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36.お手紙内容チェック

「セデッカ伯爵邸、及びコトント村宛ですね。承りました」


 信書受付窓口に封筒と代金を差し出すと、受付の女性兵士が丁寧に受け取ってくれた。

 王国軍の一部隊が、前世でいう郵便局と宅配便の業務を担当してくれてるんだよね。遠距離を運ばなくちゃいけないし、ものによってはえらく高いものだったりすることもあるから、軍人のお仕事になるらしい。獣とか魔物とか盗賊とか出たりするし、仕方ないか。


「内容を確認の上、宛先にお送りします」

「ありがとうございます」


 頭を下げて、窓口を離れた。ちょっと離れたところで待っていてくれたエイクに合図をして、足を進める。

 内容を確認……うん、まあ検閲だね。お城から出す手紙に関しては、内容チェックが基本となっている。だってほら、いろいろ機密事項とか漏れたらまずいし。だから、手紙を入れた封筒は封をしない。検閲のあとで封をされて、先方に届けられるのが一般的になってる。

 ちなみにコトント村だと、そこらへんは省略されている。代筆屋に頼むのが当たり前なので、その代筆屋が検閲も兼ねてるらしい。そりゃまあ、手紙を書くのは自分だからなあ。


「お城からお手紙出すのって、地味に大変ですね」

「検閲ですか」

「ええ」


 なんとなく、エイクに話を振ってみる。多分彼にしても、実家に手紙出したりはしてるだろうしなあ。

 ……もと平民と、もとから貴族の人だとチェックレベルとか違うんだろうか? まあ、聞いても教えてくれないだろうし分からないだろうなあ、そんなもん。


「まあ、お城の中から出すんですから、仕方がないのは分かるんですが」

「内容チェックしてても、この前のようなことになったりしますから。あのせいで、以前より厳しくなったという噂があります」

「あら」


 うえー、マジすか。いや、怪しい内容は書いてないはずだけど。こっちは修行頑張ってますそちらはお元気ですか、くらいの内容だし。

 と、ぽつんとエイクが言葉をこぼした。


「一人、投獄されたのがいるんですよ」

「え?」


 投獄て。いきなり何だ、と思ってみたがまあ、今私と彼が話してるのは手紙がどうこうという話なわけで。


「今のところで。荷物まとめて逃走する寸前に捕まったそうです」

「手紙担当の人?」

「そうです。ま、多分そういうことなんでしょうね」

「……なるほど」


 そういうことか。ちゃんと仕事しない手紙チェック担当がいて、そいつがおそらくセイブラン家の関係者だったってことだ。

 チェック担当(そんなところ)セイブランの関係者(そんなひと)がいたら、問題がある内容でも素通りじゃないか。投獄されたってことは、率先して情報流してたとかそういうことなんだろうな。あーあ。

 未だに全員捕まえたから安心していいよ、とは言われてないんだよねえ。ということは、最低でも私とエンジェラ様はどこからか狙われてる可能性を考えたほうがいいんじゃないかと思う。

 で、それを鑑みて今後の予定が決まっているんだ、実は。


「もうちょっとしたら、実習に出ることになるみたいです」

「実習?」

「既に外に出てる他の聖女様について、集落なんかを訪ねたりするそうです」


 いきなり任務、とか言われなくてよかったよ、ホント。どういったことをするのか、ちゃんと先輩について学ぶことができるらしい。良い国だ、と思う。

 ……何で『のはける』ではあーなったんだろ。いや、フランティス殿下たぶらかして愚王にしたキャルンが悪いんだが、今私だけど。


「大丈夫なんですか、それ」

「私を餌にして、釣りたいんじゃないですかねえ」


 もちろん、エイクの危惧もわからんでもない。ただ、私としては実習はやってみたいし、どうせならセイブランの残党とか釣りだしてみたいし。どこにいるかわからないんだから、こっちから出てけばのこのこやってくるでしょうよ。

 それで出てこなければ、そこまで馬鹿じゃないかもう狩り尽くされたかどちらかということで。多分前者。


「そういうわけなんで、エイクもしっかり修行をしてくださいね」

「あ、はい。そりゃそっか」


 おい、私付き騎士、ちゃんと仕事しろ。せっかく見習いが取れてちゃんとした騎士になったんだから、がんがん手柄を上げて出世してほしいもんですよ。守られてる聖女としては。

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