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ユーカリ --6--

僕が学校を行かなくなったのは大体夏休み直前だった。理由を聞かれれば答えられずに適当に取り繕った言い訳を答えていた気がする。

今思うとあの時から精神状態の異変が始まった気がする。理由は今でも分らない。ただこの世のすべてが暗くて、太陽の光が僕の体を蝕む様に溶かして心までも壊そうとしていた。そんな気がしていた。

そんな状態で外出というのは自殺しに行くようなもので、陽の光が厚い雲で遮されたあの日に僕はまなに呼ばれて渋谷に行った記憶がある。その記憶は僕とまなの最後の関わりだったと……



「こんにちはせんぱい」

「あぁ……」

残り少ない定期を使い、重い足を引きずりながらやっとのことで恵比寿駅に着いた僕を珍しくまなが待っていた。いつもなら数十分遅れてくるのに。

「伊織は?」

「今日はいないーっ。呼んでないの」

手提げカバンといい服のセンスといい、茶色っぽい服装ばかりのまな。季節も関係なしみたいだ。僕はそんなに洋服等に詳しくないのでひらひらーとした茶色ぽいスカートに上はレースぽい白くて薄いやつの上にまた茶色ぽい上着を着ている。

あれ?髪切ったの?

「んで?」

「遊ぼ遊ぼ!」

「はぁ……」


憂鬱な僕はまなに対する反応はイマイチで互いに楽しめているのかよくわからなかった。けれど、多分僕は遊ぶためではなく……相談相手として呼ばれた気がしてきた。所々どこか別の世界を見ているまな。それは一瞬だけど僕が気がつくといつもだ。

適当に渋谷を散策してお昼に入ったファミレスで仕方なく僕は口を開いた。

「それで?伊織となにかあったか?」

「えっ?せんぱい僕の心読んだの!?」

「なんとなく」

ドリンクバーから持ってきた氷たっぷりの烏龍茶をストローでぐるぐると回す。その氷の流れをずっと彼女は見つめ始める。

「なんか、おかしくて」

「おかしい?」

「えっと、なんか私が少しでもメールとかの返事遅いと何してたの?誰かといっしょなの?って。浮気してるんだろう?何を隠している!って言ってくる……」

まなの目は信じてもらえず辛そう、ではなく、もう面倒になってとにかく離れたいという目だった。

伊織がかなりの奴とは知っていたけど、ここまで悪化していたのは予想通り。そして僕には手が付けられない程だと理解した。

「いつから?」

「二週間とかそのくらい?」

「ふーん……変なこと聞くけど、ここ最近の一緒に寝てないだろ?」

「えっ……うん。なんかちょっと……」

「多分それも原因だけど、あいつ元からちょっとな……浮気疑惑あったし」

疑惑ではない。本当だけどここは疑惑にしておいた。

僕の中では面倒な事だという感情とせっかく身を引いたのだからうまく行って欲しいと両方の気持ちがあった。が、

「とりあえずお別れさせてもらったけど……しつこくて……」

「具体的には?」

「今の住んでる部屋の玄関付近にいたり……」

「完全ストーカーだな」

僕はポケットから携帯を取り出し伊織にメールを打ってみた。何週間か連絡がないのはちょっとな不自然。ましてや別れ話となると真っ先に僕には電話が来そうだけど……

「あれ……」

「せんぱい?」

「伊織にメール届かない……電話も……使われてない」

試しに他のアプリを試してみたけれど、すべてのアカウントが消えていた。

普通に考えたらこのあとする事と言えば自殺だろうか。でも生に執着していたあいつが?分らない。けど何もできない。

「最後に会ったのは?」

「三日前かな?」

「そうか……もしまたあってしまったら、僕に連絡する様に伝えて」

「あーっ……多分無理かも」

「どうして?」

「私ちょっと早めに実家に帰るから」

「早めの避難か」


実家の福島までの交通費は流石の伊織でもないと思う。バイトをしているわけでもなく、小遣いで行ける距離でも無いとまなは予想していたらしい。

だけど、その予想はどうやら外れてしまったらしい。

僕がその話を聞いたのは夏休み明けだった。



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