ローズマリー --6--
僕の部屋の前には大きめのカバンを肩から下げて捨て犬の様なキラキラした目で僕を見つめる唄瑠。着替えやお泊りに必要なものが入ったカバンだろう、それにしても女の子は荷物が多い。
僕はどういった状況なのか……把握するには少々時間がかかった。
「えっと……え?」
「糸井さんのお部屋でねちゃダメ?」
この様子……追い出された訳ではなさそうだ。とりあえず部屋の中で詳しく話を聞こう。あくまで借りている部屋ではあるけれど、汚いけどどうぞと中へ招き入れる。
「立ち話もなんだし……お茶でも飲みながら」
「ごめんなさい……」
小さな丸テーブルに座らせ、電気ケトルでお湯を沸かす。お店とは違うので味の保証が……月妃さん程上手く淹れられないのだけれどね。
「そういえば……お店でお茶を淹れる時もなんで急須なんですかね?」
「んーっと……月妃さんの趣味趣向じゃないかな?ちゃんと理由は聞いたこと無いなぁ」
「でも変わってますよね。急須で紅茶なんて」
急須で淹れても、蒸らしたり温めたりと紅茶を淹れる手順は変わらない。茶こしも一応使ってる。
グツグツと沸騰したら急須に適量のお茶っ葉を入れ、急須の中で躍らせる様にお湯を注ぐ。
「なんだろうなぁ……急須……」
「なんでしょうねっ」
余ったお湯はカップに注ぐ。カップを温め、急須を自分のフェイスタオルで包む。お店には専用の物があるのだけど、持ち歩くほどに僕は仕事熱心ではない。仕事以外でお茶なんてなかなか入れないしね。
「お茶っ葉を持ち歩いているんですか?」
「ん?あぁ。これは月妃さんの車に入ってた」
「勝手に使って良いんですか?!」
「問題無いよ。たぶん」
と言うのは嘘で、僕が車を借りるときに一緒に渡された缶。ローズマリーが入っているから何時でもどうぞと言われている。わざわざ旅先までお茶を……インスタントでも良い気がするけど……
僕が二人分の紅茶を淹れ、テーブルに並べる。一応後片付けをしてから僕は席についた。
「こっちにお泊りって……どうしたの?」
「あっと……せっかくの旅行なので、家族水入らずの時間をと……」
「なるほど……でも僕は男だしなぁ……」
「でも一緒の屋根のしたで暮らしてますし!」
「部屋は別だったよね?」
「うぅぅ……」
変なことは起きないと自信はあるけれど……不可抗力と言うか……事故があっては唄瑠の親に頭が上がらなくなってしまうのだ。何としても阻止したいところだけど……
「せっかく仲直り出来たの!だから…ね?」
「……」
「糸井さん……」
「……分かったよ……」
悩んだ。悩んだよ!だけどさ……あんなあざとい目で僕を見ないでくれっ!
あぁもう……僕の理性というか……あぁもう!!
「ただし僕はこれからちょっと寝るからね!!」
僕はもう一度自分のベッドにダイブ。僕の重みを布団が全部受け止めて包み込んでくれる。
今日はもう疲れた……明日になったらまたがんばろう……




