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6ー23 変わらないもの

リンが走り去っていく後ろ姿を見ながら、ミナが言った


「わたしたち、リンのことを誤解してたのかも」


ナルが答える


「うん」

「リンって、か~わいい~」


左の頬を赤くしたレアルが言う


「ナル、あまり茶化さないでくれ」

「私は、リンとの距離がどんどん遠のいていくような気がしているよ」


「え! そうなの!?」

「それはごめん、レアル」


「まあ、いいさ」

「もとより、期待などしてはいけないのだ」

「私はね、アルトへの想いを貫こうとするリンも好きなのだよ」


ナルが、よく分からないという顔をする


「……何それ?」


「それも彼女の一面なのだ」

「君たちは信じないかもしれないが、彼女は誰よりも純粋な子なのだよ」

「心を閉ざすのは、自分を守るためなのだ」


レアルはナルとミナを見る


「ナル、ミナ」

「一つだけ分かってほしい」

「本当のリンは、君たちが思っているほど強くはない」

「ずっと、やせ我慢をしているような子なのだよ」


するとレアルは、ナルの頭に手を置き、優しく撫でた


「だから、反抗期もほどほどにね」

「反抗するなら、私を相手にしてくれていいよ」


ナルが不満そうな顔をする


「レアルがそんなんだから、だめなんじゃないの?」

「もっと強引にでも、リンを捕まえなよ」


レアルが小さく笑った


「ナル、君の言うことは分かるよ」

「ただね、君は今の私しか知らないだろう」


レアルは遠くを見るような目をして、続ける


「準備に20年以上もかかったのだ」

「小太りで、貧弱で、弱虫で、すぐに鼻血を出す」

「喧嘩も弱くて、すぐに泣いて、いつもリンに助けてもらっていた」

「そんな惨めな自分を変えるところから始めたのだよ」

「彼女にふさわしい男になろうと、ずっと、ずっと、私は……」


レアルは一度言葉を止めた


「だが彼女は知っているのだよ」

「私の本当の姿を」

「私が彼女の本当の姿を知っているように」

「だからね、そんなことはできないよ」

「私は、彼女自身の意志で、彼女のために変わり続けてきた私を選んでほしいのだ」

「私の人生は、ずっとそのためにあった」

「今さら、この生き方は変えられんよ」


ナルは言葉を失った


レアルがそこまで打ち明けてくれたのは、本当に自分を信頼してくれているからなのだと感じた


「そっか~……」

「変わらない気持ちのために、変わり続けた……か」

「いいね。わたしは、そっちの方がいい」

「そっちが正解であってほしい」

「頑張ってね、レアル」


「もちろんだ」

「ありがとう」


その時、ミナが迷うように口を開いた


「あの……レアル」

「あなたには聞いてほしいことがあるの」


「何かね?」


「さっき話してた、ルッツ暗殺のことなんだけど」

「実はね、ゲレンが連れてたのは、リックだけじゃなかったの」


レアルは目を細めた


「では、他に誰が?」


「アルトがいたの……」

「光の剣を持って襲ってきた」


レアルが目を見開く


「光の剣……」

「なぜ、それを知っている」


「だから……いたのよ」

「アルトが」


「なるほど、そういうことだったのか」


レアルは少し考え込む


「ミナ、教えてくれてありがとう」

「ならば、私は失敗した」

「リンにゲレンのことを伝えてしまった」

「彼女は必ず、近いうちに真実へたどり着くだろう」


そこでレアルは、何かに気づいたように顎に手を当てた


「いや……」

「おそらく、彼女はもう疑っている」

「先ほど、一瞬だけリンの様子が変わった」

「ゲレンが勝算のない暗殺を実行した理由を考えれば、アルトの存在もすでに彼女の頭に浮かんでいたのだろう」


レアルはミナを見る


「ミナ、君はルッツを助けたのだろう?」

「ならば、ルッツは君に恩があるはずだ」

「君からルッツに頼んで、私とゲレンを会わせてくれ」

「リンに悟られる前に、私がこの件を片づける」


ミナはうなずいた


「分かったよ」


しばらくして、リンはいつもの服に着替え、浜辺へ戻ってきた


その後は、何事もなかったように穏やかな時間が流れた


リンの希望でレアルも上着を羽織り、4人で食事を楽しんだ


レアルは仕事があると言い、手早く後片づけを済ませて帰っていった


3人は別荘に戻り、それぞれの寝室に入る


ナルとミナは遊び疲れ、泥のように眠ってしまった


そして、二人が寝静まった深夜


月明かりに照らされた別荘の屋根の上に、リンは立っていた


「やはり、そうでしたか」

「ミナの様子がおかしいと思っていましたよ」


ここはリンが管理する島


島の水脈には、リンの魔法が巡っている


この島の中で交わされた声も、魔力の揺らぎも、リンには届いていた


リンは、アルトの話を知ってしまった


「アル……」


リンは水の魔法を弾けさせ、空高く飛び上がった


アルトがいるであろう王城へ向かって、夜空を駆ける


想い続けた相手に、会ってしまうために






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