表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/35

ユーカリ --2--

時間によって降りる駅を変えていた時期があった。ほんの数ヶ月程度の、気まぐれのように意味もなく変えていた。

毎日同じサイクルで過ごす事に違和感を覚えたからか、不規則に降りる駅を変えていたつもりでも実は規則性があったのか、正確には分からないけど、大体恵比寿駅で降りると伊織やまなと遭遇する事が多かった。

あの二人が付き合い始めた頃か、僕が頻繁に渋谷で降りるようになったのは。無意識で彼らの邪魔をしない様にと僕なりの配慮だったのかも。

恵比寿駅は渋谷駅とは違う賑わいがある。

渋谷が若者の街だとしたら恵比寿は大人なセレブの集まる街と雰囲気や日々の生活で感じて思った。

駅内の飲食料理店や洋菓子店を比べればすぐにその街の差に気がつくと思う。値段もそうだが売っているモノの見た目が決定的な気がする。

改札前の喫茶店には若い学生ではなく、ビシッとスーツを決めた会社員がノートパソコンやタブレットとにらめっこしている。日本人以外もポツポツ座っている。


僕が駅周辺をブラブラしていると数日前に再開したあの男が駅前の時計台の下で携帯を弄っている。誰かと待ち合わせしているのか、やけに時間を気にしている。

「伊織」

僕は後ろから伊織の肩に手を置くとビクッと体を震わせてゆっくりと振り向いた。

「えっ……先輩どうして?」

慌てて携帯をポケットに押し込むと僕の方に向いた。少し驚いていたようだ。

「伊織こそなんでここに?昨日まで福島に……」

「すぐに帰ってきたんだよ。待ち合わせってわけじゃないけど……そうか先輩か……」

「ん?」

一人で納得した伊織は歩こうかと僕を誘い、商店街の方へ歩き出した。伊織から一歩後ろに付き、彼の後を追う。

伊織の背中は長旅で疲れた感じはしなかった。むしろ元気そのもので、僕のこの疲労はなんなのだろう。

「覚えてる?まなと先輩と俺でこの辺彷徨きましたよね」

「覚えてる。どうしてか僕は二人を恋仲にしてしまったな」

「先輩には悪いと思ってる。お互いにお互いの気持ちを知っていたから……でも先輩は身を引いて俺に……」

「女の子紹介するとか言いながら結局誰も紹介してくれなかったな。それどころか女二人はべらせて、かなり切れたよ」

「でも今は……」

「どういう経緯かは知らない」

商店街を抜け、あの日通った道順を辿るように彼は道を選択している。彼の無意識かそれとも懐かしさが彼を動かしているのか、良く分からない。

「そっか……先輩はまだ……」

伊織の顔は見えない。その「まだ」の意味すら察する事が出来ず、適当に受け流す。

「先輩は覚えてる?この店で……」

「まなのサンダルを直したあれ?」

「本当に先輩は何でも出来て驚いたよ」

古びた雑貨屋はあの当時のままで、お客さんどころか店主すら店内には見えない。裏で扉の開くベルを聞いて出てくるのかもしれない。

「この辺の店はやっぱりお洒落だよな。ここがどこだか分からないけど」

「どこに行きたいとか無かっただろ。別に」

上り坂は次第に下りへと変わり、雰囲気はだんだんと若者向けに変わっていた。多分この坂を降れば渋谷駅だろう。

「レストラン、懐かしいな」

「ただのリンゴジュースだと思ったら酒だった所か」

入り組んだ道をなんの躊躇もなく進むとインドカレーの店や喫茶店が連なる場所に出る。その一角にある小さなレストランが……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ