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赤さびの魔女  作者: うめやす.
2章_魔女の姉妹弟子
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第十二話 新たな日常 2

そこは広い図書館のようだった


入ってすぐ二階まで吹き抜けになっていて、階段が伸びている


一階にも二階にも、天井まで届く背の高い本棚がずらりと並び、びっしりと本が収められていた


ナルのお気に入りは、旅行記や紀行文、地理風俗や食文化の棚だった


その中でも、特にいまナルを夢中にさせている本があった


マリー・マリンの放浪伝記


全十巻ある長編の旅行記だった


主人公のマリーは、黄金色の長い髪をした大人の魔法使い


さまざまな国を巡って旅をしている


彼女のスキルは守護


自分や他人を守る結界を張ることができた


マリーは旅をしながら、多くの人と出会い、助け、ときには守ったりもする


ナルはそんな主人公に強く憧れていたのだ


読み終わった第七巻を本棚に戻す


そして第八巻に指をかけたところで、ナルの動きが止まった


「そういえば……」


ナルは第七巻の最後の内容を思い出していた


主人公は、いろいろな国での旅を経て、一人の男性リックと出会う


そのリックのいる国に滞在する話が続いたと思ったら、最後は告白される場面で第七巻が終わっていたのだ


「まさか……リックと結婚して、旅するのやめたりしないよね……」


ナルは、旅をするマリーの話を夢中で読んでいた


恋愛して定住するなんて、最悪の結末に感じた


夢が終わり、憧れの人が消えてしまうようなものだった


まして今のナルは、マリーが恋愛していちゃいちゃしだす話なんか絶対に読みたくなかった


「マリーなら、男なんかより旅を選んでくれるよね」


第八巻が少しだけナルの指に引かれる


「いや……でも、マリーもリックが好きっぽかったよね……あれから断ったりする?」


第八巻が少しだけ本棚に戻る


「いやいや……でもマリーは第三巻で『私は恋なんかしない』って言ってたよね」


また第八巻が少しだけ指に引かれる


一巻から七巻までの内容を頭の中で総ざらいしながら、ナルの葛藤はしばらく続いた


そして――


「今日は三冊借りてくね~」


そう言ってニーナの前に置かれたのは、マリー・マリンの放浪伝記、第八巻から第十巻までだった


「なんか書庫から出てくるの遅かったね、今日は三冊も借りるんだ」


「明日お休みなのよ。一日部屋にこもって読破するつもり」


「ナルのお気に入りだもんね、このシリーズ」


「うん。この本の主人公が、わたしの憧れなの!」


ナルは悩んだ末に、マリーを信じることにした




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