第24話 魔王と四天王の説教会
冥冠のサルヴェナの城➖➖
カツ、カツ、カツ。長い廊下に、ル・セポネの足音が響く。左右に並ぶのは、ゴーストやワイト、その他の霊体系の魔物たち。
ル・セポネが通るたびに、、
「「「お疲れ様です、魔王様」」」全員が深々と頭を下げる。
「うむ。ご苦労!」ル・セポネも堂々と歩く。
「うぉぉい!俺が挨拶してもらったぜ!」
「バカ!俺だよ!」「勘違いすんな!おらだ!」
(……妾も人気があるな…)キリッとした顔で歩く。
やがて、大きな扉の前へ辿り着く。
すると……
「魔王様、お待ちしておりました」羅刹が立っていた。
「……嘘つけ」「え?」
「お前ら、妾が来なきゃいいと思っておったろ?」
「…………」「なぜ黙る?図星か?」
「……バレた?」「バレバレじゃ!」
羅刹は気まずそうに視線を逸らした。
「では……どうぞ。サルヴェナ様がお待ちです。」
「うむ」扉が開く。その先は、玉座の間。
巨大な玉座に腰掛けていたのは、サルヴェナだった。その隣へ羅刹が移動する。
サルヴェナは頬杖をつきながら、ル・セポネを見る。
「……昨日の今日でどうしたの?セポちゃん。まさか……魔王の座を私に譲るとか?…きゃははっ!」
ル・セポネの眉がピクッと動いた。
「お主はアホか?」「アホ?ひどっ!」
「妾に勝てたら、いつでも魔王の座など渡してやる!今回は説教じゃ!!」
「うわぁ……可哀想に〜。羅刹説教だってよ…!」
サルヴェナの顔が露骨に嫌そうになり羅刹を見る。
「えっ?俺?」「そうでしょ!あんたが街をめちゃくちゃにしたんだから」
「二人まとめてじゃ!!椅子と茶を用意せい!」
「あぁあ、説教なんだ……」「サルヴェナ様…説教ですって…」
「羅刹……お前もな…しくじったな…」「あ〜あ……」
しばらくして……
玉座の間の中央に、大きなテーブルと三人分の椅子。
そして、三人分の紅茶が用意された。
ル・セポネは椅子に座る。サルヴェナも座る。
羅刹はサルヴェナの横に立った。
「で!なんの説教!?なんか私、悪いことした?」
サルヴェナがティーカップを手に取る。
「表だってはしておらん」「じゃあ、いいじゃん」
「だが……」ル・セポネはサルヴェナを見据える。
「今回の件、お主、“わざと”攫われおったな?」
サルヴェナがティーカップを口に運ぶ。一口。
「あはは……まっさかぁ〜」「……本当か?」
「そうだよ!寝てたら連れていかれたんだよ!」
「オークション会場に羅刹まで呼んでか?」
ギロリと睨むル・セポネ。
「「…………」」サルヴェナが黙る。羅刹も黙る。
ル・セポネが額を押さえた。
「お主ら図星ではないか……」
サルヴェナは何食わぬ顔で紅茶を飲む。
ル・セポネがゆっくり口を開く。
「お前たちが、妾の『人間にはこちらから手を出さない』というやり方を気に入らんのは分かっておる」
サルヴェナの紅茶を飲む手が止まった。
「だが……王は今、私だ」静かな声だった。
「魔界のたった一つのルール…… 王に従う」
羅刹がル・セポネ前の新しいカップを置く。
「従えない者は、力でその座を奪う」
そしてサルヴェナをゆっくり見る。
「サルヴェナ……これは分かっておるな?」
「…………」サルヴェナは視線を逸らさない。
そのとき、羅刹がル・セポネの前のカップに紅茶を注ぐ。
「どうぞ」「うむ」ル・セポネは一口飲む。
「…………」眉間に皺が寄った。もう一口。
「…………」さらに顔が歪む。
「……にっがぁぁぁぁぁ!!」
サルヴェナがニヤッと笑う。
「羅刹っ!何んだこれ!?」「新茶です」
「新茶!?」「はい。サルヴェナ様が出せと……」
ル・セポネがサルヴェナを見る。
「お主…意地悪したな……」「きゃははっ!」
「くそっ!羅刹!」「はい!」
「砂糖だ!砂糖持ってこい! 大至急だっ!!」
「はい。ただいま!」羅刹が走っていく。
数秒後……「お待たせしました!」
大きな瓶を抱えて戻ってきた。
ル・セポネは瓶を受け取る。
そして、ガッ。蓋を開ける。ドサァッ!!砂糖を手掴みで紅茶へ投入した。
「もうそれ、紅茶じゃなくて砂糖じゃん…」
羅刹は小さく呟く。ル・セポネは満足そうに頷く。
そして一口……
「うむ!美味い!」「それは紅茶なのか?」
「甘い紅茶じゃ!」
ル・セポネの満足そうな顔を見てサルヴェナが呆れた顔をする。
ル・セポネはカップを置いた。
「さて……説教はこれまでだ」
空気がギュッと変わった。サルヴェナを見る。
「引き続き、この地を頼んだぞ!それと……」
ル・セポネの表情が僅かに曇る。
「お前の姉のことは……すまなかった。だから、もうコレクターを追うのはやめろ」
サルヴェナの目が細くなる。
「…………」沈黙。次の瞬間……
サルヴェナの額。そこに刻まれた王冠の紋章が、淡く光った。
「……すまなかった?……だと?」声が低くなる。
ル・セポネは何も言わずサルヴェナを見る。
「追うのをやめろ……だと?」サルヴェナが立ち上がる。
「てめぇ!どの口が言ってんだ!!」
玉座の間に怒鳴り声が響き渡った。
「お前が!人間に手を出すなって言ったから!」
サルヴェナの周囲に禍々しい魔力が集まる。魔力がどんどんと膨れ上がる。
「姉さんは、それを守ったんだぞ!!」
無数の魔法の玉が、サルヴェナの周囲を浮遊し始める。
「守ったら……何が残った!?」その目に怒りが宿る。
「何も残らなかった!!」拳を握る。
「姉さんの……何もかもっ!!」
「サルヴェナ様……」羅刹が一歩下がる。
「私は……」サルヴェナの魔力が、さらに膨れ上がる。
「人間も……」魔法の玉が一斉にル・セポネへ向く。
「お前も許さない!!」
ル・セポネは静かに立ち上がった。
サルヴェナが笑う。
「ちょうどいい機会だ!王の座を貰う……!!」
額の王冠が強く輝く。
ル・セポネは拳を握った。
ボキッ。指を鳴らす。ボキッ。もう一度。
そして、サルヴェナを真っ直ぐ見据える。
「……まぁ、妾たちがちゃんと話せば、そうなるわな……」小さく息を吐く。
サルヴェナの口元が吊り上がる。
「面白いなぁ!いつまでも最強でいられると思うなよ!」
「ふふ、早く来い…」ル・セポネは構えた。
空間に黒い渦を発生させると、手を突っ込み大きな斧を引っ張り出す。
「ちゃんと…分からせてやる…誰が王か忘れないようにな!」
玉座の間を、二人の魔力が満たしていく。
そして…魔王と四天王サルヴェナ
その戦いが、始まろうとしていた。
続




