく私たち史上で一番可愛く着飾ってるんだから、気楽に行こうよ」

「なんかあったら逃げちゃえば良いじゃん」


そう言ってナルはテーブルに置いてあった綺麗な箱を開ける

中には桃色の飴が入っていた


「なにこれ、石?」


「それは飴です。口の中で舐めて食べるお菓子です」


「そうなの?」


ナルは飴を一つ取って口に入れる


「わ!桃の味がする~、美味しい!」


ミナはそんなナルを見て、あれこれ心配するのをやめた


「なんかナル見てると気が抜けるわ」


「ミナも食べなよ、美味しいよ」


ナルは飴を一つとってミナの口に入れた

ミナは口をもごもご動かしてから言った


「おいしい」


するとリンが口を開いた


「ナルの言う通りですね、気楽にしてください。挨拶をしてご飯を食べるだけです」


「なんかナルってたまに図太いところあるよね」


「なによその言い方。それに見たこともないご馳走が出るんでしょ?楽しみじゃない」


「ひょっとしてそれがあるから妙に落ち着いてるの?」


「ミナが気にしすぎなのよ。意外と気が小さいんだから」


そう言ってナルは飴をもう一つ口に入れた


「これおいしいわね、王宮でしか食べられないのかしら」


ミナが念を押すように言った


「餌付け!だけはされないでね」


「いつもそれ言うよね、バカにしないでよ」


すると部屋の扉がノックされてレアルが戻ってきた


「準備が整いました。どうぞこちらへ」


「はーい」


ナルが元気に返事した

一瞬レアルが眉をひそめたのが分かった


ミナは驚いてナルを見る

先ほどまでレアルを顔に出すほど嫌っていたのに


飴……?飴を貰ったから?


すこしウキウキしながら立ち上がるナルをみて

ミナは少し呆れたような気分になった


レアルについてふかふかの絨毯の廊下を進むと、ひときわ大きな観音開きの扉があった

レアルはそれを開けて中に入る、そこは大きなホールだった


テーブルには山のような料理が並んでいる

そこには貴族達が立食のパーティーを楽しんでいた


三人が中に入るとレアルがホールに響き渡る声で言った


「リン・セピアとその弟子ミナ、ナル」


その声に会場じゅうの目線が三人に集まる

リンは気にもしないようすで歩いている

二人も少し戸惑いながら続いた


そして、リンが歩く方向の先、椅子に座った男がいた

豪華で立派な椅子だった、装飾や宝石がちりばめられている

赤く短い髪、精悍な顔立ちで包容力を感じる眼差し


リンはその男の前まで進み、例の挨拶の礼をする

ミナとナルも急いで礼をした


「リック陛下、ご無沙汰しておりました」


「久しぶりだなリン、あいもかわらず美しい」


ナルが耳打ちした


「本物のリックだって!」

「小説のイメージそのものだね、ちょっと年取ってるけど」


「あら、リック王も女性のご機嫌を取れるようになったのですね」


リックは笑ってから言った


「本音を言っただけだよ」

「そちらが、報告にあった子達かい?」


「はい、そうです」


リンは二人に命じるように言った


「陛下に挨拶をしなさい」


二人は礼の挨拶をした


「ミナです、ごきげんよう」

「ナルです、ごきげんよう」


するとリックは立ち上がり3人の方へ歩み寄ってくる

そして声を張り上げてホール中に命じるように言った


「白い脅威を退けた英雄たちに賛美を!」


それを聞いて一斉に場内が拍手と歓声が起こる


「リンと共によくぞ民を守ってくれた」

「褒美をやろう、なにが欲しい?」


そう問われてミナとナルは戸惑う

会話はリンがするとの約束だった


「わたくしの愛弟子は修行中の身です。男性との会話を禁じています」

「褒美など不要です、魔法省への支援で既に頂いております」


「そうではない、個人としての働きに報いたいのだ」


「であれば、二人に苗字をお与え下さい」


「そんなものでいいのか?お前たちもそれでいいのか?」


ナルとミナは静かに頷いた


「わかった」


そう言ってリックは少し考えてから言った


「まずはミナ。君はサラの娘だったね」

「ならば母の苗字を継ぐといい。ミナ・ラピスと名乗れ」


ミナは小さく頷く


「それからナル、君は…」


そこでナルがさえぎるように言った

「わたしもそれがいい」


リックが少し驚いて聞き返す

「それとは?」


「わたしも、ラピスがいい」


リンが反応する

「ナル、だまりなさい」


そう言われてナルは縮こまるように下を向いた


「ミナと同じ苗字がいいのか?かまわないが…ミナもそれでいいのか?」


ミナは何度も頷いた


「ならばナル・ラピスと名乗れ」

「ミナ・ラピス、ナル・ラピスに苗字を与え、宮廷魔術師の資格を授ける!」


様子を見守っていた場内から拍手と歓声が上がる


リックは椅子前に戻り会場に聞かせるように言った

「リン・セピア、ミナ・ラピス、ナル・ラピス、今後も我が国のために力を貸してくれ」


リンは深々と頭を下げて言った

「おおせのままに」


ミナとナルも慌てて頭を下げる


「さぁ、我が自慢の料理人たちに腕を振るわせた、堪能してくれ!酒も飲みきれんほど用意した。皆への労いだ、十二分に楽しんでくれ」


そのリックの一言で会場の空気が一気に変わる。皆がおしゃべりをはじめ、皿の音があわただしくなり始めた


リンが二人に声をかける

「二人ともよくやりました。あとは食事を楽しむだけです」


ナルが嬉しそうに言った

「なんかリックって良い王様みたいだね、小説の続きみたい」


ミナも安心したように笑って言った

「マリーが言い寄られてるの想像してちょっと笑いそうになっちゃった」


「あ、それわたしも!想像しちゃうよね」


「でもリック振られて可哀そうだね、結婚とかしてるのかな?」


「それっぽい人いなかったよね?まさかまだマリーを引きずってる?」


「えー、かわいそ~」


リンが小さくため息をついた

「あなた達は想像以上に図太いようですね」


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