6ー25 リンの罠
突然いなくなったリンを心配し、ナルとミナは国中を飛び回っていた
その日も二人は高速で空を駆け、リンの魔力を探している
ナルはカンカンに怒っていた
「もう! どこいったのよ! リン」
「絶対おしおきしてやるからね!」
ミナも勝手にいなくなったリンに怒っていた
「リンの魔力なら近づけばすぐに分かるんだから」
「絶対に見つけ出してやるわ」
「今度という今度は泣かせてやるんだから!」
リンがいなくなってから、すでに3日が経っていた
二人は毎日こうして国中を飛び回っている
だが、その日もリンを見つけられず、組合の自宅へ帰ってきた
二人はテラスに降り立ち、家に入る
ナルが両手を頭の後ろに回して言った
「あ~、今日もだめだったね~」
「国の南側はだいたい回ったのに」
ミナが思いついたように言う
「まさかリンって魔力消せたりする?」
「アカの魔法みたいなこと? どうなのかなぁ」
「でもさ、アルも一緒にいるはずなんでしょ」
「だったらアルの魔力は分かるんじゃないの?」
「そうだよね……」
「明日から北側を探そうよ、きっと見つかるって」
すると、ふいに懐かしい気配を感じ、二人は同時に同じ方向を見た
そこには黒い猫、リンの使い魔のクロが座っていた
口には手紙をくわえている
ミナが声を上げる
「クロだ!」
ナルが食ってかかる
「あんたのご主人様どこいんのよ!?」
クロは手紙を下に置くと、すっと消えてしまった
「ちょっと! 消えるんじゃないわよ!」
ミナが言った
「なにか置いていったよ、手紙?」
ナルはその手紙を拾い上げる
そしてすぐに中身を確認する
ミナが聞いた
「なんて書いてあるの?リンから?」
ナルは手紙をミナに差し出し、わずかに眉をひそめた
「リンの島にいるから来なさいって書いてある」
「アルを迎えに行って、戻るつもりだったって」
「アルを紹介したいから必ず二人で来いってさ」
「え? そうなの?」
ミナも手紙を読む
「それじゃ、行き違いになっただけ……ってことなの?」
「そんなわけないじゃない」
「だったらわたしたちに一言くらいあるでしょ」
「置き手紙でも良いんだから」
「でも、この字ってリンの字だよね」
「どうも怪しいわね……」
「わたしたちがここにいると困るのかしら」
「どうする?」
「島には行ってみるしかないわね」
「でも二人では行かない」
「一緒に島へ向かって、途中でわたしだけ引き返すわ」
「アカの銀紙を使えば魔力を隠して戻れる」
「ミナは思いっきり早く飛んで島を確認してきてよ」
「リンが島にいればそれでいいし、わたしも何日くらいは王都の様子を見てから島に行くわ」
「それで、もしリンがいなかったらすぐに帰ってきて」
「ミナの速さなら、そう時間は掛からないでしょ」
「うん、分かった!」
「ほんとリンって手が掛かるわね、どっちが子供よ」
「ねえねえ、リンを捕まえたらさ、お尻ぺんぺんしてやろうよ」
「いいね、悪い子にはお仕置きしなきゃね」
そう言って、二人は再びテラスへ出ると、リンの島へ向けて空へ飛び上がった
その頃、王城の地下深くには、リンとアルトの姿があった
3日のあいだ、二人はそこに身を潜めていた
そこは、捕らえられたドラゴンたちから魔力を吸い上げ、王城や王都の施設へ供給するための場所だった
施設内には、何頭ものドラゴンから吸い出された膨大な魔力が渦巻いている
さらに、貴重な魔力を外へ漏らさないため、施設全体に特殊な仕組みが施されていた
リンとアルトの魔力は、ドラゴンたちの魔力に紛れ、外から感じ取ることはできない
リンがアルトに言った
「うまくいったようです」
「ミナとナルは、王都を離れました」
アルトは目だけを動かしてリンを見た
「弟子たちは君の言うことを聞かないのかい?」
「あの子たちはこのようなことには協力しないでしょう」
「ミナ……あれは敵にしたくない」
「洗脳できないのか?」
リンが少し驚いた表情をしてアルトを見た
「できません」
「君が飼いならせるならよし」
「もしもそれが無理なら殺すしかなさそうだね」
「リンが相手ならきっと油断するし、二人なら倒せるよ」
リンは返事をしなかった
それを見てアルトはリンに歩み寄る
そして優しく抱きしめた
「俺には君しかいない」
「君だけは僕のために変わらないでいてくれた」
「誰が相手でも、僕の味方でいてくれるよね」
リンは目を伏せて答えた
「はい」
アルトが出口に向かって歩き出した
リンはアルトの後ろについて歩く
二人は王城の階段を上り、王の間へ入る
ルッツはマリーを呼び戻し、襲撃に備えていた
そこにはルッツとマリーが待ち構えている
光の鎖が広がり、マリーの守護の青い光がそれを強化している
アルトがルッツに声をかけた
「やあルッツ、立派になったね」
「これはどういうお出迎えかな?」
「僕を覚えていないのかい?」
ルッツの顔が歪んだ
「アルト兄さま……ではないだろう」
「お前の魔力は兄さまのものとは違う」
「リン! おまえも分かっているだろう!?」
アルトは光の剣を構えた
その瞬間、ルッツとマリーの目が見開かれた
「な、なんだ!? その魔力量」
「まずいよルッツ、逃げるよ!」
光の剣を手にして、アルトはルッツに歩み寄る
「ルッツ、お兄ちゃんは悲しいよ」
「せっかく再会できたのに、おまえを殺さなきゃいけないなんてね」
ルッツの光の鎖がアルトへ襲いかかった
鎖はマリーの守護の青い光をまとっている
アルトはそれを迎え撃つように光の剣を振った
衝突するような鋭い音が響く
次の瞬間、ルッツの光の鎖は両断されていた
それを見てルッツとマリーの表情が曇る
「貧弱な鎖だ、おまえにはがっかりだよルッツ」
「せめて楽に死なせてやる、首を差し出しなさい」
マリーが叫ぶように言った
「ルッツ! 三本にして! 集中させるよ!」
ルッツがすぐに答える
「分かった」
辺りに舞っていた鎖は消え、3本だけが残った
そして鎖の輝きはさらに強くなり、それをまとう守護の青い光も強くなる
アルトがルッツに向けて飛び込み、切りかかった
ルッツは3本の鎖でそれを迎え撃つ
アルトは鎖をまた両断しようと剣を振る
鎖と衝突して轟音が鳴り響いた
今度は鎖が両断されず、アルトの剣と押し合うようにして止まった
アルトは目を見開いた
アルトは光の剣をさらに強く輝かせ、高速の連撃を繰り出す
ルッツは3本の鎖でそれを迎え撃つ
光の剣と鎖は拮抗し、激しく弾き合い続ける
やがてアルトは弾き飛ばされ、リンの前に着地した
アルトはマリーへ目を向け、小さく呟いた
「使える女を持っているな」
アルトがリンに向けて叫ぶ
「リン! なにをしている!」
「おまえも戦え!」
リンはアルトの声を遮るように言った
「待って下さい」
アルトの目に、一瞬冷たい光が宿った
すぐに気を取り直したように表情を整え、リンの方へ振り返る
「どうかしたのかい? リン」
リンは静かにアルトを見た
「はい、もうそろそろです」




