↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/56

第27話 黒匣會(こくこうかい)


 北の城➖➖

 カヅチは黙々と掃除と修復を続けていた。

「【修復】!!」バキバキに崩れていた壁が、元の形へ戻っていく。

「【修復】!!」折れていた柱が、元通りに立ち上がる。

「【水拭き】!!」床に残っていた埃が、一瞬で消えていく。

「【血液除去】!!【高圧洗浄】!!」周りに飛び散った血や汚れが消えていく。


「……よし」カヅチは額の汗を拭った。

 そして、ふと手を止める。周囲を見渡す。


 まだまだ崩れた壁。折れた柱。大きく抉れた床。天井には巨大な穴。

「はぁ……どうやったら、こんな壊れるんだ……?城一つ壊す会議って……なんだよ……」

 首を傾げ、呟きながらも、手は止まらない。

「まぁ、全部直して掃除すればいいか」

 カヅチは再び箒を動かした。


 そして、修復した壁を見て……。

「……うん。魔王様が言ってたのはこれだな…」

 何かを思いついたように頷く。

「確かにちょっと辛気臭いな……上手くいくかな…」

 カヅチは【修復】しながらイメージしていく。

 花柄の壁紙。小さな花瓶。可愛らしい模様の壁。

 北の城に、少しずつメルヘンチックな空間が増えていく。

「おお……上手くいった!これはこれで良いな」

「おいぃぃぃぃ!!カヅチぃぃぃぃ!!」

 突然、羅刹の叫び声。

「そんな風に直すと、サルヴェナ様に殺されるぞ……!」

「……?これは魔王命令です!」カヅチは胸を張る。

「えっ?魔王様命令…なの?」

「はい。辛気臭い所は模様替えしろと!」

「…………」羅刹はしばらく黙っていた。

「……サルヴェナ様が怒ったら逃げろよ」

「え?」「俺、止めらんないからな……」

「……そこは止めてよ……」「嫌だ」

「即答!?」「俺、まだ死にたくない……」

「俺だって死にたくないですよ……」


 二人は顔を見合わせる。


「「…………」」そして、同時にため息を吐いた。

「まぁ……直しますか…」「おう……そうだな…」

 再び二人は修復作業へ戻った。

 そして掃除は夜まで続いた。


◇◇◇


「……ふぅ」カヅチは汗を拭った。窓の外を見る。

 いつの間にか、空は真っ暗だった。

「すっかり夜か……」「おーい!カヅチ!」

 遠くから羅刹の声が聞こえる。

「晩飯だ!飯食ってけっ!」

「はーい!ご馳走になっていきます!」

 カヅチは箒を肩に担ぎ、羅刹と一緒に食堂へ向かった。すると……


「……随分と励んでるわね……」「え?」

 廊下の向こうから、点滴を押しながら歩いてくるサルヴェナ。

「サルヴェナさん!?動けるんだ」

「いや、無理矢理動いてる…」羅刹が呟く。

「…………」サルヴェナは周囲を見渡す。

 そして、花が飾られた壁に手を触れた。

「………綺麗…」そして数秒の沈黙。

「って……なんだ!お前ら!このメルヘンチックな内装はっ!!」

「うわっ!怒った!?」「サルヴェナ様!?」

 大声を出した瞬間、サルヴェナの身体が軋む。

「ぐっ……!痛い…」

「ちょっ!無理しないでください!」

 羅刹が慌てて駆け寄る。

「落ち着いて……俺、けっこう好きですよ…この内装……」

「お前の好みなど聞いてない!」「はい……」

「ちっ!まぁいい。早く食堂に行くよ!私は腹が減った!」

「はいはい……今日はサルヴェナ様が好きな大釜パンプキンシチューですよ☆」

「……だから起きて来た…」「…知ってたよ!」

 サルヴェナは羅刹の尻を蹴る。「いてっ!」

 カヅチは苦笑しながら二人についていった。


◇◇◇


 賑やかな食堂➖➖


 テーブルには豪華な食事が並んでいた。

 サルヴェナ、羅刹、カヅチの前には、それぞれ豪華な料理。そしてサルヴェナ大好き大釜パンプキンシチュー。

 その周囲では、ゴーストやスケルトンたちがガヤガヤと飯を食べている。


「……へぇ」カヅチは少し意外そうに周囲を見る。

「サルヴェナさんって、みんなと食べるんだ……」

「はぁ?」サルヴェナは不思議そうな顔をして、パンをシチューに浸す。

「ご飯はみんなで食べたほうが美味しいでしょ?一人で食べるご飯ほど、味のしないものはない」

 カヅチは少しだけ目を細める。

「……そうですね」カヅチもパンを手に取った。もしゃもしゃ。羅刹も食べる。もしゃもしゃ。


 しばらくして……

「サルヴェナさん?一つ聞いてもいい?」

「ん?いいけど…」

「何で魔王様と喧嘩になったの?」


 サルヴェナの手が止まる。

「……何でって?」シチューを一口飲む。

「あいつが“コレクター”を探さないからだよ。それに私にコレクターを探すことを禁じてるから……」


 少しだけ視線を落とす。

「そして……お姉ちゃんのことも忘れろと言ったしな……忘れられるかよ…本当ムカつく……」サルヴェナは小さく呟いた。


「そうだったんだ……」カヅチもシチューを飲む。

「その“コレクター”って……人間だよね?」

「あぁ」サルヴェナは頷いた。

「姉をやった奴の風貌も調べたから大体分かる」

「……どんな?」

「首に……“450750”の刺青」


「…………」カヅチの手が止まった。

「…………」サルヴェナと羅刹が、カヅチを見る。

「……どうした?心当たりあるのか?」


「少しね……」カヅチは少し考えてから顔を上げる。

「そのコレクターって……たぶん人間の世界だと“収集家”って呼ばれてる奴らだと思う…。その数字が入った人間も見たことある…。そして、その全体の組織の名前は……」


 カヅチが顔を上げて言う。

「黒匣會(こくこうかい)」


「「…………!?」」

 サルヴェナと羅刹の目が大きく開く。

「……お前!!」サルヴェナが身を乗り出す。

「そこに繋がってるのか?」


「まさかっ!」カヅチは慌てて両手を振る。

「黒匣會が悪い組織ってのは聞いてる。でも……珍しい武器や防具、素材が手に入ったりするのも確かだから……気にはなっていた。ただ、怪しい噂が多いから、黒匣會から買ったことはないけど……」

 カヅチは少しだけ表情を曇らせる。そして、ハッと気づく。

「……まさか…?そこに……魔物が……?」

「あぁ……」サルヴェナが答える。

「そこに、お姉ちゃんは捕まったんだ……」声が震える。

「たとえ死んでいても……少しでもお姉ちゃんの肉体が残っていれば……」サルヴェナは唇を噛む。

「魔王…セポちゃんに頼めば、生き返らせられる…。でも……何も見つからない……何も……」

 サルヴェナの目から、涙が溢れた。

 カヅチは黙ってスープを見つめる。


 そして……一気に飲み干した。

「ご馳走様!美味しかった!明日、行ってみようか?」

「「えっ?………」」サルヴェナと羅刹が固まる。

「そこに詳しい知り合いなら居るからさっ!」

「「えぇぇぇぇぇ!?」」

「本当か!?」「うん」カヅチは笑う。

「俺は怪しいから黒匣會から買ったことはないけど、一回、紹介しようかって言われたことはあるから!場所も覚えてるしね☆」そして親指を立てる。


「よし!すぐ行こう!!」サルヴェナが立ち上がる。

「サルヴェナ様!まだ治療中ですよ!?」

「なら!明日行こう!点滴も明日の朝には終わる!」

「いやいや……」羅刹が頭を抱える。

「そんな勝手なことして、また魔王様にバレたら滅多打ちですよ……」


「ふふふ……」サルヴェナがニヤリと笑う。

「次は私が殺す!」「こんだけやられてんのに!」

 二人の会話を聞いてカヅチは青ざめる。

「あの〜?バレたら……俺も殺されるのかな……?」

「気にするな!」サルヴェナが胸を張る。

「その時は私が守る!」「……無理だよ…」


 そして、サルヴェナは拳を握った。

「よし!決めた!明日行くぞ!!」

 そしてカヅチを見る。

「それまでに城の修復を終わらせとくんだよ!」

 

 シーンとなる食堂。カヅチは静かにスプーンをテーブルに置いた。

「はぁ……魔族って、めっちゃこき使うのね……」


「カヅチ……」羅刹がカヅチの肩をそっと抱く。

「俺も手伝うよ……」「羅刹さん……」

「だから……俺たちを嫌いになるな……」

 少しだけ寂しそうに笑う。

 カヅチはその顔に一瞬だけ驚いた。


 そして……「うん……」小さく笑った。

 明日。カヅチたちは、黒匣會へ向かう。



            続

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。