6ー16 ナルの反抗期
レアルはリンに答えた
「君を困らせるつもりはないよ」
「ナルとは友達になったのでね」
「その大切な家族とも仲良くなりたいだけさ」
ナルがレアルの腕に手を添えた
「うん! 友達よね」
「レアルはちゃんとわたしの話を聞いてくれるから、好きよ」
レアルの腕に置かれたナルの手を見て、リンの目元がぴくりと動いた
「ナル」
「むやみに男性へ触れてはいけません」
「え~、レアルはそういう男性じゃないよ」
「男性は男性です」
「見れば分かるでしょう」
「そうじゃなくて、男性として意識なんかしてないもん」
「レアルだって、わたしを女性だなんて意識してないわ」
「子供ではないのですから、わたくしの言っていることくらい分かるでしょう」
「もちろん分かるよ」
「わたしだって、誰彼構わずこんなことしないわよ」
ナルはリンを見て、にやりと笑った
「リンはレアルを男性として意識してるから、気になるだけでしょ」
リンの目元が、またぴくりと動く
声が一段低くなった
「何ですって……」
「わたしとレアルがどうしようと勝手でしょ」
「レアルはリンのものじゃないんだから」
「わたしたちの尊い友情を、いやらしい目で見ないでちょうだい」
リンの顔が引きつった
レアルはナルの手を取り、自分の腕からそっと離した
「すまない、リン」
「ナルに悪気はないのだ」
「私が以前、女性をエスコートする際の作法を教えたのでね」
「そういうものだと思ったのだろう」
レアルはナルへ向き直った
「ナル」
「何かの行事やパーティーであればよいが、このような日常では控えた方がいい」
「君はもう、ひとりの女性として見られる年頃だ」
「周囲が誤解してしまうだろう」
「それは、私の本意ではない」
「ふ~ん」
「まあ、レアルがそう言うならやらないわよ」
レアルの言葉には素直に従うナルを見て、リンは意外そうに目を細めた
それから黙ったまま、レアルを睨みつける
その視線を受け、レアルは苦笑しながら話題を変えるように言った
「さあ、そろそろ行こうではないか」
「私の船は快適だよ」
「色々と用意してある」
レアルが荷物を運ぼうと手を伸ばす
しかしリンは、その場から動かなかった
「ナル」
「その前に、あなたには少し話があります」
ナルは反抗的な目でリンを見た
「なによ」
「あなたは、レアルに馴れ馴れしすぎるのではありませんか?」
ナルはむっとした顔で腕を組む
「友達なんだから、普通でしょ」
「普通ではありません」
「なんですか、文通とは」
「もっと節操を持ちなさい」
「別にいいじゃない」
「リンに許可をもらわないと、友達と手紙のやり取りもできないわけ?」
「そういうことを言っているのではありません」
「じゃあ、何よ」
「リンには関係ないでしょ」
リンの表情がわずかに固まった
「ナル、どうしたというのです?」
「反抗期ですか?」
ナルはリンへ向き直った
「そうよ、反抗期よ」
「この際だから、はっきり言っておいてあげるわ」
ナルはレアルを指さした
「わたし、パパが欲しいのよね」
「レアルなんて、最適じゃない」
そして、今度はリンを指さす
「リンがわたしのママなら、レアルと結婚してよ」
「それがわたしの希望よ!」
ミナが驚いて声を上げた
「な、何それ!」
「リンがママで、レアルがパパってどういうこと!?」
「二人って、そういう関係なの!?」
「違います」
リンが即座に否定する
「ナル」
「あなたが父親という存在に憧れていることは分かりました」
「ですが、わたくしは結婚などしません」
「男など不要です」
ナルは、リンの目をまっすぐ見た
いつもの軽さが、その声から消えていた
「昔の男に、いつまでしがみついてるつもり?」
その言葉で、リンの表情からすっと感情が消えた




