プロローグ
私は輪廻転生したらしい。
らしい、というのは覚えていないからだ。
生前の記憶はない。
陰陽師だったことも、都で生きていたことも、全て周囲から聞いた話でしかない。
困ったことに、私の周りにはその頃を知っている者が多い。
その筆頭が道満だ。何故か昔からいる。
私が屋敷に来た頃にはもういた。
術のことも教わった。異形のことも教わった。
分からないことがあれば聞いた。
大抵は嫌そうな顔をされたが、結局答えてくれた。
だから私は今でも何かあると道満へ聞く。
本人は不本意そうだが。
前世の私と道満は長い付き合いだったらしい。
詳しくは知らない。興味もあまりない。
今の私には今の人生があるからだ。
前世の私が何を考えていたかより、今の私が何を考えているかの方が大事だった。
もっとも、それを道満へ言うと妙な顔をされる。
私は前世のことより、今の方が忙しい。
理由は簡単だ。好きな相手がいる。
こはくだ。
少年の頃から好きだった。
初めて会った時から好きだった。
何故好きなのかと聞かれると困る。
静かなところかもしれない。
強いところかもしれない。
何を考えているのか分からないところかもしれない。
全部違う気もする。
気付いたら好きだったのだ。
そういうものだろう。
私は伴侶になりたいと思っている。
隣にいたい。共に生きたい。
死んだ後もだ。
実際、一度死んだがまだ好きなので多分間違っていない。
道満は呆れている。
閻魔は面白がっている。
屋敷の者たちは慣れている。
だが当の本人だけは何も言わない。
拒まれもしない。
実に難しい。
そのくせ平等なのだ。
私にも。道満にも。他の誰にも。
こはくは変わらない。
だから困る。
私だけが勝手に好きになっている気がしてくる。
もっとも、それは道満も同じらしい。
本人は認めたがらないが。
長い付き合いなので分かる。
私がこはくを見ている時と、道満がこはくを見ている時の顔は少し似ている。
言うと怒るので言わない。昔からそういう男だ。
ただ、一つだけ分からないことがある。
どうして道満は時々、私を見る時だけ少し寂しそうな顔をするのだろう。
昔の私を知っているからだろうか。
それとも別の理由だろうか。
聞けば答えてくれる気もする。
だが、聞かない方が良い気もしている。
どうせ聞いたところで、私がこはくを好きなことは変わらない。
そして道満も、多分変わらない。
だから今日も私はこはくを探す。
見つけたら隣へ行く。
それが今の私の日常だ。
本作は『人外たちの主、だいたい全部の元凶なのに誰も嫌えない 道満ルート』をもとに、安倍清明視点で再構成した別版です。
本編と重なる場面がありますが、清明の恋を主軸にお読みいただけます。
本編は道満目線の話を主軸に道満とこはくとの関係性や、清明の前世の話となっておりますので、本編を読むとより理解を深められます。




