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6ー20 リンの別荘

レアルは笑みを収め、少し表情を改めた


「せっかく顔を合わせたのだ」

「少し話は逸れるが、リンに伝えておきたいことがある」


リンがまたレアルに顔を向ける


「今度はなんです?」


「私は第二軍の長官を兼任することになった」

「人工太陽が実用化されれば、魔力省は暇になりそうなのでね」

「引き受けたよ」


「第二軍? ゲレンはどうしたのです?」


「ルッツを暗殺しようとして、捕らえられたそうだ」


ミナがぴくりと反応した


どうやらルッツは、リンに内緒にしてくれとの約束を守ってくれたようだ


リンの目が細まった


「ルッツを暗殺……」

「ゲレン一人に、そんなことができるとも思えませんが」


「奴のスキル『傀儡』を使って、リックの遺体を操り、襲ってきたらしい」

「ルッツがリックを撃退し、ゲレンを捕らえたそうだ」


「たしかに、ゲレンのスキルなら可能でしょう」

「しかし、リックをルッツだけで撃退したのですか?」

「マリーが一緒なら分かりますが、今は第一軍の陣地にいるはず」

「ルッツのスキルなら、逃げることはたやすいでしょうが、撃退となると……」


ミナは、ルッツのスキル『光の鎖』を思い出していた


たしかにあれは防御向けで、リックの『光の衣』を打ち破って倒せるようには思えなかった


ミナが口を開いた


「傀儡で操られていたから、生前より弱かったとかじゃない?」


「可能性はありますが、ゲレンが暗殺を実行したということは、操られたリックの遺体は魔法を使えたということでしょう」

「ならば、その魂はまだ体にあるということです」

「極端に弱くなるということは、考えられないでしょう」


「へ? 魂がある?」


リンはうなずいた


「そうです」

「魔法は魂によるもの」

「使えるということは、魂はまだ遺体にとどまっているはずです」

「人は死ねば、即座に魂が消滅します」

「ただ、魔力を持つ者だけは、死してもすぐに魂が消えるわけではないのです」

「魂が消える前にゲレンの『傀儡』で操られたのなら、おそらく魂はとどまり続ける」


そこでミナは、魔法の剣で戦うアルトを思い出した


アルトのことをリンが知ったら、なんかすごく大変な騒ぎになりそうな気がした


リンは顎に手を当てて考え込んだ


少しして、レアルが聞いた


「何か、引っかかるかね?」


「ええ、おかしいですね」

「ルッツのスキル『光の鎖』は、高い防御能力を持っている」

「いかにリックといえど、それを突破するのは至難の業です」

「そして、それはリックの『光の衣』にも言える」

「ルッツがそれを突破するのも、同じく至難の業です」


レアルが同意する


「そう、リックとルッツでは、スキルの相性からいって決着がつかない」

「ゲレンの攻撃魔法など、足しにもならない」

「にもかかわらず、なぜゲレンは暗殺を実行し、失敗し、捕縛されたのか」


リンはしばらく黙り込む


ほんの一瞬、その表情が揺らいだ


レアルはわずかに眉を寄せる


ミナは横で、二人の話を聞きながら焦っていた


なになに……なんかばれてるんですけど……

どうしよう……


やがて、リンはミナへ視線を向ける


「ルッツが襲われた場所は、城しか考えられない」

「ルッツを殺すつもりなら、暗殺者は全力で魔法を使うしかない」

「つまり、ミナ」

「それほどの魔力がぶつかれば、王都にいたあなたには分かったはずです」


ミナの肩がびくりと揺れた


「なぜ隠していたのです」

「あなたが加勢した」

「これしか答えはありません」


ミナは思った


ばれちゃった……

でも、アルトのことさえ黙っておけば、大丈夫だよね


「う、うん、実はさ」

「散歩してたら、たまたまルッツが襲われてて」

「助けたんだけど、言うの忘れちゃってた~、みたいな」


リンはさらに尋ねた


「リックとゲレンだけですか?」

「他にもいたのでは?」


ミナは目を泳がせながら答える


「いない、いない、いなかったよ」

「リックとゲレンだけだった」

「2対1なら勝てると思ったんじゃない?」


「そうですか……」

「腑に落ちませんが、ミナがそう言うのなら、そうだったのでしょう」

「できれば、捕らえたゲレンからも話を聞きたいですね」


レアルが言った


「実はルッツに、ゲレンと会わせるように要請したのだ」

「だが、即座に断られたよ」

「どうも、この話はおかしいところが多くてね」


「話は分かりました」

「わたくしの手の者にも、調査させましょう」

「何か分かれば、レアルにもお教えします」


その時、ナルが声を漏らした


「うーん」


そして、ゆっくりと上半身を起こす


「あれ、わたし寝ちゃってた?」


ミナは助け船が来たとばかりに、笑顔でナルに話しかける


「おはよう! ナル!」

「体はもう大丈夫!?」


「え? あ、うん、まだ痛いけど」


「だったら、海で遊ぼうよ!」

「せっかく来たんだからさ!」

「水着も着ようよ!」


「いや、でもわたし、まだ体が痛い……」


ナルの言葉を遮るように、ミナが言った


「わたしが連れていってあげるから、浅瀬に座ってるだけでも楽しいじゃん」


「まあ、座ってるだけならいいけど」


「じゃあ決まり」

「水着に着替えようよ」


ミナは急いで、荷物から自分とナルの水着を引っ張り出す


それからナルを背負って、寝室の一つへ入っていく


リンが小さくため息をつく


「レアル、またあとでお話ししましょう」

「あの子たちのことです」

「日焼け止めの薬も塗らずに、海で遊んでしまいます」

「わたくしが、きちんと教えなければなりません」


「私も海遊びに参加してもよいのかな?」


「ええ、よいですよ」

「あなただけを、のけ者にするわけがないでしょう」


「では、私は先に行って準備を整えておく」

「君たちは、ゆっくりと来たまえ」


「また何を考えているのやら」

「あなたは何かとやりすぎます」


「性分なのでね」


レアルは先に外へ出ていった


リンも自分の荷物を持ち、ミナとナルを追うように部屋へ入る


こうして、ミナとナルは初めての海水浴へ出かけることになった






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