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ローズマリー --8--

僕らが夕飯を食べて帰る途中の出来事だ。突然携帯が鳴り出し、相手を確認すると月妃さんからだった。なんでか福島に居るようで、みんなに気付かれないように出てきて欲しいとの事だった。

ホテルに帰ると真っ先にシャワーを浴び、唄瑠が浴びている間に簡単に荷物整理をした。あまり荷物がないので楽に用意できた。

シャワーから出ると、軽く会話をしてすぐに眠った。唄瑠の寝付きはかなり良いみたいで予想より早い時間にホテルから出られた。

月妃さんはホテルの近くに車を止めて僕を待っていたようだ。

「手間をかけたね。とりあえず乗って」

「えっと……はい……」

赤い86に乗るように僕に勧める。まだ状況を理解できていない僕はちょっと不安があった。

「どうして?なんでここに?」

「まだ時間が掛かる……少し寝るといい」

「……」

何を答えても月妃さんは答えることはなかった。

東北道を南に走らせ、どこかのジャンクションで別の道に入った。無言の車内は暖かいのに空気は冷たい感じがした。

「もうすぐ猪苗代だ……」

一般道に出ると何個かトンネルをくぐり、辺りを山に囲まれた湖が見えてきた。湖畔の駐車場に入ると月妃さんはすぐに降りて砂浜へ歩いていく。

「ちょっと!」

急ぎ足で月妃さんを追いかけた………



猪苗代湖……湖面に月の光が反射して幻想的な空間に迷い込んだようだ。風は穏やかで波も静かに囁いている。

「月妃さん……どうして?」

「あぁ……」

タバコを咥えると一気に吸い込む。暗く月夜だけの湖畔に赤く弱々しく光る火。吐き出された煙はゆっくりと月光に溶けていく。

「今日、伊織に会っただろ?」

「はい」

昼間の公園で会ったのは伊織だけど、迎に来たのは多分……でもどうして月妃さんが福島に?

「そろそろあの子も違和感を覚えているだらうね……でもそれは糸井も同じだろう?」

「この旅行……意味が有るという事ですか……」

「そうだな。だが……私からは助言だけしか伝えられない。真実は自分で見つけ出しな」

「……」

「東京都だ。気は進まないだろうが、そろそろ自分と向き合ってみればどうだ?」

月妃さんは懐から鍵を取り出し僕に投げる。ここまで来るのに乗ってきた鍵だろう。両手で受け止め、月妃さんを見る。

「旅行はどうするんですか?」

「陽向に伝えてある。猪苗代に来るようにな。君は猪苗代でみんなを待つもよし、今から東京へ行くもよし。任せよう」

タバコを携帯用灰皿にねじ込み駐車場へと向かう。車が二台並んで止まっている。

「あぁ……行くべき場所全てを回ったらこの封筒の住所に向かうといい。あくまでも最後にだ」

そう言うとお札が入るくらいの封筒を僕に渡す。厚さは紙が一枚位だろう。

「月妃さんはこれからどこへ?」

「こいつに駅まで送ってもらう。電車で帰るから群馬で待っているよ」

「はい……」

月妃さんを乗せた車の運転席には色白の男。多分伊織だろう。

冷たい風を避けるように車に乗り込む。どうしようか悩んでいるうちにウトウトしていった………


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