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6ー24 リンの反逆

リンは王城へ向けて、夜空を駆けた


やがて、王城が見えてくる


陽はまだ昇っておらず、東の空が薄く白み始めていた


リンは王城の近くまで来ると、空中で静止した


すると、王城の窓辺にルッツの姿が見えた


リンはルッツに向かって手を振る


ルッツは一瞬戸惑ったあと、こちらへ来るように手招きした


リンはそれに従い、王城のテラスへ降り立った


すぐにルッツがテラスへ出てくる


リンが言った


「おはよう、ルッツ」

「朝早くにお邪魔しますね」


ルッツはまだ寝間着のままだった


リンの魔力が近づいてくるのを感じ、驚いて飛び起きたのだ


「かまわないよ」

「ただ、今はマリーが留守でね」

「あなたのような美しい女性に突然訪ねてこられては、あらぬ誤解を招きそうで困るな」


リンは薄く笑った


「あら、それはごめんなさいね」


リンの様子に違和感を覚え、ルッツは身構えた


光の鎖を呼び出そうとする


だが、その試みは遅かった


ルッツの鼻先を、黄色い蒸気が通り抜ける


それを吸い込んだ瞬間、ルッツの体は痺れ、その場にうずくまった


「な、何の真似だ、リン」


「それはこちらの台詞です」

「あなた、わたくしにアルのことを内緒にしましたね?」


その瞬間、今度は青い蒸気がルッツの鼻先を通り抜けた


ルッツの目から力が抜け、もうろうとした表情になる


「アルトはどこにいますか?」


ルッツが呟くように答えた


「城の地下4階……ゲレンの牢の隣に……」


リンはすぐに歩き出し、城の中へ入る


そして一度だけルッツを振り返り、冷たい視線を向けた


リンの周囲には、赤い蒸気が揺らめいている


しかし、リンはそれをルッツに吸わせることなく、城の奥へと進んでいった


途中で何人かの兵士に出会ったが、すぐに黄色い蒸気で無力化した


階段を降り、城の地下4階へ向かう


そこには牢屋が並んでいた


リンはすぐにゲレンを見つける


ゲレンは何かを訴えようと口を動かしていたが、うめき声にしかならない


リンはすぐに気づいた


ゲレンには舌がなかった


そして、隣の牢屋へ目を移す


そこにいた


ずっと想い続けてきた人が


アルト……


間違いない


その人だった


リンは胸を押さえ、息を詰まらせるように言った


「ああ……やはり、あなたなのですね」


リンが放った水の刃が、アルトとゲレンの牢を塞ぐ鉄格子を切り裂いた


そして、ゲレンの鼻先を緑の蒸気が通り抜ける


ゲレンの目から力が抜け、意識がぼんやりと霞んでいく


「アルトを操り、わたくしについてきなさい」


リンが命令すると、ゲレンは従った


ゲレンに操られたアルトも立ち上がり、リンのあとをついてくる


リンは水の魔法で二人の体を包み、そのまま王城を飛び出した


その朝、王城から3つの影が飛び去った


リンが向かった先は、かつてサラが使っていた研究所だった


ここには、サラがミナを生み出し、蘇らせた設備が残っていた


研究所の床には、ゲレンが水の魔法で拘束され、倒れている


アルトは大きなガラスの筒の中に入れられていた


筒の中は液体で満たされている


「やはり、アルの魂はまだこの体にある」

「サラの研究を応用すれば、彼を蘇らせることができるはずです」


リンは魔法体を作るサラの技術を応用し、止まっていたアルトの心臓へ魔力を流し込んだ


そして、その鼓動を再び動かした


命を取り戻した肉体を、そこに残っていた魂が再び支配する


その瞬間、リンが目を見開いた


「何です、この魔力の大きさは……」

「まるで……ミナ?」


アルトの目がゆっくりと開かれた


次の瞬間、アルトはガラスの筒を内側から打ち砕き、あふれ出す液体とともに飛び出した


リンがすぐに声をかける


「アル……?」


アルトはゆっくりとリンを見た


「わたくしです」

「リンです」

「分かりますか?」


「分かる」

「分かるよ、リン」


その瞬間、リンはアルトに向かって駆け出した


あまりの喜びに、泣きながら笑っている


そして、アルトの胸へ飛び込んだ


「よかった……あなたなのですね」

「わたくしの知っている、あなたなのですよね?」


リンは一度、わずかに言葉を詰まらせる

そして自分に言い聞かせるように呟いた


「戻ってきてくれたのです」

「そう……あなたは、帰ってきてくれたのです」


アルトの片手が、リンの首筋へゆっくりと伸びる


だが、その指先が触れる寸前で止まった


ほんの一瞬、アルトの目に冷たい光が宿る


しかし、次の瞬間には、何事もなかったようにリンの背中へ手を回し、優しく抱き寄せた


そして、ゲレンへ目を向ける


「ゲレンに操られていた時の記憶もある」

「ずいぶんと時間が経ったようだね」


「はい」

「もう17年も経ったのです」


「17年?」


アルトはリンの両肩をつかみ、少しだけ体を離した


「リンは変わっていないように見えるけど」


リンは胸元で両手を重ね、祈るようにアルトを見上げた


「わたくしは、あの時のままです」

「ずっとあなたを、変わらずに待ち続けていました」

「見た目も、心も……」


アルトはそんなリンをしばらく見つめた


それから片手を上げ、リンの頬を伝う涙を親指で優しく拭った


そして、胸元で重ねられたリンの両手をそっと包み込む


「僕のために待っていてくれたんだね」

「苦労しただろう」

「ありがとう」


アルトは穏やかに微笑み、もう一度リンを抱きしめた


それから、ゲレンへ冷たい視線を向ける


ゲレンは拘束されたまま、恐怖に顔をこわばらせた


次の瞬間、アルトの右手に光の剣が現れた


光の剣がゲレンの体を切り裂く


鈍い音が研究所に響き、拘束されたゲレンの体から力が抜けた


驚いたリンが、そちらを見ようとする


しかし、アルトに強く抱き寄せられ、見ることはできなかった


「リン、この国の王は僕だ」

「まずはルッツに会う」

「戦いになるかもしれない」

「協力してくれるね」


リンはアルトの胸の中で、そっと目を閉じた


「はい」


その声とともに、拭われたばかりの頬を、涙が一筋伝った


リンの返事を聞くと、アルトの口元に歪んだ笑みが浮かんだ





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