表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/118

6ー14 ドッキリ

三人との食事を終えたユアンは、丁寧に挨拶をした


ミナはユアンの車椅子を押しながら、ナルとリンに言う


「ユアンを家まで送ってくるね~」


二人は返事をしなかった


代わりに、不満そうな顔をユアンへ向ける


すると慌てたようにユアンが言った


「い、いいよ、一人で帰れるから」


ミナが上機嫌で言った


「気を使わなくていいってば」

「ちゃんと認めてもらったんだから、文句言われる筋合いはないわ」

「あの二人は、わたしに依存しすぎなのよ」


リンとナルの目がピクリと動いた


リンがナルに耳打ちするふりをした


その声は大きく、ミナとユアンにも聞こえる


「あんなこと言ってますよ」

「わたくしたちが数日いないだけでわんわん泣いてたくせに」


ナルも耳打ちするふりをしながら、聞こえる声で言った


「なまいきよね~」

「ずっと子犬みたいにすりすりしてきたくせに」


ミナは慌てたように顔を赤くして逃げるようにユアンの車椅子を押す


「すぐ帰るから」


そう言ってミナは出て行った


ナルとリンはミナの背中を見送った


そしてしばらく黙ってふてくされたように食卓に座っている


ナルが呟いた


「おもしろくないわね」


リンも続いた


「おもしろくないですね」


そこでナルがはっと何かを思い出す


そしてにやりと笑った


「そうだ、実は面白いこと見つけたのよ」


リンが聞き返した


「面白いこと? なんですか?」


ナルはてかてかの大きな紙を広げる


「こっれよ~」


「前に見せてくれた、使い魔の魔法で作った金属の紙ですか」

「それがどうしたんです?」


「実はこの紙さ!」


ミナはユアンを家まで送り届け、すぐに帰路についた


その途中、おみやげを買うためにケーキ屋へ寄る


「ナルはショートケーキだよね~」

「リンはモンブランが好きだよね~」

「わたしはナルと一緒がいいかな~」


ミナはケーキの入った箱を持ち、鼻歌まじりに歩いた


色々あったけど、二人はユアンを認めてくれた


それが嬉しかった


ミナは自宅へ戻った


「ただいまー」


部屋に入ると、二人の姿が見えなかった


「あれ? どこ行ったんだろ」


ミナはすぐに、キッチンや廊下、二人の部屋を見て回った


洗面所やテラスまで確認したが、二人の姿はどこにもなかった


そこでミナは気づく


いつの間にか、二人の魔力まで消えていた


普段は、この町にいれば二人がどこにいても分かる


でも、今は何も感じなかった


少しうつむきながら食卓まで戻って、お土産のケーキが入った箱を置いた


「変だな……二人ともどこに行ったんだろう」


ミナは、一人で過ごした3日間を思い出した


同じ静けさが帰ってきたように感じた


「また……お仕事……?」

「もうしないでって……お願いしたのに……」


ふいにミナの目から涙が零れ落ちる


そんなミナを、4つの目が見つめていた


部屋の隅には、コートをしまう背の高い戸棚がある


その中に、ナルとリンは隠れていた


ナルが扉の隙間からミナの姿を見て焦る


「な、泣き出しちゃったんですけど」


リンも困ったように目を細めた


「泣いちゃいましたね」


「リン、やりすぎだよ」

「どうせなら隠れちゃおうとか言うから」


「言い出しっぺはナルでしょう」

「わたくしたちの魔力が消えたらミナが驚くとか言うから」


「早く出ようよ……可哀想だよ」


「そうですね、全力で明るくミナを慰めましょう」

「恥ずかしがってはいけませんよ、全力で道化を演じるのです」

「せーので行きますよ、いいですね」


「うん」


「せーの」


勢いよく戸棚の扉が開く


二人は両手に準備しておいた銀の紙吹雪を投げながら飛び出してきた


「どっきり、だいせいこ~う」

「どっきり、だいせいこ~う」


ミナはびくっと体を震わせた


涙に濡れた目で、まじまじと二人を見る


二人とも、ナルが使い魔の魔法で作ったテカテカの紙を、体中に巻いていた


その紙が、二人の魔力を完全に隠していたのだ


二人は両手を広げたまま固まり


息をのんでミナの反応を待った


するとミナは、ゆっくりと二人から目をそらして正面を向いた


そして、三人で食べようと買ってきたケーキの箱を丁寧に開ける


次の瞬間


ミナは両手で三つのケーキをわしづかみにし


まとめて噛みつくように食べ始めた


「大嫌い! 大嫌い! 大嫌い! 大嫌い!」


ミナはものすごい勢いで3人分のケーキを食べた


その日、ナルとリンは


ミナに一度も口をきいてもらえなかった





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ