表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤さびの魔女【ナル・ラピスクロニクル】  作者: うめやす.
2章_魔女の姉妹弟子
12/31

第十一話 巣立ち

怖くはない

一人じゃないから

雲ひとつない晴れた早朝に、ナルの声が響いた

「いってきます!」


ギルドの前で、ナルはミナとソラに向かって笑顔でそう言った


ミナが少し涙をためて言う

「いってらっしゃい、気を付けてね」


ソラはバスケットをナルに差し出した

「いってらっしゃい。これ、お弁当。あとで二人で食べて」


ナルは嬉しそうにそれを受け取った

「うん、ありがとう!」


変装したくせ毛の方のミナも、適当に手を振る

「ありがとね~」


二人は組合に向けて歩き出した

姿が見えなくなるまで、ミナとソラは見送ってくれている

何度か振り返って、ナルは大きく手を振った


ふと気づくと、隣を歩くミナは元の姿に戻っていた

ナルをちらりと見て、ミナが言った

「ふんぎり、ついたっぽいじゃん」


「そうかもね」


「これからどうするの~?」


「分かんない。とりあえず、リンのところで頑張ってみようかな」


「そのうちムキムキになっちゃうね」


「え~、それは困る~」


「でもさ、組合の周りって美味しい食べ物屋さん沢山あるんだよ」


「え! そうなの?」


「しかもリンの弟子は無料なんだから! なんでも食べれるの」


「ほんとに!? リンの弟子ってそんな特典ついてたの!?」


「でも無料って変じゃない? リンが後から払ってるとか?」


「さぁ~、どうなんだろうね」


「でもこの服だって無料で貰えたよ」


「その服も弟子特典で貰ったの!?」


「うん。リンの弟子はなんでも無料なの」


「なにその好待遇! もっと先に言ってよ!」


「衣食住には困らないんだよね~。筋トレさせられるけど」


「なんで筋トレなんだろうね。魔法と関係なくない?」


「リンは筋肉が好きなだけでしょ。趣味とか?」


「なにそれ……わたしたち、リンの趣味のためにムキムキにされるの?」


「そうなる前に卒業しなきゃね~」


「ミナってさ、目標とかあるの? やりたいこととかさ」


「ん~? あるように見える~?」


「見えない」


「せいか~い」


「そういうナルはどうなの?」


「わたしはちょっとだけあるよ」


少し意外そうに、ミナが食いつく

「え? なになに?」


ナルは少し上を見上げてから言った

「わたし、生まれてからこの町しか知らないでしょ。だから違う世界を見てみたいなって」


「旅行したいみたいな?」


「そういうことかも」


「でもいいね、それ。わたしもこの町しか知らないもんな~」


「ミナも一緒に来る?」


「え? いいの?」


「いじわるしないならね」


「わたしのは愛情だよ~」


「好きな子いじめるみたいな?」

「子どもみたい。 まずはそれから卒業したら?」


「ナルだってそれ系じゃん」

「ソラのこと、からかいまくってたくせに」


「あれはソラ君も喜んでたからいいの」


「あー……そうかもね」

「一皮むいたらナルのこと超好きだったし。足で踏まれても喜びそう」


ナルが肘でミナの横腹をこずいて言う

「そういうこと言わない!」


ミナはナルを横目で見ながら言った

「ってかさ~、ナルって実は泣き虫だよね」


「またそういう……」


「ナルがいい人を見つけるまでは、わたしが傍にいてあげるよ」


「え?」


「すぐ泣いちゃうからさ、誰かついててあげないとね~」


「けっこうあんたに泣かされてる気がするんですけど」


「え~、ちがうよ~。勝手にナルが泣くんだよ~」


「わたしにも選ぶ権利くらいあるからね。でも、覚えといてあげる」


ミナが少し意外そうに、きょとんとした顔でナルを見た

「………わたし、女は恋愛対象じゃないよ?」


「あたしもよ! そういう話してなくない!?」


「冗談だって~。でも、わたし安心したな」


「なにがよ?」


「わたし、あっちのミナのおまけみたいなものだったけど。ちゃんとナルには届いてたんだな~ってさ」


「な、なによ……気持ち悪いわね」


「ナルがおねしょした時、イナクにばれないように一緒に拭いてあげたのも覚えてるよ~」

「すごい焦ってたよね~」


「変なこと覚えてんじゃないわよ!」

「それに、わたしは一回だけでしょ!?」

「ミナの方がおねしょ多かったじゃん! 手伝ってあげたでしょ」


「え~、そうだったかな~?」


大きなため息を、ナルがつく

「たしかに…あんたには腐れ縁みたいなものを感じるわ」


「腐ってないよ~。新鮮だってば」


そんな話をしているうちに、組合が見えてきた

ナルは内心、このくせ毛のミナに感謝していた

ただ、素直に態度に出す気にはなれなかった


組合に入ると、すぐにリンの声が届いた


「ナル~」


リンは走りながら、ナルたちに向けて嬉しそうに手を振っている


「なんかリン……はしゃいでない?」


「いつもと違うんですけど……ちょっと怖いね」


「ナル、ミナ、お帰りなさい」

少し息を切らして、リンは二人の前に来る


「た、ただいま」


こんな人だっけ?とナルは少し後ずさった


するとリンは、何かを探すようにきょろきょろと首を動かす

「あら?」


リンはナルの後ろを覗き込むように見る

「あら? あらら?」

「一人ですか?」


ナルが、何か文句ある? と顔に書いてあるような顔で返事する

「そうだよ」


その瞬間、ぱっとリンの顔が笑った

ナルを抱きしめ、小躍りするように言う


「そうです、魔女に男など不要です。堕落のはじまりなのです」

「ナルなら分かると信じていましたよ。共に魔道を歩みましょう」


ナルは無表情で答える

「そうだね……歩んじゃおうかなぁ、魔道」


「さあ、今日は薬学を学びますよ。魔女の薬は豊富で奥深い。覚えることが山ほどあります」


「もちろん、お茶の用意もしてありますよ」


「ほんとに! やったー」


リンはナルの背中に手を回し

導くように共に歩き出す


生涯独身、恋人不要の

魔道の道へ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ